【マーゴット・ロビー】ディカプリオにビンタ、『#バービー 』とは正反対……マーゴットの大胆不敵な挑戦

衆目をあつめるビューティ・ブロンド人形、バービー。この役を演じて右に出るものがいないのが、映画『バービー』(2023年)主演たるマーゴット・ロビーだろう。

 

バービー
photo:Getty Images

ただし、予想不可能な傑物として知られるマーゴット自身は、バービーとは反対の人柄かもしれない。取材した記者いわく、もっとも似ている役柄は、野心を燃やす「ハリウッドのアウトロー」たる『バビロン』(2022年)のネリー。フーリガンのような荒い言葉づかいで知られており、『スーサイド・スクワッド』(2016年)で共演した大御所ヴィオラ・デイヴィスによると、イタズラでどぶねずみをプレゼントされた時もまったく動じなかった肝っ玉。『バービー』プレミア来日は俳優組合ストにより中止になってしまったものの、日本に来たばかりの旅行好きでもある。大の鉄道ファンなため九州のななつ星めあてだったというが、ネットで見かけたラーメン屋を京都で大捜索したり、東京でカルボナーラうどんのため三時間半並んだりもしたという。同作でバディを組んだライアン・ゴズリングの言葉こそ、彼女の魂を体現している。「サメのいる海で泳いで育った大胆不敵」。

バービー
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1990年オーストラリアに生まれたマーゴット・エリーゼ・ロビーは、シングルマザーのもと大家族で育った。高校卒業後、経済的に余裕がなかったこともあり法学部進学を望まれたが、旅をしながら俳優を目指す道を選ぶ。それまで理学療法士の母親がしてくれた思い出話といえばバックパッキングなどの冒険ばかりで、勉強については一切触れられてなかったため、やりたくもない専攻と学費返済に人生を捧げる価値はないと判断したのだという。

実際、そこからの人生は冒険のようなものだった。彼女のスタイルはアグレッシブな猪突猛進。バイトで生計を立てながら、母国のご長寿ドラマ『ネイバーズ』の監督に熱烈な手紙を書いて自分を売り込み、ゲストからレギュラーへ昇進した(このレター戦法はマーゴットの得意技で、のちにクエンティン・タランティーノ監督作への出演にもつながる)。

ディカプリオを平手打ちした伝説

マーゴット・ロビー
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ドラマが終了するとハリウッドへ渡航。マーティン・スコセッシ監督『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013年)の「最高にホットなブロンド」役オーディションは、もはや伝説になっている。まだ無名だったマーゴットは、一世一代の大勝負に出た。レオナルド・ディカプリオ相手に口論する30秒間のセリフ読みのラスト「キスしろ」と威圧された瞬間、台本にない罵詈雑言を浴びせて、スーパースターを平手打ちしてみせたのだ。その場の全員を驚愕させたアドリブにより、彼女は役を手に入れた。

女性の物語を伝える敏腕プロデューサー

2014年には、出演作『フランス組曲』(2015年)で仲を深めたADたちや幼なじみとロンドンで再会し、その場の思いつきで同居をはじめた。現在の夫を含めたこのシェアハウスから誕生したのが、映画制作会社ラッキーチャップだ。

当時「ホットなブロンド」役ばかりオファーされていたマーゴットは、もっと挑戦的な役をやりたがっていた。一方、ハリウッドといえば、フェミニズムが支持されていても、ビジネスとして女性映画にお金が出される環境とは言えない。そこで「待つのが嫌い」な人間を自称するマーゴットは、女性クリエイターとともに女性の物語を伝えるため、起業に出たのだ。スターのプロデュースには「名前だけ貸して実務はやらない」スタイルが多いものの、彼女の場合、毎日のように怒鳴られながらマーケティングやデータに追われる日々を送っている。

この選択は、キャリアの早い段階で自身の作品を調整できることを意味した。たとえば、彼女にはじめての主演とアカデミー賞ノミネートをもたらした『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017年)の場合、有名選手のDV被害歴を描くデリケートなコメディだったため、演出や宣伝の会議にもたずさわった。性暴力加害者に復讐する主人公役を望まれた『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020年)では、より意外性のあるキャリー・マリガンを推薦し、同作をアカデミー賞脚本賞に届けた。

『バービー』の歴史的快挙

バービー
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敏腕プロデューサーになったマーゴットの新たな挑戦こそ「ホットなブロンド」復帰作となった製作&主演の『バービー』である。主演する気はなかったというが、さまざまなバリエーションのバービーを出す企画と聞き承諾。60余年「少女の憧れ」とされつづけながら一部から熱烈に嫌われてもいるこの人形なら、社会的な女性像をめぐるヒット作がつくれると考えたのだ。そして契約の隙をつき、気鋭の女性監督グレタ・ガーウィグが自由に脚本を書ける環境をとりつけたという。

『バービー』は、歴史的ヒットになる見込みだ。有名ブランドを扱う大作にもかかわらず「狂気のゴージャスファンタジー」と謳われたトリッキーなストーリーで話題を呼び、女性を大量に動員したことで2023年最高の北米オープニング興行収入を達成している。

破竹の勢いで障壁をやぶってきたマーゴット・ロビーは、女性俳優たちのロールモデルになるはずだ。一方、彼女の今後は、これからも予想不可能だろう。おそらく、ブレイク時、スコセッシ監督がつづった言葉のとおりに。

「マーゴット・ロビーに似ている人はいません。どんな人なのか聞かれようと、満足な答えが出ないのです」。「きっと、鮮やかな挙動により、永遠に私たちを驚かせてくれる人なのでしょう」。

8月10日(木)全国ロードショー https://wwws.warnerbros.co.jp/barbie/

辰己JUNKプロフィール画像
辰己JUNK

セレブリティや音楽、映画、ドラマなど、アメリカのポップカルチャー情報をメディアに多数寄稿。著書に『アメリカン・セレブリティーズ』(スモール出版)

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