CULTURE&LIFESTYLE FEATURE

ジャーナリスト佐藤友紀presents 2016年はシネマで“奇妙な冒険”を!

彼女たちの時代が始まる

『あの日、欲望の大地で』(’09)で自分の少女時代の役にジェニファー・ローレンスを抜擢したシャーリーズ・セロンのように、「シアーシャの時代が絶対に来るわ!」と予言していた『ハンナ』(’11)の共演者ケイト・ブランシェット。実力をつけ、ついに今年ブレイクする新顔は?


(左から)Alicia Vikander(アリシア・ヴィキャンデル)、Saoirse Ronan(シアーシャ・ローナン)、Brie Larson(ブリー・ラーソン)

たとえて言うなら、最初は霞がかかっていたようにはっきりしなかった顔が、どんどんクリアに強い印象を持ち始めるようなものだろうか。彼女たちはアンジェリーナ・ジョリーのように一度見たら忘れられない顔を持っているわけではないのに、自分が演じる役、物語にとてつもない光をあてる。

アート系の小品ながら、今、全米で大騒ぎされている『ROOM』のブリー・ラーソンなど、まさにそう。10代だったある日、見知らぬ男に誘拐、監禁されて男の子を出産させられる、というストーリーからは、ただただ重苦しい思いを抱いてしまうけど、ブリーの人間であることをやめない、どんなに絶望的なときにあっても「負の連鎖を息子にだけはつなげないぞ!」とでも言うべき本能的な鉄の意志が、映画に独特の気高さをもたらした。長い年月狭い場所に閉じ込められていて、そんなにスタイルがよいわけではないというのも説得力あり。息子役のジェイコブ・トレンブレイとともに、大絶賛されるのも当然、のオスカー級演技力だ。

『ブルックリン』のシアーシャ・ローナンは、13歳で出演した『つぐない』のときから高い評価を受けていた。「撮影でロンドンやニューヨークのような大都会に行っても、とっととアイルランドの故郷の町に帰ってきちゃうの(笑)。近所の人たちにとっては、私は何も変わってない“昔から知ってる女の子”だから」というスタンスが、シアーシャの場合、吉と出ているのだろう。『ピアノ・レッスン』(’93)のアンナ・パキン、『ハリー・ポッター』シリーズのエマ・ワトソンと、若くして有名になった女優はアメリカの、主にアイビーリーグの大学に留学して、瞬く間にアメリカナイズされていくが、シアーシャは『ブルックリン』のような1950年代のアイルランドからニューヨークに渡ってきた娘役はもちろん、どの時代のどんな役柄も自分のものにできるのだ。

それが証拠に、’16年春のブロードウェイの超目玉として、シアーシャとベン・ウィショーが共演するアーサー・ミラーの『るつぼ』がチケット争奪戦になっているが、「今、世界でもっとも才能がある」と言われる演出家、イヴォ・ヴァン・ホーヴェとの初仕事というのも、もっと評価されていい。ちなみに『ブルックリン』の監督ジョン・クローリーも、東京で日本人キャストで別役実作の『マッチ売りの少女』を演出した才人だ。

『リリーのすべて』のアリシア・ヴィキャンデルも強い印象を残した。’15年のオスカー・ウィナーでここしばらくはよい仕事が殺到しそうなエディ・レッドメインと、すぐには理解できないような、だからこそより深く心に突き刺さる夫婦愛を見せているのだ。
 
20世紀初頭のデンマークの漁港の町で、お互い、若い画家としてボヘミアンのような暮らしをしているカップルにまず魅せられるが、自分も関わった女装の魔力に夫がかかり、「本当の自分とは?」と模索していく姿をただ見つめているだけの切なさは絶品。同じ美術を志す人間でも、パリなどとは異なるペールがかった色調のドレスも素敵で、劇中のアリシアの着こなしから、ネオクラシックなブームの予感すらしてしまうのだ。監督やエディ、そして共演者のマティアス・スーナールツ、アンバー・ハードらとベネチア映画祭の記者会見に並んだ姿は、けっこう今どきの若い女性だったから、この役との出会いをきっかけにますますいろんな女性像を演じてくれそうな気がする。

余談ながら『アクトレス 女たちの舞台』でハリウッド女優として初めてフランスの映画賞セザールの助演女優賞を受けたクリステン・スチュワートの評価が、本国アメリカでも日増しに高いものになっている。これまでは世界中の女優たちがハリウッドでの成功を目指していたのに。「チャンスは逃すな」。月並みだけどこれに尽きる!

SPUR2016年3月号掲載
>>電子書籍でもご覧いただけます

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