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vol.85 イギリスが舞台。ウェディングプランナー遠藤佳奈子さんのファミリーウェディング

ウェディングプランナーとして、洗練されたラグジュアリーウェディングを数多く手がける遠藤佳奈子さん。そんな彼女が、イギリス人のパートナーの故郷、英国・ブリストルで行ったウェディングで大切にしたのは、ただシンプルに、大切な人やアイテムなど全てを愛し親しみを持つこと。ミニマルにそぎ落とされ残った、本当に大事なものとは?愛にあふれた充実の一日を紹介。

profile:遠藤 佳奈子さん
Wedding LAB 代表・ウェディングプランナー。トラベルコンサルタントのダニエル・ジョーンズさんと日本で出会い、2022年12月に結婚。ダニエルさんの故郷であるイギリス西部の都市ブリストルにて、家族と親しい友人25名を招いたウェディングパーティを開催した。

ブリストルのクラシカルな邸宅での穏やかなセレモニー

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挙式を行った「ゴールドニー・ホール」は、邸宅と庭園の一部が国の指定建造物。現在はブリストル大学の学生寮として利用されている。

ウェディングプランナーとして活躍する遠藤さんと、トラベルコンサルタントのダニエルさんが出会ったのは約3年前。ダニエルさんが趣味で撮影する写真に、遠藤さんが興味を持ったことがきっかけだったそう。コロナ禍ということもあり国内旅行に出かけるなど、ふたりでたくさんの時間を過ごしてきた2022年のある日のこと。

「彼のアパートのリビングに、一冊のフォトブックが置いてありました。それは2年間彼が撮りためた私の写真。リングの写真が掲載された最終ページを読んでいたところで、彼が片膝をつき『Will you marry me?』とプロポーズをしてくれました」。

そんな感動的なプロポーズを経て、2023年7月。ダニエルさんの故郷であるイギリス・ブリストルにてウェディングパーティを行った遠藤さん。ウェディングのコンセプトは“愛着を感じるもの”。

「ブリストルは歴史ある建造物やアートが多く、古くからあるものを大切にする町。町全体から醸し出される雰囲気が懐かしく、心地よくて。結婚式は都会的なものより、愛着があるものに囲まれた素朴な式にしたいと思いました。」

また、セレモニーとパーティをプログラムするにあたり遠藤さんが考えたことは、プロのクリエイターに依頼するのではなく“ホームメイド”にこだわること。というのも、両家は画家やオペラ歌手、音楽家などが集うアーティスト一家。遠藤さん自身のウェディングプランナーとしての心得や経験、そしてお互いの家族の特技をいかせるウェディングを目指した。

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セレモニーを行った部屋「マガホニーパーラー」。古い建物の魅力的なデザインがそのままに継承され、アンティークの調度品に囲まれた空間。

挙式会場は、資産家ゴールドニーファミリーの邸宅であり、18世紀から改修や改築、増築によって残されてきた「ゴールドニー・ホール」。屋敷の中で遠藤さんが選んだ部屋は、暖炉や絵画などのしつらえに懐かしさを覚える「マガホニーパーラー」だった。

「歴史ある建物ですが、窓からは緑あふれるガーデンを望めて、室内の配色や暖炉に施されたタイルなどから、温かみを感じる空間。素朴なムードに心惹かれました。」

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遠藤さんのお母様が歌うオペラで入場。曲目は歌劇『ジャンニ・スキッキ』の劇中歌「私のお父さん」。

挙式のみを想定していた当初から、式の時間を大切にしたいと考えた遠藤さん。イメージしたのは、空間のムードをゲストと一緒に作り上げること。元オペラ歌手だった遠藤さんのお母様の歌声に包まれながらお父様と入場し、ダニエルさんの親友と幼馴染に式の進行、音楽の再生やコントロールをお願いするなど、ゲストのパーソナリティに触れられるようにプログラムを構成した。

「母のオペラでの入場は、小さな頃からの私の夢。母の歌や私たちのスピーチで、みんなで笑って泣いて。友人にお願いした小説のリーディングでは友人が涙して…。手作り感たっぷりだし、たった20分の式ですが、式中に何度も『なんて素敵で完璧な、最高の式なんだろう』と感慨に浸っていました。」

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ダニエルさんが着用したのは、トラディショナルな会場によく似合う「REISS(リース)」の総チェック柄のスーツ。

また、遠藤さんのお父様が詩をリーディングする場面も。「父によるリーディングは、金子みすゞの詩の一節から。詩を読む以外にも、思いがけずたくさん話し始めて笑いをさらっていました(笑)」。

ロンドン、日本など遠方から駆けつけてくれた家族、大切な友人に見守られて、笑顔と涙があふれる祝福の挙式となった。

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義母が作ってくれたリングピローは、自身が50年前に着用していたワンピースをパッチワークしたもので、まさに“古く愛着のある“アイテム。結婚指輪は「俄 (ニワカ)」の「茜雲」をセレクト。
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挙式後は敷地内のガーデンでゲストたちとの談笑を楽しんだ。

想いを受け継いだ、唯一無二のドレスルック

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「ゴールドニー・ホール」のガーデンにて。ダニエルさんの幼馴染がハンドメイドしたという、マクラメのフォトブースがとびきりフォトジェニック!

スタイリングのこだわりは“日本のエッセンス”を香らせること。アクセサリーはジュエリーブランド「Hirotaka(ヒロタカ)」、マリッジリングは“いつも日本を持ち歩けるように”と日本の伝統の彫金技術を受け継ぐ「俄(ニワカ)」をセレクト。足元は「メゾン マルジェラ」の足袋バレエシューズを選ぶなど、細部まで日本らしいアイテムで統一した。

ドレスは立体的な総レースを全体にあしらい、クラシカルでありながらもモダンな雰囲気。ブリストルの町と会場の雰囲気から、新品よりもヴィンテージやユーズドのドレスがしっくりくると感じ、オンラインでオーストラリアの女性から購入した。ドレス選びにも、ウェディングプランナーとしていつも花嫁の気持ちに寄り添う、遠藤さんらしいエピソードが。


 「メールをやり取りする中で、彼女が新型コロナ拡大の影響で、結婚式のキャンセルを余儀なくされた花嫁ということがわかって。私自身、悲しい思いをした花嫁と仕事でたくさん対峙してきたので、ドレスを着ないままに手放す彼女の思いも背負う気持ちでした。このドレスに出会えて、彼女から購入できたことが幸せでうれしいです。」

行き場を失っていたドレスを、再び結婚式という場所で引き継ぐという、特別な意味を持つドレススタイルとなった。

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ダニエルさんの両親の自宅ガーデンから摘んだ野花をまとめて、ナチュラルなクラッチブーケに。

ヘアメイクとブーケは、遠藤さんのウェディングチームである、松本ルミさんと恒石小百合さんにオーダー。「結婚式をイギリスですると伝えたら、当たり前のように『もちろん行くよ!』と言ってくれた、家族同然の仲間たち。参列してくれるならばとお願いして、完全にお任せ状態(笑)」。

ブーケは挙式の前日、フラワーデザイナーの恒石さんがダニエルさんの実家のガーデンで摘んだお花をメインに、近所の花屋で購入した花をプラスしてデザインしたもの。

「歳月をかけて義母が大切に育ててきた草花を、ふんだんに取り入れてもらって。義母もとてもうれしそうにしてくれていました」。

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ピアスとイヤーカフは日本のジュエリーブランド「Hirotaka(ヒロタカ)」からセレクト。小ぶりのイヤーカフをレイヤードして、ほどよく抜け感を出した。
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足元は「メゾン マルジェラ」の足袋バレエシューズ。ピンクベージュのサテンでヌーディに。

ブラッセリーで楽しむ祝福のランチパーティ

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義母が大切に育てた野花をメインにしたテーブルコーディネート。「私の庭のお花なのよ」とゲストに説明するワンシーンも。

「ゴールドニー・ホール」での挙式後は、イギリス料理を堪能できるブラッセリー「The Ivy Clifton Brasserie(ザ・アイビー・クリフトン・ブラッセリー)」でランチパーティを。前菜のスモークサーモンをはじめステーキなどの料理を味わい、家族や親しい友人とゆっくり会話をするコージーな時間を楽しんだ。

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自然光がたっぷりと入るエレガントなレストランで、見た目にもおいしいコース料理を満喫。

遠藤さんがこだわったのは、家族が活躍できる場になること。夫ダニエルさんの両親と妹たちは全員画家という特技をいかして、妹さんには席札を、母親にはウェルカムボードの制作を依頼。家族の愛情を感じるハンドメイドの作品が、テーブルと会場に彩りを添えた。

 

テーブル装花は「愛着」「古いもの」をテーマに、フラワーデザイナーの恒石小百合さんにブーケ同様、お任せでオーダー。当初はパーティではなく、挙式後にランチを食べるだけと考えていた遠藤さんが用意していたのは、ダニエルさんの実家から借りてきたいくつかのフラワーベースと、レストランのイメージに合わせたシックな花柄のテーブルランナー。

「恒石さんが義父母のガーデンにある草花を、たくさん生けてくださって。想像以上に美しい空間となりました」。

家族と友人の、優しさとクリエイティブが調和した温かな空間が完成した。

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ゲスト全員でひとつのテーブルを囲み、自由に会話を楽しんだ。
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フリーハンドでダニエルさんの妹さんが描いた、席札に添えられた花のイラストも愛らしい。
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趣味で絵を描いている遠藤さん。東京から参列しウェディングをサポートしてくれた友人に、それぞれの似顔絵を描いてプレゼント。
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京都で和装撮影を行ったふたりをモチーフにして、義母が描いたウェルカムボード。

大切な人にコミットして未来へ紡ぐウェディング

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自身のウェディングを振り返り、カップルとウェディングを創るときにいつも伝えていることを再確認したという遠藤さん。それは“結婚式が、夫婦間はもちろん家族・友人との関係を深めて、未来へ紡いでいく機会である”ということ。
「どんな場所での結婚式でも、ウェディングの本質は一緒。ラグジュアリーホテルの結婚式でも、ゲストを大切に思っているふたりの式では、居酒屋にいるような温かい雰囲気になることがあります。“見た目や体裁”ではなく、シンプルに、思いやりの心が大切。それを体感することができました」。
 

人との関わりは、例えばアンティーク家具や古い建造物、ヴィンテージの洋服のように、年月を重ねるほど味わいが出てくるもの。これからも深く関わっていく大切な人たちを愛おしんだウェディングは、遠藤さんにとって生涯忘れられない一日となった。これからブリストルと日本の二拠点をベースに、ウェディングプランナーとしての活動を続ける遠藤さん。今後作り上げる、祝福の形や新しいライフスタイルにも注目だ。

place:Goldeney Hall(ceremoney)、The Ivy Clifton Brasserie(party) photography:Phoebe Piper hair&make-up:Rumi Matsumoto flower:Sayuri Tsuneishi

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