[VOL.65] ティモシーと熱愛初期のリリー・ローズを見よ。 キスの準備ができている女子の唇は、リップバームだけ

恋愛の初期において、片時も離れたくない恋人たちはひっきりなしにキスをしたがるものだ。人気上昇中の若手俳優ティモシー・シャラメとジョニー・デップの娘リリー・ローズ・デップがつき合い始めたので、パパラッチは新たな金脈を狙い激写する。そんな外野にはおかまいなしで、ティモシーとリリー・ローズはキスを交わすわけだ。愛し合っているんだから、キスして何が悪い。いや実際、外国人のカップルは話の合間に、食事の合間に、買い物の合間に、チュッチュとやるわけです。なんというか“愛情確認”みたいな感じですかね。

そこで思い出すのが、昔、恋の都おフランスはパリに滞在したときに最初に注目した、フランスの女の人は、アイメイクはバッチリしているのに口紅はリップクリーム程度、ということだった。なにしろ山口小夜子の赤リップがオサレだった時代ですから、私はアイメイク至上主義なフランス女性に軽めに驚いたのだ。だがそれは、カップルのフランス人がことあるごとにキスをするので、真っ赤な口紅なんぞそうそう出来ないのだと思い知った。よく街行くカップルを見ていたら、年配のカップルの女性ほどドギツく濃い口紅をしているではないか。彼らはおそらくキスの回数も目減りしているのでしょう。

そこでヤングセレブのカップルでいつもキスしている女子は、リップバーム程度、という現象が見えてくる。リリー・ローズはまさにそうだし、ジャスティン・ビーバーの新妻ヘイリー・ボールドウィンもそう。彼女たちのみずみずしいピンク色の唇を見ていると『トゥルー・ロマンス』という映画で、主演のクリスチャン・スレーターが一目惚れの恋人役のパトリシア・アークエットのことを「彼女のキスはピーチの味がするんだ」というセリフを思い出さずにはいられない。キスの準備ができている女子の唇は、リップバームだけ。寒くなって唇がかさついてきて、リップバームをガシガシ塗っている私とはえらい違いだな〜、と秋の夜長に思うおばば心よ。

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イラストレーター&エッセイスト 石川三千花

映画、ファッションを独自の視点からイラスト+エッセイで斬る!著書に『石川三千花の勝手にシネマ』、『勝手にオスカー』など。

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