翻訳小説の入門に。気分にぴったりくる一冊に会える
担当:佐々木一彦さん(新潮社)
1998年に誕生したクレスト・ブックス。どれを読んでもハズれのない上質な作品群と、美しい装丁や造本で、不動の人気を保つ。なかでもジュライは女性の支持が高い、と編集の佐々木さん。 「強烈な個性と奇妙なやさしさに満ちたこの短編集は、本国での出版時から、目利きの原書読みの方々に強く推薦されました。物語の声にぴったり寄り添う岸本さんに訳をお願いし、ジュライのおかしさと繊細さが鮮明になりました。なかなか光のあたらないような人の内面を掘り下げて、光らせることのできる、稀有な作家だと思います」
『いちばんここに似合う人』
ミランダ・ジュライ著 岸本佐知子訳(新潮社/1,900円)
プールのない町で老人に洗面器で水泳を教える「水泳チーム」、会ったこともない友人の妹に恋する「妹」など、劇場映画の主演・監督もするジュライによる16の不思議な短編集。
SPUR2016年1月号掲載
イチ押しの『甘美なる作戦』については「ラブストーリーでメタフィクションでスパイものと、楽しい要素が盛りだくさんです。70年代の英国的ディテールも存分に味わえます」とのこと。マキューアンは、最新刊『未成年』もクレストから11月末に刊行予定だ。
『甘美なる作戦』
イアン・マキューアン著 村松潔訳(新潮社/2,300円)
恋に落ちた大学教授のすすめで、イギリス内務省保安局へ就職したセリーナ。事務員のはずが諜報員としての任務が下る。英現代文学の巨匠が洒脱に描く、だましあう甘い関係。
SPUR2016年1月号掲載