社会のために知る、地球のために考える
私たちは社会のために何ができるのか、どんな地球を未来に残せるか、榮倉さんと考える新連載がスタート
――地球温暖化対策として注目されるグリーンエネルギー。太陽光発電も身近な存在となったが、一方で環境破壊が問題視されている。そんな中、期待されているのがソーラーシェアリングという取り組み。千葉県匝瑳市にあるロンハーマンのソーラーシェアリング施設を訪ね、その設置・運営に携わる「市民エネルギーちば」の山内猛馬さんに話を聞いた。
榮倉 今回の取材で、「ソーラーシェアリング」という言葉を初めて知りました。太陽光発電というと、山を切り崩して作るイメージがあって、実はあまりいい印象を持っていなかったんです。再生可能エネルギーと言いながら自然を破壊してるって、どうなんだろうって。でも、今日ここへ来たら、ソーラーパネルの下で、大豆や麦の葉が青々と茂っていて、まったく印象が変わりました。
山内 ありがとうございます。ソーラーシェアリングがこれまでの太陽光発電と大きく異なるのは、ソーラーパネルを農地に設置して、農業と発電を共存させていることです。電気を売って、お金を得ることが一番の目的ではなくて、あくまで農業が最優先。敷地に除草剤をまいたり、コンクリートで固めたりすることはありません。できるだけ環境負荷がないように心がけています。
榮倉 素晴らしい取り組みですね。通常よりソーラーパネルを高い位置に取りつけることで、その下での農作業が可能になるんですね。
山内 そうですね。それと一般的な発電所では6列セルのパネルを使いますが、ソーラーシェアリングでは2列セル(35センチ)と細身のものを使います。細身だと下に大きな陰ができないので、農作物への影響が少ないんですね。また、パネルが大きいと大雨が降ったとき、雨だれで下の土がえぐられてしまったりするのですが、それも防げますし、風の影響も受けにくくて安全なんです。
榮倉 軽くて作業もしやすそうです。
山内 一つのパネルが5キロくらいなので、女性でも持ち上げられます。最新のものは1列セルで、今度設置するロンハーマンの新たなパネルでは、それをつける予定です。
土を耕すのは環境に悪い!? 不耕起栽培に託された未来
榮倉 匝瑳市にはいくつもの施設が集まっていて、ソーラーシェアリングの先進地となっています。それを牽引しているのが「市民エネルギーちば」の皆さんなんですね。
山内 「市民エネルギーちば」は、「自分たちの手で市民発電所を作ろう!」ということで、環境や自然エネルギーにかかわってきた有志によって立ち上げた法人です。でも、そもそもソーラーシェアリングをやるには、農地が必要で、畑をやる人がいることが大前提なんですね。一方、匝瑳市では耕作放棄地が増えていて、なんとか農地を復活できないかと模索している人たちがいました。この二つの思いが出合ったことが、この地にソーラーシェアリングを作るきっかけになりました。
榮倉 作物は無農薬栽培なんですね。
山内 そうです。最近は「不耕起栽培」にも取り組んでいます。普通、畑は土を掘り起こしてから種をまきますが、耕さないで種を植えるという農法です。実は畑を耕すことで、地中の二酸化炭素が放出されるといわれていて、世界の畑の10~20%を不耕起栽培にすれば、大気中の二酸化炭素の上昇を抑えることができるという試算もあるんです。また畑を耕すことで微生物が死んで、土地がやせていくともいわれています。
榮倉 そうなんですね!? 耕したほうがいい畑になると思ってました。ソーラーシェアリング同様、不耕起栽培もどんどん広がってほしいです。
収穫した大豆で味噌を、麦で地ビールを造りたい
榮倉 ロンハーマンさんとのお仕事はどのように始まったんですか?
山内 去年4月、「市民エネルギーちば」の代表の東光弘が講師をしているエシカル講座に、ロンハーマンの社長さんがいらして、それでソーラーシェアリングに興味を持っていただいて。そこからとんとん拍子で話が進み、秋には1号機が通電しました。
榮倉 すごいスピード感!
山内 今1号機で、ロンハーマンの福岡店の1年分の電力を賄っています。今後、ほかの店舗も切り替えていけるように設備を増やしているところです。
榮倉 私も環境問題には関心があって、コンポストを使ったり、自分なりにエコに取り組んでいるんですけれど、個人でできることは微々たるもので、ときどき虚しさを感じてしまって。やっぱり企業が環境問題に取り組む意味は大きいと思います。
山内 ロンハーマンの方々は年に何回かここへ来て、草刈りや収穫も実際に汗をかいて手伝っています。秋には地域の人も参加できる「ソラシェア収穫祭」というイベントがあって、それも好評をいただいています。
榮倉 自然に触れるのは、いいリフレッシュになりますよね。現場に来たり、地元の人と触れ合うことで、環境に対する意識も高くなるし。何より楽しんでできるのがいいですね。
山内 畑でできた大豆を使って、味噌やノンカフェインの大豆コーヒーを商品化したり、今度、麦を使って地ビールを造ろうという案もあって。
榮倉 いろいろな取り組みをされているんですね。前向きな姿勢に、私も感銘を受けました!
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