【ロバート・パティンソン】アイドルから「奇人」俳優へ。 #オデュッセイア でも話題の怪演の極意

アイドルとして人気を博したのちトップ俳優の地位にのぼりつめた者は少なくない。しかし、なかでもロバート・パティンソンは風変わりな道を辿った。世界中の少女を虜にしたブレイク以来、型破りなキャリアを突き進み、今や「ハリウッドきっての奇人」の称号を手にしている。

アイドルとして人気を博したのちトップ俳優の地位にのぼりつめた者は少なくない。しかし、なかでもロバート・パティンソンは風変わりな道を辿った。世界中の少女を虜にしたブレイク以来、型破りなキャリアを突き進み、今や「ハリウッドきっての奇人」の称号を手にしている。

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ロバート・パティンソンのタキシード姿

photo:Getty Images

新作『オデュッセイア』(公開中)での小物じみた悪役でも話題をさらったように、得意とするのは型破りな変人役。名だたる監督から「食わせもの」認定を受ける本人もつかみどころがない人物で、真面目な態度でいつづけることが苦手なため、唐突に意味のわからない嘘をついたりもする。有名なネタは、子どものころサーカスでピエロが爆死するのを見たというもの。

もっとも信じがたい発言は「自分は演技が下手」という主張かもしれない。自虐が絶えない本人いわく、繊細な表現ができないから普通の役を選べず、変わった役を「3パターンくらいの表現」でまわしているらしい。

『ハリー・ポッター』シリーズからアイドルに

『ハリー・ポッター』の俳優仲間とロバート・パティンソン

photo:Getty Images

1986年、英ロンドンに生まれたロバート・ダグラス・トーマス・パティンソンは、学校で「マイケル・ジャクソンの子ども」だと嘘をついてまわるような風変わりな少年だった。

心配した父親から演技を勧められたものの、学校の先生からは「芸術系に向いていない」 と強くたしなめられたため地元の劇団に通うことに。そこでスカウトされた流れで、なんと『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(2005)のセドリック役に起用された。

俳優よりもラッパーを志望していたロバートは、突然の大仕事でパニック状態に。そこで心配性の自分を追い込むべく、撮影直前に絶叫したり自身の顔を殴ったりする方法を身につけた。

『トワイライト』で共演したクリステン・スチュワートとロバート・パティンソン

photo:Getty Images

たんまりギャラをもらったものの、バンド活動に夢中になって一文無しになってしまったロバート。そんな彼に舞い込んだブレイクこそ、ゴシックロマンス小説の実写化『トワイライト』シリーズ(2008〜2012)。主人公と運命の恋に落ちる吸血鬼役に大抜擢されると、一夜にして世界的なアイドル俳優へと様変わりした。

主演のクリステン・スチュワートとの交際もあってセレブの仲間入りもしたが、振り返ってみれば、最初からクリーンなアイドルでいるには難しい気質だったのかもしれない。健全なイメージを求められながらも奇っ怪な発言を繰り返してゴシップ誌の標的になり、スタジオや制作陣ともしばしば衝突していった。

それでも、アイドルとしての成功は型破りなキャリアの足がかりとなった。人気シリーズを通して安定した収入を得られたおかげで、英国俳優にありがちな時代劇の仕事を避けて儲かりそうもないアート映画を作ることもできたのだ。

「奇人」のスーパーヒーロー

演技力に自信がないロバートが誇る能力こそ「監督を見る目」。たとえば、当時まだ新鋭監督だったサフディ兄弟が撮った一枚の場面写真を見てすぐに主演作『グッド・タイム』(2017)の企画を取りつけた。

ニューヨークを逃げ回る詐欺師役を短期間で演じきると、今度は正反対の役柄を求め、これまた当時の新鋭監督だったロバート・エガースに「ものすごく変な映画」をリクエスト。こうして生まれた攻めのアート映画こそ、孤島で狂っていく灯台守を描いた『ライトハウス』(2019)だった。

執念ほとばしる「奇人」役の名手としての評判を築いたロバート・パティンソン。そうした役柄の「理解不能な流れで酷い決断を下してしまう様子」に面白さを見出しているというだけあり、深刻になりすぎないユーモラスな表現も人気の秘訣になっている。

計画性なしに尖った挑戦に出て行ったぶん、演技仕事が来ない時期も経験したが、2020年代には大作へ復帰。なかでも大役を務めた『THE BATMAN-ザ・バットマン』(2022)でも自分の個性は守り通した。おなじみのキャラクターのプレイボーイ的な要素をなくして社交が苦手な設定を加えることで「奇人スーパーヒーロー」像をつくりあげたのだ。

怪演の極意

パートナーのスキとロバート・パティンソン

photo:Getty Images

恋人スキ・ウォーターハウスの間に娘を授かり、制作会社を立ち上げた40代の今は収入も安定し、生活も落ちついたという。とはいえ『DUNE/デューン』シリーズ(2021〜)などの大作を任されながらアート系作品も続けている。2026年は、日米で『DIE MY LOVE/ダイ・マイ・ラブ』、『ドラマなふたり』、『オデュッセイア』、『PRIMETIME(原題)・(日本は2027年公開)』、『デューン 砂の惑星 PART3(2026年12月18日日米同時公開)』と4〜5本もの出演作が公開されるほど、勢いはとどまることを知らない状況だ。

ジブリ映画『君たちはどう生きるか』(2023)の英語吹替版で演じた青サギ役としても、本人の口調とはかけ離れた怪演を披露したロバート。近ごろ好んでいるという「恥知らずで大胆な役柄」が、より魅力を際立たせているのかもしれない。

ロバートの演技スタイルは、いわば一発勝負型。リハーサルを控えめに、本番の撮影にアドレナリン全開で挑んで、大袈裟な言い回しや衝撃的なアドリブを繰り出すことに集中している。将来の観客よりもまず先に撮影現場にいる人々を驚かせて笑わせることに達成感を覚えているのだ。ネガティブ思考の激しい本人いわく「相手の役者に少しでも演技を予想されていたとわかると、自分が馬鹿みたいに思えてくるから」。

ロバート・パティンソンの怪演は、共演者すら本気で驚かせているからこそ場をさらう威力を持っているのかもしれない。監督陣がつけた「食わせもの」の称号は言葉どおりというわけだ。

「ハリウッドきっての奇人」が次にどこへ行くかは誰にもわからないが、これからも驚かせてくれることは間違いない。

辰巳JUNKプロフィール画像
辰巳JUNK

セレブリティや音楽、映画、ドラマなど、アメリカのポップカルチャー情報をメディアに多数寄稿。著書に『アメリカン・セレブリティーズ』(スモール出版)