パンと相性抜群! 魅惑のドライフルーツ羊羹 #深夜のこっそり話 #1052

先日、とある取材で初めて大田区の長原駅で下車。東京に住んで10年近く経ちますが、いまだに行ったことのない場所がたくさんあります。初めての土地に足を踏み入れるたびに、「おのぼりさん」だった頃を思い出してちょっとワクワク。

知らない街へ行ったら、必ずそこで美味しいものを見つけて帰るのがマイルール(って、カッコよく言ってみたけど単に食いしん坊なだけです)。取材終わりに、美味しいもの欲しさに駅前の小さな商店街をぶらぶら歩いていたら、素敵なハーブの庭のある建物を発見。お花屋さんかなと思いきや、「wagashi asobi」と書かれた看板が目に飛び込んできて、即座に入店しました。

奥に作業場が広がるノスタルジックな店内は、どちらかというとアトリエのような雰囲気。そこで静かにお出迎えしてくれたのは、ずっしりと重みのある「ドライフルーツの羊羹」。「友人から“パンに合う和菓子”という依頼を受け、テリーヌをイメージして作りました」と説明してくださったのは、wagashi asobi創立メンバーの浅野さん。老舗の名和菓子店で長年職人として従事した経歴を持つ方です。“パンに合う”、“テリーヌのような”和菓子。ここまで聞いて、買わずに帰れるわけがない。素敵な邂逅に財布の紐もすっかり緩み、「ドライフルーツの羊羹」を1棹購入しました。

いそいそと家に帰り、夕飯の支度をすませ、息子を寝かしつけ、ようやくお楽しみの時間。冷蔵庫に入れておいた羊羹に、そっと包丁を入れてみる。その断面のなんと美しいこと! 無花果に苺、胡桃が、思い思いの形で羊羹の中に閉じ込められています。繊細でありながら、それぞれの素材が持つ個性の強さも感じられる。一見なんの変哲もない椎色の棹の中には、宝石がゴロゴロ詰まっていました。

口に入れた瞬間、まず広がるのは餡と黒糖のコク深い甘さ。そこにラム酒がアクセントをきかせ、キリリと大人な風味が鼻孔をくすぐります。この時点で、すでにワインが欲しくなる。さらに噛み進めていくと、無花果のプチプチした食感や胡桃の歯ごたえが重なります。それはまるで、ひとつひとつ音をのせていくセッションのよう。ひと切れで豊かなハーモニーが楽しめます。そしてパンにのせてみたら、これが本当に合う! むしろパンと一緒に食べる方が羊羹やドライフルーツの甘みがくっきりと引き立ちます。ここに辛口のシャンパンを添えて……と、想像するだけで思わずうなる組み合わせ。

誰にも邪魔されず、人知れず楽しむ粋な“お夜つ”。実に口福な時間です。このまま時が止まって欲しい。ついでに右肩上がりの体重増加もそろそろ止まって欲しい。わがままな欲求ばかりが膨れあがる夜なのでした。

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エディターHAYASHI

生粋の丸顔。あだ名は餅。長いイヤリングと丈の長いスカートが好き。長いものに巻かれるタイプなのかもしれません。

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