人生にはライバルが必要だ。“ル・マン版半沢直樹” #フォードvsフェラーリ #深夜のこっそり話 #1235

先日発表された、アカデミー賞2020。『パラサイト』の4冠達成(ポン・ジュノ監督のスピーチも見応えありました)、ブラッド・ピットの俳優としての初受賞ほか、見どころが盛りだくさんでしたね。話したいことはつきないのですが、上映終了が迫るなか、是が非でもスクリーンで観て欲しい傑作『フォードvsフェラーリ』について今宵は紹介させてください。

マット・デイモンとクリスチャン・ベールがバディを組むという魅惑のキャスティング、CGナシのカーアクションなど、観たいと思っていた理由はいくつかありましたが、一番のトリガーは下馬評の高さでした。クルマ好きが「あのカメラワークとエンジン音はスゴイ。観るべし!」と興奮して語るのを何度も聞き、私が信頼する映画プロたちが「映画らしい映画、傑作だよ!」と絶賛、ソーシャルでは140文字という制限のなか映画好きたちが熱くレビューしている。そこに極めつけは、アカデミー作品賞へのノミネートです。これはと思い、スクリーンで、しかも本腰いれてIMAXで観てきました。

観た感想を一言で言うと、“ル・マン版半沢直樹”。タイトルのごとく、フォードとフェラーリのバトルものかと思いきや、蓋を開けると身内同士で足をひっぱりあう、フォードvsフォードという構図。いつだって組織は一番の味方で最大の敵なんだと思いました。ネタバレになるので詳細は伏せますが最後の展開が腑に落ちずモヤっとしてしまい、上映後調べそれが史実だと知ってさらに絶望感が上乗せされた次第。事実は小説よりやるせない、です。


ではなぜ、タイトルに「vsフェラーリ」とうたっているのか。はっとしました。フェラーリは敵ではなく、クリスチャン・ベール演じるドライバー、ケン・マイルズをレースに駆り立てるうえで、彼が最高のドライブを体験し勝利するために必要な存在だったのです。敵とライバルは、同義語ではない。よきライバルがいることが彼のドライバーとしての人生をかくも豊かにしたのではと深読みしてしまいました。迫力のレースシーンとそれにかける人たちの熱意と並行して、勝敗とは何か? 生きる上での喜びとは何か? 普遍的なでも答えのないテーマをひたすら問いかけてきます。映像のパワーと裏腹になんて考えさせられる作品なんだと思い、これぞエンタメ、これこそ映画と胸が熱くなりました。

といっても、小難しく考える必要はなく、秀逸なカメラワークが織りなす7000rpmsの擬似体験、ダイナミックなレースシーンを大画面でカラダ全部を使って楽しんで欲しいです。アカデミー賞編集賞、音響編集賞の受賞が裏付ける映像スペクタクルの興奮を存分に味わうために、ぜひスクリーンに足を運ばれることを願ってやみません!

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エディターYOSHIMURA

食べること、カラダを動かすこと、旅することが大好物のアクティブ派。その反動か、ワードローブは甘め嗜好。花柄アイテム&ワンピースがクローゼットを占拠しています。

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