2022.01.28

結婚式をする意味は何? 本質が見直された、変革のホテルウェディング【フリーウェディングプランナー 遠藤佳奈子さん】

昔から続く結婚式のしきたりにとらわれず、心からお祝いする場へ。そんな本質的な結婚式の意味が見直されたと語る、フリーウェディングプランナーの遠藤佳奈子さん(※以下敬称略)。大きな変革を迎えているホテルウェディングと、フォトウェディングの可能性にも迫る。

突然訪れた、先の見えない空白スケジュール

遠藤 2020年4月にその春予定していた結婚式がすべてキャンセル、延期に。最初は不安だしかなり落ち込みましたが、”自分だけじゃない、仕方ない”と切り替えるのは早かったと思います。そもそもフリープランナーを始めた当初はOLと兼業していて、気になる会場があれば自分から名刺を渡して売り込むというのを続けていて、そこで鉄のハートが育っていたからかもしれません(笑)。

――人気ホテルやレストランと提携するようになったきっかけは?

遠藤 最初に提携してくれたのは外国人オーナーのレストランでした。海外の方はフリーランスと働くことに抵抗がないのかな。そのあと「アンダーズ 東京」立ち上げの際、同世代の女性マネージャーが新しいことに意欲的で、私のことも自分たちの方針にぴったりだと声をかけてくれたんです。ホテルとフリーランスが協業する事例ができ、徐々に広がっていきました!

お祝いしたい人だけが集まる、温かい結婚式に

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家族のみで執り行った「アマン東京」での神前式

遠藤 一度は完全にストップした結婚式も、2020年の8月には1件行うことができて、そこから何となくやり始めているなと皆さんが肌で感じ取ってくださったのか、秋ごろには少しずつ結婚式も動き始めましたね。それでもまだまだ手探りな状態で、例えば今までならゲストから見えないようマイクを消毒していたのあえて見えるところで行うなど、感染対策をするだけでなく、安心していただくことをとにかく重視しています。

――結婚式の人数やスタイルに変化は?

遠藤 最初のうちは、当初の予定から20名欠席が出てしまう事もありました。並行して披露宴会場の推奨収容人数も減りました。ただそのおかげか、少なからず残っていた“結婚式=見栄を張る場”という風潮はなくなり、心から招待し、お祝いしたい人だけ集まる、本質的で温かい結婚式が増えたと思います! 新郎新婦のゲスト比率が同じでなくたっていい、社交辞令で呼ぶゲストはいない、幸せに満ちあふれた場です。招待状を紙で送ると延期の度にコストがかかるのでやむを得ずオンラインにすることも増えましたし、両家の卓を一緒にするなど、昔からのルールをブレイクする柔軟性がコロナ禍では求められています。私もいい意味で割り切りが上手くなってきました!

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人数が減ってしまった分、一体感が感じられる歓談メインの和やかな祝宴に

遠藤 また感染対策の観点から、友人に余興をしていただく機会は減りました。その分をご家族が一丸となって結婚式を盛り上げてくださったもあります。開催を決定するまでは、心配からご両親が開催を懸念された経緯もありましたが、最後は結婚式を盛り上げようとシャンソン歌手のお祖母さまが歌を披露するなど、全力で応援してくださいました! アルコール飲料の提供禁止の期間もありましたが、それを忘れるぐらい幸せな結婚式をいくつも迎えられました。

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パーティのハイライトを飾った新婦のお祖母さまの歌声。伴奏でお母さまも参加!
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昔は厳格で怖い印象だったというお父さまも、謝辞で会場を沸かす笑顔あふれるシーン

遠藤 正直、コロナ以降で手掛けた結婚式はふたりの入場から私も涙が出るほど感極まってしまって。新郎新婦もゲストも皆さん本当に努力されて、この日を迎え、ここに集まることができた。それが当たり前ではありませんから!

――想像するだけでグッときますね。式の準備期間で意識的に新郎新婦へお話しされていることは?

遠藤 “欠席のお返事をいただいても恨みっこなし”と伝えています。それぞれに環境は異なりますから、職業的に参加が難しい方や会社で感染者が出たから自主的に欠席という方もいらっしゃいます。実際に来られなかった方や海外の方からのビデオレターを流すことも多くありますが、想いがじんわり伝わり温かい時間に。参列だけじゃない、色々な選択肢があるのも今らしいですよね。

未来を見据えたカップルが選ぶ、フォトウェディングという選択

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クラシックな建物をバックにした大人のフォトウェディング

遠藤 家族が地方在住の方、医療従事者をはじめ仕事柄どうしても結婚式を行えないカップルには、フォトウェディングを選ばれる方も。人生設計がしっかりあり、結婚式開催はできなくても、先延ばしにせず今このタイミングでしたいという理由も多かったですね。

――実際にどのようなフォトウェディングを行いましたか?

遠藤 大事にしているのは“前撮りとは違うフォトウェディング”です。結婚式がある前提で行う前撮りとは違って、フォトウェディングは結婚式に代わる撮影です。写真を残すこと、記念撮影だけでなく、結婚式要素が必要なんじゃないかなと。そもそも結婚式は当日にフォーカスされがちですが、準備期間がとっても大事だと考えています! だからフォトウェディングも一歩深くこだわって準備する、その過程を大切にしていますね。印象的なのは東京駅で撮影したカップルで、ご家族の皆さまがドレスアップしてふたりを見守りに集まってくださったんです。せっかくだから集合写真も撮ろうという流れにもなって、ご家族もこれが結婚式と認識してくれたのだなと、とても嬉しかった思い出のひとつです。

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おめかしした甥っ子と姪っ子からは花束のプレゼントも

遠藤 また滋賀県の広大なイングリッシュガーデン「ローザンベリー多和田」で行った撮影では、当日フローリストに立ち会ってもらいシーンごとに花のアレンジを変えるなど、結婚式同様に創り上げていくという特別な体験をしていただきました。

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オーナー夫妻のセンスある手入れで海外のような風景が広がる「ローザンベリー多和田」
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ヘア飾りなど現地でコーディネートした花が情景と可憐にリンク

――変わりゆく、これからの結婚式への展望をぜひ聞かせてください

遠藤 ゲスト人数が増え、70~80人のお問い合わせが増えてきたので、コロナを受け入れつつ開催する“withコロナの時代”が本当に始まってきたと体感しています。ゲストの方も理解が深まってきていて、それぞれが責任もって参加の判断をできるようになってきたんだと思います。その上で、より本質を追求したウェディング、そして特別な一日を残すフォトウェディングの2方向で進んでいくのではと。フォトウェディングはコロナ禍が落ち着いたら、ぜひハワイやヨーロッパなど海外で実現させたいですね! その際はシャトーのお庭でカジュアルにパーティをするなど、ふたりだけや少人数でも簡易的ではなく、特別な価値あるものを創り上げたいです。

 

 

―PROFILE―
遠藤佳奈子さん[Kanako Endo]さん
2003年大手ウェディング企業に入社しウェディングプランナーとして経験を積んだ後、2009年「ウェディングラボ」を発足。日本では先駆けとなるフリーランスでのウェディングプランナーに。大手ホテルからも指名を受け、枠にとらわれない“未来につながる”結婚式を手掛ける。

 

ウェディングラボ
http://www.wedding-lab.com/

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