旅先から持ち帰れないもののひとつに“香り”があります。山や海など自然を想起させる香りはなんとなく共通項がありますが、街や都市の香りは唯一無二。人々の往来、歴史と文化が添える厚み、普遍のものと新しいものが奏でるムードなど、その場所でしか嗅ぐことのできない、生きるアロマ。
そんな、都市の香りを限定的に感じることができるアロマ、「VOYAGE」に出合いました。手がけるのは、アロマ調香デザイナーの齋藤智子さん。ミラノサローネ『Milano Design Award 2017』にて「ベストリーディング賞」を受賞、インスタレーション「Panasonic × GO ON “Electronics Meets Crafts;”」にて網香炉の調香を手がけるなど、国内外で高い評価を得ている調香のプロフェッショナルです。
世界で活躍する齋藤さんが、都市・季節・時間をキーワードにデザインした香りは、初夏の京都/秋のパリ/冬の京都の三都市構成。
三都市のなかでもそそられたのが、「KYOTO 17:00」。子どもの頃の、夏のあいだに過ごした京都の家が、私の原風景という齋藤さんならではの、“京の香り”。爽やかな和精油をトップノートに使い、しっとした潤いと艶を感じるミドルノートで誘ったのち、お香や木の深く落ち着く香りへ移ろう香りは、初夏の京都をイメージしたそう。懐かしさと憧れが共存しながら、不思議と現代の暮らしに溶け込むのが不思議です。
焼きたてのクロワッサンとカフェオレでブランチを楽しみに11時のパリへ? バーに寄り道する気分で23時の東京へ? そんな風に、シーンや気分によって、旅する都市と香りを選ぶ。そんな“香りの旅”が、秋の夜長のリラックスタイムをもりあげてくれそうです。(エディターR)
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