【カイリー・ジェンナー】整形疑惑で億万長者になったカイリー・ジェンナーの「ひかえめ」SNS術

インフルエンサーという称号は、今や職業として知られている。その基礎をかたちづくったスターこそ、Instagramで初めて3億フォロワーを突破した女性たるカイリー・ジェンナーだ。

カイリー・ジェンナー
photo:Getty Images

ゴージャスながら親近感のあるビジュアル、メイクやファッションのセンス等によってSNSの人気者となり、企業がスポンサーについた投稿で稼いでいく……このビジネスモデルを知らしめた彼女の広告料は、23歳にして1投稿あたり約100万ドル(当時約1億円)以上とされた。

9歳のころからインフルエンサー

1997年カリフォルニアに生まれたカイリー・クリステン・ジェンナーは、いわゆるデジタルネイティブなZ世代だ。それどころか、ほとんどインフルエンサーネイティブだったとすら言える。彼女の家族は、人気リアリティ番組『カーダシアン家のお騒がせセレブライフ』のカーダシアン&ジェンナー一族。カイリーは6人兄弟姉妹の末っ子で、9歳のころからカメラの前で生活していた。はじめて自分の影響力を感じたのは、姉や自分が髪を染めると、すぐさまカリフォルニアの女の子たちが同じヘアカラーになっていた時だったという。

合計12億もの「巨大国家」級SNSフォロワー数を誇る一家でカイリーがユニークなのは、比較的「ひかえめ」であるところだ。カーダシアン三姉妹といえば、プライベートを切り売りする過激なスキャンダルでスターの座にのぼりつめたガッツで知られている。一方、彼女たちと10歳以上離れている異父妹のカイリーの場合、派手なゴシップを避けがちな傾向にある。たとえば、最近でも、ロマンスが噂される人気俳優ティモシー・シャラメとの関係を公にしていない。

整形疑惑で億万長者に

カイリー・ジェンナー
photo:Getty Images

それでもカイリーは、カリスマティーンとして大金を稼ぎつづけてきた。最大のスキャンダルは17歳のときのリップ騒動だろう。突然ふくらんだ唇にかけられた美容整形疑惑を否定したこともあって、若者のあいだでショットグラスに口を挟んで唇をふくらませる危険行動が「カイリー・ジェンナー・チャレンジ」として流行し、社会問題になってしまったのだ。カイリーは世間にフィラー注射を認めるはめになったが、この痛ましい経験は、当時立ち上げたばかりだった化粧品ブランド、カイリー・コスメティックスの宣伝に活用された。

男性たちから「セクシーではない」と言われた薄い唇にコンプレックスを抱いていたカイリーは、既存の化粧品では理想の厚さが手に入らなかったから、美容整形に手をだした。そんな経験から生まれたカイリー・コスメティックスの目玉商品たるリップキットは、それだけで理想の唇を手に入れられる画期的アイテムなのだ!……こんな風にスキャンダルをフル活用した同ブランドはすぐさまバズり、実店舗を持たない「インフルエンス」主軸のビジネスモデルにして12億ドル級の企業に成長。カイリーは25歳にして「史上最年少ビリオネア」の冠も手にした(ただし、これを認定したForbes誌は、提出書類に不正があったとし、のちに称号を取り下げた)。

「本当の自分」を見せないSNS術

カイリー・ジェンナー
photo:Getty Images

カーダシアン&ジェンナー家で「一番稼ぐ子ども」の座についたこともあるカイリーだが「一番個性が知られていない子ども」でもあるかもしれない。彼女と親しい人々は、よく「本当の性格が全然知られていない」と主張する。子共の父親であるラッパーのトラヴィス・スコットによると(おバカなお嬢様と思われている)彼女はかなり頭がいいし、友人いわく(わがままな印象を持たれがちだが)人を笑わせていくクールな人柄だという。

二児の母となった現在26歳のカイリーは、番組出演やSNS投稿数を減らしていっている。この「ひかえめ」なキャリア選択は、彼女らしいのかもしれない。じつのところ「本当の性格」とギャップのあるイメージは、本人が意図的に築いたものだった。

「昔は本当の自分をSNSで見せてたんだけど、有名になればなるほど気づかされたことがある。自分の本音や好きなものに対して悪口を言われると、本当に傷つく。SNSでキャラクターを演じて、その役柄が叩かれたほうがマシだった。だから、あまり本当の自分は見せないようにしたの。悲しいことだけどね」

彼女いわく、SNSでは、露出を増やすほど人々から「なんでも言っていい存在」と思われるようになり、対処できない誤解も増えていく。結局、家族や友人にだけ「本当の自分」を愛してもらえればいいと思えるようになったという。

子どものころからTV撮影が当たり前だったカイリー・ジェンナーの人生は、一般的とは言いがたい。しかし、世界最大級のインフルエンサーたる彼女が導きだした結論は、SNS時代の教訓となるかもしれない。結局のところ、SNSだけで人柄は判断できないのだ。 

辰己JUNKプロフィール画像
辰己JUNK

セレブリティや音楽、映画、ドラマなど、アメリカのポップカルチャー情報をメディアに多数寄稿。著書に『アメリカン・セレブリティーズ』(スモール出版)

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