【アーロン・テイラー=ジョンソン】新『007』候補、年上妻、大役拒否で子育て……アーロンのスローライフ

『007』シリーズの次期主演と噂されるアーロン・テイラー=ジョンソンは、ジェームズ・ボンドと対極の存在かもしれない。波乱万丈なかたちで年下の女性と浮名を流すイメージが強いスパイと異なり、現在33歳の彼は、23歳年上の妻とのおしどり夫婦として知られている。

ティーンで婚約した子役

アーロン・テイラー=ジョンソン
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1990年イギリスの庶民的家庭に生まれたアーロン・テイラー=ジョンソンは、R.E.M. 『ÜBerlin』のミュージックビデオで魅せたように、踊りを習いながら育ったダンサーだ。演技にも触れていたため、6歳のころ子役としてデビューし、忙しい幼少期を送った。今では考えがたいが、演劇舞台で全裸になったりもしていたという。

10歳のころ映画『シャンハイ・ナイト』(2003年)にてジャッキー・チェンと共演したアーロンをスター子役にしようとする業界の動きはあったらしいものの、窮屈な契約や挨拶合戦を「フェイク」と感じた彼は、ハリウッドから去った。しかし自分を「大人」として扱ってくれる俳優業界には惹かれていたから、15歳で学校を中退。ふたたびロサンゼルスに移ったものの、オーディションで惨敗の日々を送った。諦めて帰国を決め、空港に降り立ったそのとき舞い降りた報せが、出世作『キック・アス』(2010年)の主演オファーだった。

『キック・アス』製作前に主演したのが、英国映画『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』(2009年)。同作の監督こそ、将来の妻サム・テイラーだ。18歳のアーロンは猛烈に恋し、撮影が終了するやいなや、まだデートもしていなかった41歳のサムにプロポーズしたそうだ。

サムはダミアン・ハーストらと同時代の著名な美術家だったため、ティーンエイジャーとの年の差ロマンスが物議を呼んだ。同時に、この結婚こそが、夫婦で姓を共有してテイラー=ジョンソン名義となったアーロンのキャリアに大きな影響を与えることとなる。

キャリアより家庭を選んだ父親

アーロン・テイラー=ジョンソン
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カルトアクション映画『キック・アス』がヒットしたのち『GODZILLA ゴジラ』(2014年)や『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015年)といった大作シリーズに出演していったアーロンは、2010年代前半に「ハリウッドの新星」となったものの、大量のオファーを断っていったという。

理由は家庭生活。アーロンとサムは、4人の娘に恵まれている。サムと元夫とのあいだに生まれた長女は現在成人しているが、次女はまだ10代だ。そして、2010年に三女、2012年に四女が誕生している。二十歳で若き父親となったアーロンは、スターとしてのキャリアよりも子育てを選んだのだ。

当時23歳のアーロンは、高報酬の大役を断れることこそ自分の強みとしていた。

「同年代(20代)の俳優のように野心がないんだ」

「あの役を断るなんて後悔することになる、ってよく言われる。でも絶対にしないよ。娘たちと過ごすことを悔やむなんてありえないだろ?」

共働き夫婦として仕事期間を交代制にしているアーロンは、子どもたちの歯医者を予約したり、娘のバスケットボールチームのコーチをつとめたりする、家庭的な父親となった。カリフォルニアから英サマセットの農場へと引っ越した現在、豚や蜂とともにスローライフを満喫しているようだ。料理の腕は一級品のようで、チェリーパイは出演映画『ノクターナル・アニマルズ』(2016年)監督のトム・フォード、サワードブレッドは『ブレット・トレイン』(2022年)共演者ブライアン・タイリー・ヘンリーのお墨つきだ。

キャリアより家庭生活を選ぶ、地に足のついた人生。それこそ、ジェームズ・ボンドにもっとも似ていない面だろう。

アクションスターへの道

アーロン・テイラー=ジョンソン
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そんなアーロンは、近ごろ、本格的にアクションスターの道を歩みはじめている。スタジオ幹部によると『ブレット・トレイン』でブラッド・ピット相手に存在感を示したスター性が買われたのだという。今年の出演作には、ライアン・ゴズリング主演のアクション映画『フォールガイ』(2024年8月日本公開予定)にくわえて、主役をはるスパイダーマンシリーズ『クレイヴン・ザ・ハンター』(2024年秋公開予定)も待ち受けている。

アーロン・テイラー=ジョンソンの俳優としての魅力は、ダンサーとしてはぐくまれた直感的動作のワイルドさと優雅さにある。彼が『007』に就任するかは確定していないが、もしそうなれば、良いボンドになるだろう。

辰己JUNKプロフィール画像
辰己JUNK

セレブリティや音楽、映画、ドラマなど、アメリカのポップカルチャー情報をメディアに多数寄稿。著書に『アメリカン・セレブリティーズ』(スモール出版)

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