パリの工房より。使うほどに愛着が増す手吹きガラス #深夜のこっそり話 #1248

先日、とあるセレクトショップのオーナーと話しをする機会がありました。独自の審美眼を持つ彼女はよく親しい人に贈り物をするというので、プレゼント選びのポイントを尋ねると、「とにかく簡単にはすませない」という答えが。いわく、遠くても足を運び、自分の目で確かめ、贈る相手のライフスタイルを想像しながら選ぶのだそう。それって当たり前っちゃ当たり前だけど、貴重な時間を自分のためだけに惜しみなく使ってもらえるなんて、これほど嬉しいことはありません。時間に追われる日々を過ごしているとその有り難みもひとしお。

さっそく私も彼女のやり方を意識して、友人の誕生日プレゼントを探すことに。このご時世ネットで検索すればたくさんのヒントが見つかりそうですが、ここはあえて情報をシャットアウト。頭の中で友人と向き合ってみます。仕事と育児に奔走する彼女は、きっと家で器を愛でる余裕なんてなさそう、と無礼な想像を働かせながら、青山のインテリアショップ「H.P. DECO」へ向かいました。

目を奪われたのは、店頭にズラリと並ぶ色とりどりのグラス。パリのガラス工房「ラ・スフルリー」の作品です。ちょうど入荷したばかりで種類も豊富にそろっていて、幸運でした。 よかった、PMSのせいで一ミリも動きたくなかったけど、我を奮い立たせて出かけた甲斐があった……。

「ラ・スフルリー」のガラスは伝統的な手吹き製法で作られているので、同じ大きさでもひとつひとつかたちが異なります。気泡の入り方が違ったり、ガラスの厚みに微妙な変化があったり。その味わい深さが一番の魅力であり、選ぶ楽しさでもあります。

小一時間も悩み抜いた結果、友人にはピッチャーとしても使える淡いブルーの花器をセレクト。自宅用にも欲しくなったことは言うまでもなく、顔モチーフをかたどったユーモラスなグラスをはじめ数ピースを購入しました。グリーンを帯びた柔らかな色味は、ずっと眺めていたくなる美しさ。ハンドメイドの温かみも相まって、使うたびに愛着が増しています。 

あわただしい日常の中のほんの一瞬だけど、このグラスを目にすると心がほっと落ち着きます。友人も、プレゼントした花器を見て、同じように感じてくれているのだろうか。そう思いながら、ひとり悦に入る夜ふけなのでした。

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エディターHAYASHI

生粋の丸顔。あだ名は餅。長いイヤリングと丈の長いスカートが好き。長いものに巻かれるタイプなのかもしれません。

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