【榮倉奈々と未来への学び Vol.05】 興味開発型の学び舎「探究学舎」

社会のために知る、地球のために考える

よりよい社会を目指すための指針を探す本連載。今回は、未来を担う子どもたちの教育にフォーカスした

探究学舎を訪れた榮倉奈々さん
ドレス¥295,000/エドストローム オフィス(ルメール) ピアス/スタイリスト私物

探究学舎のサロンスペースにて。授業の準備中も教室から子どもたちの楽しそうな歓声が聞こえてきて、盛り上がりを実感。「とても楽しそう!」と榮倉さんも笑顔に

今回訪れたのは……

探究学舎

東京・三鷹に拠点を置く、興味開発型の学び舎。国語や算数などの教科学習は行わないのが特徴で、小学生から中学生までを対象に、戦国英雄、元素、生命進化、宇宙などをテーマに独自のカリキュラムを展開。子どもの「もっと知りたい!」という探究心に火をつける授業を行なっている。

教育の選択肢は増えてきたとはいえ、いまだ学歴を重視する風潮が残る日本。小学生の頃から学習塾に通い、受験勉強に神経をすり減らしている子どもも少なくない。しかしそれだけでいいのか。幼少期に必要な学びとは何なのか。好奇心を育てる授業がメディアでも話題の学び舎・探究学舎を運営する宝槻さんご夫妻に話を聞いた。

榮倉奈々(以下榮倉) 先ほど探究学舎の授業(戦国合戦編)を拝見しましたけれど、すごい盛り上がりですね。子どもたちが自ら積極的に参加して、楽しんでいるのがわかりました。

宝槻泰伸(以下泰伸) うちはいわゆる学習塾ではないんです。授業も国算社理ではなくて、戦国武将だとか、元素、宇宙、人体など、子どもの探究心を喚起するようなものを題材にしています。何かを暗記したり、正解を出すことより、驚きや感動を大切にしていて、その中で、子どもたちに熱中できることを見つけてもらえたらなと思っています。

宝槻圭美(以下圭美) 普通の塾は、先生の話を静かに座って聞くセミナー型ですけれど、ここは参加型のワークショップ形式。みんなで話し合ったり、何かを作ったり、さまざまなアクティビティがあるので、子どもたちは飽きないんですね。

泰伸 じつは初めからこのスタイルだったわけじゃなくて、最初は普通の塾で、「探究」はあくまでオマケ的にやっていたんです。でも、探究のほうが子どもたちは喜ぶし、僕も気持ちが上がって授業ができる。それで探究部分が大きくなっていって。話と違うからって、やめていく方もいましたけど、逆に喜んでくれる親御さんもいたんですね。子どもが「ママ、知ってる? 明治維新で高杉晋作がね……」って目をキラキラしてしゃべり始めたって。

榮倉 すごい! やる気のスイッチが入ったんですね。そういう変化があると、親はうれしいですよね。

泰伸 そうですね。ほかにも魚が好きになって自分でさばいて標本を作るようになった子がいたり、歴史好きになって、家族で全国の城を100カ所くらい旅して回ったという子もいました。

圭美 探究学舎は今年で10年目なんですが、世代交代して親御さんの意識も変わってきました。大事なのは勉強だけじゃない、子どもには好きなことをさせてあげたいと考える人が増えていると感じますね。

探究学舎の授業を見学する榮倉さん。
探究学舎の授業を見学する榮倉さん。二児の母だけに、その目は真剣
榮倉奈々さんと探究学舎を経営する宝槻泰伸さんと圭美さん。
探究学舎を経営する宝槻泰伸さんと圭美さん。自らも二男三女を育てるご夫妻だけに、その言葉には説得力が。「私なんて二人でいっぱいいっぱいなのに、五人も育ててるなんて神様ですね」と榮倉さんも感心しきり

可能性を広げる教育で、 創造性豊かな子どもが育つ

榮倉 泰伸さんのお父さまは、ユニークな教育方針だったそうですね。おかげで泰伸さんは、学校や塾に頼らず、自宅学習で京都大学に合格したと聞きました。すごいです!

泰伸 父はもともと学習塾を経営していたんですが、破天荒でして。たとえば勉強に興味の持てない子に、ポーカーを教えてあげて、最初のうちは勝たせるんです。でもあるとき、ドーンと負かして、「この数学のプリントをやったら、ポーカーの続きを教えてやる」って(笑)。思い返すと、僕も小学生のときには、麻雀とトランプはマスターしていて、「ポン!」とか言ってました(笑)。

榮倉 面白いです。でも、お父さまは、そうやって勉強のきっかけを作っていたということですよね。

泰伸 そうですね。僕の場合も遊びの中で学ぶことの楽しさが原体験としてあったことが、その後の学習意欲につながったし、探究学舎の基礎にもなっていますね。

榮倉 私も子どもが二人いるので、教育にはすごく関心があります。どうすれば型にはめることがなく、のびのびと個性を伸ばすことができるのかと思案することも多いです。

泰伸 それは親御さん、みんなが悩むところですね。日本の学校は、すべての個性を愛でるという仕組みではないんですね。優等生という型があって、それに合う子はよくて、はみ出す子は不適合になってしまう。でも、探究学舎が目指しているのは、子どもの可能性を広げる創造的な子育てです。子どもがどんな発言をしてもそれを受け止めて、ありのままの個性を認めてあげる。そうすると子どもは生き生きしてきます。

圭美 私が感動したのは、以前、「人体医療」の授業を受けた子が、帰り際に「人間ってすごいよね」「イジメとか、やっちゃいけないよね」ってボソっと言ったんですね。授業から人間が人間であることの奇跡みたいなものを受け取って、そして自分の力でそこにたどり着いたんだなと思って、すごくうれしかったです。

榮倉 そういう気づきこそ、本当の学びですね。うちの子も探究学舎の授業、喜びそうです。最近、「宇宙は何色なの?」「血管はどこにあるの?」と聞いてくることがありますが、私はうまく教えられないので。

圭美 親がわからないくらいで、私はいいと思いますよ。親が教えると、「ああ、そうなんだ」で終わっちゃうけれど、わからなければ、「ママもわかんないから一緒に調べよう」って言えますよね。親が正解を持ってないほうが、案外、楽しめるかも。

榮倉 確かに「一緒に図鑑を買いに行ってみようか」となりますね。さすが五児のお母さん。勉強になります! とにかく子どもたちには、強く、たくましく生きていける人になってほしいというのが一番の願い。自分の好きなものを見つけて、個性を伸ばしていってほしいです。

戦国合戦編の授業中、前のめりで話を聞く子どもたち。
戦国合戦編の授業中、前のめりで話を聞く子どもたち。教えていたのは、東大ラグビー部出身の実業家。探究学舎の理念に共感して、講師として契約している
カラフルな授業のフライヤー。
カラフルな授業のフライヤー。最近ではオンライン授業も人気だ

お話を聞いたのは……

宝槻泰伸さん・圭美さんプロフィール画像
宝槻泰伸さん・圭美さん

ほうつき やすのぶ●1981年東京都生まれ。探究学舎代表。京都大学卒業。「やっちゃん」の愛称で親しまれ、多くのファンを持つカリスマ講師でもある。

ほうつき たまみ●1981年東京都生まれ。探究学舎取締役。国際基督教大学卒業。ユネスコのアジア文化センターなど数々の機関で教育業務に従事。

榮倉奈々(えいくら なな)プロフィール画像
榮倉奈々(えいくら なな)

1988年、鹿児島県生まれ。2004年に俳優デビュー。映画『余命1ヶ月の花嫁』をはじめ、話題のドラマや映画などで活躍。昨年から世界同時配信されている、Amazon Originalドラマ「モダンラブ・東京」第2話に出演。

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