「トレランは “ご自愛”」井上咲楽が語る、心身ともに自分と向き合うトレイルランニングに魅了される理由

山の中を走る、トレイルランニングが盛り上がっている。自然の中で運動をすると、心身ともにリフレッシュできそうだけれど、実際どんな魅力があるのだろう? タレントの井上咲楽さんは、数年前からトレイルランニングにはまっている。「私の中では、ご自愛に近いスポーツなんです」その言葉の意味を知りたくて、彼女が感じているトレイルランニングの魅力を聞いた。

山の中を走る、トレイルランニングが盛り上がっている。自然の中で運動をすると、心身ともにリフレッシュできそうだけれど、実際どんな魅力があるのだろう? タレントの井上咲楽さんは、数年前からトレイルランニングにはまっている。「私の中では、ご自愛に近いスポーツなんです」その言葉の意味を知りたくて、彼女が感じているトレイルランニングの魅力を聞いた。

INDEX

初めて知った「トレランは、ロードランの延長ではない」ということ

「トレランは “ご自愛”」井上咲楽が語るの画像_1

井上さんからいただいた、トレラン中の写真

トレイルランニング(以下、トレラン)には、気持ちいいだけでなく、山道を走り続ける過酷なスポーツという印象もある。今では休日になると山へ向かう井上さんだが、始めたきっかけはなんだったのだろう?

「トレランとの出合いはテレビ番組の企画だったのですが、もともとはあんまり興味がなくて(笑)。というのも実家が自然の多い場所だったので、登山もキャンプもしないし、山へ行きたいと思ったことがなかったんです。一方ランニングは、歯磨きみたいな存在。歯磨きって、好きだからするというより、しないと気持ち悪いじゃないですか。中学生の頃から続けていたのもあり、それに近い感覚でした」

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井上さんからいただいた、トレラン中の写真

最初はロードランニングの延長だと思っていたけれど、実際はまったく違ったという。

「まず荷物の多さに驚きました。どれくらい水が必要か、途中で何を食べるのか、寒さに備えて何を持っていくのか。いろんなことを想定して全部自分で考えて用意しなきゃいけないんです」

水、補給食、レインウェア、防寒具、ファーストエイドバッグなど、ロードランニングでは考えもしなかった荷物が必要になる。もしロードで困った状況になったら、コンビニに立ち寄れるし、タクシーも呼べる。でも山ではそうはいかない、すべてが自己責任だ。けれど井上さんは、そこに面白さを感じた。

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photography:Ayaka Noguchi

「自分の身体の状態をちゃんと見てあげないといけないんですよね。自己管理能力が試されるスポーツだなと感じて、それがすごく新鮮でした」

トレランが走り続けるスポーツではないことも、ロードレースでのタイム更新に挑む井上さんにとって驚きだった。

「歩いたり走ったりする繰り返しなんですよ。心拍数を上げすぎると身体に乳酸が溜まって、後から走れなくなってしまう。だから、あえて歩かないといけないんですよね。私も登りは歩いていますし、そういう時に一緒にいる友人などと喋ったりするのもすごく楽しいです」

自分の身体と向き合うトレランは“ご自愛”に近いスポーツ

最も印象に残った井上さんの言葉、それが「ご自愛」だ。長時間にわたり自己管理が欠かせないトレランは、裏を返せば自分を労わるスポーツだという。

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井上さんからいただいた、トレラン中の写真

「トレランって、未来の自分のために今どうするかを考えるスポーツなんです。例えば少し寒いときに、『その場では我慢できるし、上着を出すのは面倒だから』とそのまま走り続けたとする。するとその場凌ぎの判断は、数時間後の自分に跳ね返ってきます。体温が下がってしまったり、すごく体力を奪われたりするんですよね。

ガッツだけじゃどうにもならない、自分のことを予測しないといけないのが面白いポイント。まさに“うさぎとカメ”の世界で、着実に走っている人が強いんですよ。未来の自分が困らないように、今どうしてあげるかを考える。だから、ご自愛に近いなって思ったんです。ちゃんとケアしないと、ちゃんと返ってくるんですよ(笑)」

危険回避の先にあったのは「目の前だけに集中する」マインドフルネス

トレランを始めて、井上さんが最初に感じた面白さは“集中力が高まる感覚”だったという。

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井上さんからいただいた、トレラン中の写真

「一歩ずつ気を付けて進まないと、プロの方でさえ転んで大怪我になります。だから次の足の踏み場をどうしようと常に考えるのですが、そこだけに集中する感覚が心地よくて好きです。普段の生活では、いつだっていろんな考えが頭をよぎり、ひとつのことだけを考えるってそうそうないから」

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photography:Ayaka Noguchi

ロードランニングでは、ポッドキャストやオーディブルを聞いたりしながら走ることも多いそう。でも山では常に、目の前に意識を集中させる。

山道に木の根や岩、ぬかるみがあるのは当たり前で、舗装されていない道を走る非日常感こそトレランの醍醐味。そのスリリングな部分が、“大人のアスレチック”だと井上さんも魅了されている。

「危ないからこそ集中しなきゃいけない。するとちょっとゾーンに入るみたいな感覚になってスタスタと走れる。その時の頭の中の状態が気持ちいいんです」

レースを通して自分と対峙する、それがメンタルケアにも繋がっている

昨年、井上さんはトレランの100キロレースを完走した。完走まで17時間半、想像するだけで気が遠くなるような時間だ。「途中で本当にやめたかった」と言うほど壮絶なレースを走る中で、井上さんはあることに気づいたという。

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photography:Ayaka Noguchi

「まだ起きてもいない未来を勝手に想像して、不安になっているんだなと思ったんです。残りの距離を考えて、これからもっと辛くなるかもしれないと諦めたくなる。それは日々の仕事にも通じることで。
『こういう時に逃げたくなるんだな』『こんな考え方をするんだな』と、自分自身をずっと見させられているような感覚があります。辛くもあるけど、自分を見つめざるを得ない状況にヒーリング効果も感じていて。この時間って、メンタルケアみたいなところがあると思うんですよね」

思考のクセや欠点、何を諦めそうになるのか。追い込まれた時こそ、自分自身が見えてくる。そうして自らに問いかけ、知ることは、セルフケアにも繋がるのだ。

トレランは“チームスポーツ”。一人では得られない力がある

初めて長距離トレランに挑戦したときから井上さんは、プロトレイルランナーの宮﨑喜美乃さんの指導やサポートを受けている。その経験もあり、トレランのレースは、自分一人の力で走っているわけではないことを体感するという。

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井上さんからいただいた、トレラン中の写真

「レースでは宮﨑さんにペースランナーとして並走してもらい、あらゆる面で支えてもらいました。ほかにも給水所で待っていて送り出してくれるスタッフさん、コース誘導スタッフの方とたくさんの方が関わっていて、そのおかげで走れるんです」

普段の練習においても、走っているのは井上さん自身だが、誰かに山へ連れて行ってもらったり、アドバイスをもらったり。全てひっくるめてトレランはチームスポーツだと感じているし、だからこそ得られるパワーもあると話す。

大人になってから見つけた“山遊び”

レースではないトレランは“大人の山遊び”だと井上さんは楽しげに話す。

「以前は突然休みの日ができたら、『休みになった! どうしよう』と思っていたんです。けれど今は一日休みになると『トレランに行ける!』とワクワクします。休みの日に自分のテンションを上げる、やりたいことがあるというのは大きいです」

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井上さんからいただいた、トレラン中の写真

そんな休日には、レジャー要素の強いトレランを楽しむのだそう。走ることだけではなく、道中や前後にある“お楽しみ”を満喫している。

「朝早くに出発したら、まずサービスエリアで朝ごはんを食べ、道の駅に寄ってパンを買い、山でのおやつに。初心者にとっても、好きな食べ物を用意するのが一番やる気が出ると思うんですよ。走り終わったら近くの温泉で汗を流して、アクティブな遠足ぐらいの感じで楽しんでもらいたいですね! 私自身もそうやってエンジョイしています」

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井上さんからいただいた、トレラン中の写真

今、気に入っているのは丹沢エリア。自然は四季折々で違う表情を見せるから、何度同じコースを走っても飽きることがないそう。

「秋はやっぱり紅葉があるから、山の美しさも格別です。冬や春先にまだ雪が残っているところを『寒いね』って言いながら走るのも楽しいんですよね。鍋割山では、山の頂上で鍋焼きうどんが食べられるんですよ。現金を用意しておいて、ご褒美に食べるのもおすすめです」

トレランを楽しむためのこだわりグッズ

いかに荷物をコンパクトにできるかは、トレランをする人にとって永遠のテーマ。なおかつゴミを極力減らすためにたどりついたアイテムのひとつが、手ぬぐいだ。

「山にいると気温差で、鼻水がすごく出るんです。でもティッシュはウェアから汗を吸ってボロボロになるし、ゴミにもなるので、手ぬぐいで代替することに。薄いし軽いし、いざという時は止血もできますし、欠かせないアイテムです」

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photography:Ayaka Noguchi

ウェアは、アディダスのアウトドアスポーツレーベル・TERREXを愛用。ボトムスは基本ショートパンツで、上下ともに気温に合わせてレイヤリングで調整する。これからの季節は手袋やネックウォーマーの出番だ。そして、一年を通して日焼け対策にも抜かりない。

「大会の時も日焼け止めを持参していて、エイドステーションで塗り直しています。唇も乾燥しやすいので、UVカットできるリップクリームも忘れずに。そして走り終わったら、ビタミンCを必ず補給しています」

心のデトックスに新たな趣味。走ること以上のものをトレランから教えてもらった

もし、トレランを始める前の自分に声をかけるとしたら。最後にそう尋ねると、井上さんは少し考えてこう答えた。

「走ること以外の魅力も、たくさんあるよって伝えたいです」

あんなに山に興味がなかった自分が、今では休日ができれば愛車で山へ向かうことが楽しみに。コンパクトデジタルカメラを買ったのも、トレランがきっかけだった。

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photography:Ayaka Noguchi

「むしろ、走ること以外に得たものの方が大きかったかもしれないです。私の場合は行動が変わりました。山へ行くために車を買い、きれいな景色を撮るためにカメラを買って。山へ通うようになり、ひとり時間や休日の過ごし方もうまくなりました」

井上さんにとって今、トレランとマラソンのどちらも続けることが、いいバランスになっていると言う。

「トレランをする前は、マラソンに繋がるトレーニング的な要素が大きいのかなと想像していました。実際は全く別の競技で、マラソンに繋がる要素は本当に少なかった。でも私にとってトレランはレースのとき以外はレジャーで、良いリフレッシュになっています。自分で自分のバランスを取る、そういう意味でもトレランは私にとって“ご自愛”だなと思います」

まず初めは経験者と一緒がおすすめ。安全と山のルールを守りながら楽しんで

今では、初心者の知人をトレランへ案内する側になった井上さん。かつて自分が教わったように、山のルールを正しく知ってもらいたいと話す。

「やっぱり最初は有識者の方と一緒に山に行ってほしい。山には登山者もランナーも様々な人がいて、共用の場所だからルールやマナーを守ることが大切です。道の見方や装備の面でも怖い思いをしてほしくないっていうのがありますね。山の近くにあるトレラン向けのスポットにはコミュニティやイベントの情報があるので、初心者向けの体験会や練習会に参加してみるのが安心だと思います」

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井上さんからいただいた、トレラン中の写真

井上さん自身がこれから目指すのは、記録。海外遠征にも興味が高まっていて、いつか実現させたい夢だ。

「周りの方のおかげで、“トレランって楽しいな”とのめり込んでいるので、今後は記録も視野に入れたいです。今100キロのレースを走っているのですが、次の段階である100マイル(160キロ)レースに人生で一度は挑戦してみたいと、ひとつの目標にしています。海外の山でのトレランもやってみたいですね!」

井上咲楽プロフィール画像
タレント井上咲楽

1999年生まれ、栃木県出身。バラエティなどで活躍。NHK『ランスマ倶楽部』への出演をきっかけに本格的に走り始め、国内外のマラソン大会やトレイルランニングのレースに挑戦。2026年5月の「FunTrails Round みなの 50K」にて女子4位入賞を果たし、同年9月のベルリンマラソンでは3時間14分19秒(ネット)と自己ベストを更新するなど、タレントの域を超えた記録に注目が集まっている。

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