仕事での人間関係で、家庭内の摩擦で、心に不調を抱える人が増えている。「なんか元気が出ないな」と思ったら、症状が深刻になる前にカウンセリングルームへ。もっと気軽に、専門家に相談してみよう!
※本特集内には、性暴力に関連する被害の描写が一部含まれています。フラッシュバックなどの心配がある方は注意してご覧ください。

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【カウンセリング体験談】ひとりで悩まないで! 頼ろう「心の専門家」

仕事での人間関係で、家庭内の摩擦で、心に不調を抱える人が増えている。「なんか元気が出ないな」と思ったら、症状が深刻になる前にカウンセリングルームへ。もっと気軽に、専門家に相談してみよう!
※本特集内には、性暴力に関連する被害の描写が一部含まれています。フラッシュバックなどの心配がある方は注意してご覧ください。

行ってよかった! 犬山紙子さんのカウンセリング体験談

結婚を長く続けていくためにカウンセリングが必要だったという犬山さん。その効果は絶大だったようだ

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犬山紙子さんプロフィール画像
エッセイスト犬山紙子さん

いぬやま かみこ●エッセイスト。1981年、大阪府生まれ。『言ってはいけないクソバイス』『私、子ども欲しいかもしれない。』など著書多数。近著『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』(扶桑社)も話題に。

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苛立ちの原因は甘えられない性格にありました

犬山さんがカウンセリングを受けるようになったのは、ミュージシャンの劔樹人さんと結婚して2年たった頃。

「人からは穏やかに見られますが、私はもともと怒りっぽい性格なんですね。特に夫にはつらく当たってしまうことが多々あって。朝遅刻しそうなのにタクシーが来ないみたいな余裕がないときにイラッとして、自分でもびっくりするくらいひどいことを言ってしまうんです。夫からしたらたまったもんじゃないし、自分もその後、罪悪感で苦しくなるし。夫のことは大好きなので、この先、長くやっていくためにもこの性格を直したいと思いました」

いくつかのカウンセリングを試し、今通っているのは友達から紹介されたカウンセラー。断続的だが、すでに5年以上のつき合いになる。

「とても聞き上手な方で、初回から話しているうちに号泣みたいな感じでした(笑)。安心して自己開示できる人って、なかなかいないけれど、カウンセラーには守秘義務があるので全部を吐き出せる。そういう場所があるってすごくありがたいですよね」

何度か通ううちに、犬山さんの苛立ちの原因も見えてきた。

「先生いわく、それは甘えたい気持ちの表れですよねと。本当は『もう疲れた、助けて』と思っているけれど、私は甘えベタなので怒りというかたちでそれが出ていたんですね。そこで怒りではなく甘えという発露にもっていくために、夫と甘いおやつを食べたり、話を聞いてもらったり、ハグをしたり、愛情を伝え合ったり。今でもイラッとすることもありますが、『あ、私、甘えたいんだな』とわかったので対処しやすくなりました。怒らないでいられることが精神衛生上、どれだけよいことか。子どもができる前にカウンセリングに行って本当によかった。今では家庭内に愛があふれています」

じつは夫の劔さんもメンタルヘルスに問題を抱えているため、ときには二人でカップルセラピーを受けることも。

「メンタルに問題を抱えたとき、専門の勉強をして知見のある方にアドバイスをもらうのって当然のことだと思うんですね。そして心が病んでしまう前に、自分の心の回復の仕方を知っておくことはとても大切なこと。皆さんにもかかりつけのカウンセラーを見つけておくことをおすすめします」

オンラインでの相談って実際どうですか? 

西岡恵子さんプロフィール画像
cotree代表取締役西岡恵子さん

にしおか けいこ●1990年、静岡県生まれ。同志社大学卒業後、森永製菓、IT企業などを経て、コネヒト株式会社に参画。2022年、現職に。日本フェムテック協会の顧問。

徐々に浸透してきたオンラインカウンセリング。そのサービスを展開するcotree(コトリー)代表の西岡恵子さんを直撃

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自宅で安心して受けられるからカウンセリングがより身近に

24時間、365日対応で、最短で10分後からの予約が可能。そんな手軽さが人気のオンラインカウンセリングの大手、コトリー。創業したのは10年前だが、「コロナ禍で〝リモート 〟が普及したこと、また不安からメンタルヘルスに不調をきたす人が増えたことで、一躍、注目されるようになりました」と代表の西岡恵子さん。

「オンラインのカウンセリングの一番のよさは便利さと快適さだと思います。自宅という安心できる環境で受けられるので、対面より深い話ができたという方もいらっしゃいます。移動の時間や費用がかからないのでトータルコストも抑えられますし、匿名で顔も出さずに利用することも可能なので、企業の経営者や有名人など身元を知られたくない方が利用しやすいというメリットもあります」

24時間、いつでも利用できるというのもじつはポイントが高い。

「メンタルヘルスに問題を抱えている人は、深夜帯に不安になりやすい傾向があって、特に月曜の夜23時前後は、ほかの曜日よりも相談件数が多くなります。また子育てや介護をしていて、誰かに相談したくても夜しか時間がないという人も少なくない。普通のカウンセリングルームは閉まっている時間ですけれど、オンラインだからそれが可能なんです。海外のカウンセラーさんにご協力いただくことで、深夜帯でも対応できる仕組みになっています」

カウンセラーと話をする方法のほか、「書く」カウンセリングもあり、話すのが苦手な人や、まとまった時間が取れないという人は、相談ごとを文章にしてカウンセラーに送ることも可能。

「キャリア、夫婦間のお悩み、過去のトラウマ、前向きなコーチングなど、幅広い悩みに対応できるような環境を整えています。また、アカデミアとの共同研究もやっていて、科学的なデータをもとにサービスもブラッシュアップしています。利用回数はさまざまで、10年近く継続している方もいれば、1回で終わる方も。大きな悩みでなくても、『なんかモヤモヤするから、ちょっと専門家に相談したいな』くらいの気軽な気持ちで、一度、ご利用いただければと思います」

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検索画面のイメージ。在籍カウンセラーは約220名。臨床心理士、公認心理師などの有資格者が多数在籍している。プロフィール欄でカウンセラーの専門分野などがわかるほか、利用者の口コミや満足度もチェックできるので、カウンセラーを選ぶときの参考に。人気のカウンセラーは半年待ちという場合も

読者3名の生の声。「私の場合はこうでした!」

カウンセリングルーム利用のハードルは、近年ぐっと低くなっている。その実態を経験者に聞いた

適切なアドバイスのおかげで夫との対話がスムースに

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自由業 K.Yさん(40歳)

結婚して6年、4歳と2歳の子どもがいますが、夫婦間がぎくしゃくしてきて。夫は小さな子どもにスナック菓子やファストフードを平気で食べさせてしまうんです。私も仕事と子育ての両立でパニックになっていたこともあり、「私が命がけで産んだ子が死んじゃったらどうしよう」と必要以上にイライラ。コロナ禍でお互いに家にいる時間が長くなったこともあり、たびたび激しく衝突しました。また夫は、ストレス発散が苦手なタイプ。友達と飲みに行ったりせずにため込んだ不安を全部私にぶつけてくるんです。そんな状況に耐えられず、心療内科で薬を提案してもらったこともありましたが、根本的に向き合いたかったので、カウンセリングを受けることに決めました。

カウンセラーは年上の女性で、夫婦問題の専門家。それが本当によかった。毎回私の話を根気よく聞いてくれて、適切なアドバイスをくれます。たとえば夫は私が何か頼みごとをすると、「なんで俺がやんなきゃいけないの?」と必ず否定から入るんですね。それを話すと、「このタイプは自分で選択したい人だから選択肢を提示するように」と言われました。半信半疑で試しに、「この日、子どものお迎え行けないよね? 無理かな?」と聞くと、「オッケー」と返事がきてびっくり(笑)。やらないという選択肢もあったけど、俺がやると決めた、というところが大事とのこと。

先生のアドバイスのおかげで夫とのやりとりがラクになり、ケンカも減りました。また自分自身について、普通よりセンシティブに物事を感じやすいタイプだとわかりました。あのままストレスをため込んでいたら、絶対子どもに当たっていたと思うので、本当に助かりました。今では月1の先生との「作戦会議」が楽しみです。最初は不安だったけど、行ってよかったなと思っています。

誰にも言えなかった傷を人に話せたことで気持ちがラクに

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金融企業勤務 H.Tさん(34歳)

10代の頃に受けた心の傷が原因で、男性不信に陥っていた私。それは中学生のときでした。音楽大学の付属高を受けることになり、音大の先生に音楽理論を月1で教わることになったのですが、そこで性暴力を受けていたのです。レイプまではいきませんでしたが、触られたり、キスを強要されたりして、恐怖と嫌悪で体が硬直しました。でも、先生を拒絶したら合格できないかもしれない。そう思うと、誰にも打ち明けられませんでした。そんな体験のせいで、男性とおつき合いしても、いつもどこかよそよそしい関係で終わってしまう。30歳を過ぎ、友達が次々と結婚していくなか、自分はこのままでは、一生幸せがつかめないのではと悩むようになり、ついにカウンセリングを受けることに。ネットで性被害を扱うクリニックを探しました。ちょうどコロナ禍でリモートでのカウンセリングとなってしまったのですが、それでも当時のことを打ち明けながら驚くほど号泣してしまって。90分間、たくさんヒアリングしていただきつつ、貴重なアドバイスもいただきました。

被害にあった当時、誰かに相談できなかった自分をずっと責めていたのですが、それは私の責任ではないこと。また、つらい記憶は人に話したり、文字にしたりして外部記録にすると、次第に薄れていくというものでした。「もしできたら信頼できる誰かに話してみてください」とカウンセラーの先生に言われて、後日、思いきって学生時代からの親友に打ち明けたんです。彼女は全然気がつかなかったと驚くと同時に、一緒に泣いて怒ってくれました。先生の言うように、人に話すことで、とても気持ちがラクになりました。何より友達に話せたことは私にとって大きな進歩。とはいえ、体に焼きついた傷は簡単には癒えません。今後、続けてカウンセリングに通えればと思っています。

EMDR療法でトラウマが解消されて、心が軽くなった

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メーカー勤務 H.Kさん(32歳)

2年間交際したパートナーと別れたのですが、終わりに向かう半年間は激しいケンカの応酬でした。彼は手こそ出さないものの、声や威圧感が大きく、私を傷つけるようなことを平気で言うので、心はぼろぼろに。別れてからもそのときのことがフラッシュバックするようになりました。ドラマでケンカのシーンを見たり、男性の大きな声を聞いたりすると、心臓がドキドキして苦しくなって。このままではよくないと、カウンセリングを受けることにしました。調べた結果、選んだのは、EMDRというトラウマ療法。相談者がトラウマになっている出来事を思い出しながら、カウンセラーの指示に従って目の運動を行うことで、トラウマに関する感情が軽減されるもの。日本ではまだなじみが薄いですが、欧米では戦争経験者など強いトラウマをもつ人にも実績がある療法で、友達からもその効果を聞いたことがありました。

まずはカウンセラーの先生にこれまでの経緯を話し、それからEMDR療法へ。初めに私のトラウマとなっているケンカの場面を思い浮かべます。そして先生が持っている指示棒の揺れに合わせて目を動かしていると、次第に肩と頭が重くなってくるのです。そんななか、「今何を思い浮かべていますか?」「何を感じますか?」などの先生の質問に答えるという手順です。

ここに通って3回目くらいから徐々に効果が出始めました。治療前は、ケンカの場面を思い浮かべただけで嫌な気分になっていたのが、その気持ちが白いモヤでラッピングされたようになって、遠くに感じるようになったのです。先生によると、これは強い記憶があるべき位置にしまわれたということ。なかにはあまり効果を実感できない人もいるようですが、私はとても心が軽くなり、明るい気持ちで帰り道を歩いたのを覚えています。