海外文学で、世界一周|南米大陸、オーストラリア大陸

逃れられない愛。墜ちてゆく愉楽

『悪い娘の悪戯』
マリオ・バルガス=リョサ著 八重樫克彦、八重樫由貴子訳(作品社/2,800円)

ペルー出身のノーベル文学賞作家が、70歳をすぎて書いた、40年に及ぶある女性との愛の軌跡。リカルドは、小悪魔的なリリーの言動に翻弄されつづける。ペルーのリマ、パリ、東京、マドリッドと、何度でも身分を変えて現れるリリー。政治の季節を生きる男がさらされる運命とは。体温と匂いが感じられる小説。

SPUR2016年1月号掲載

真の鬼才が放つ、抱腹の物語

『文学会議』
セサル・アイラ著 柳原孝敦訳(新潮社/1,700円)

多くのラテンアメリカ作家が敬愛するアイラの、『わたしの物語』につづく待望の邦訳。小説家でマッド・サイエンティストの〈私〉は、ある文豪のクローン作成を企み、細胞を採取するため文学会議に出る。しかし思わぬ失敗が……。先の読めない展開と奇妙な読み心地がくせになる。アルゼンチンの奇才による2編。

SPUR2016年1月号掲載

一気読み、必至。物語を堪能せよ

『秘密』上・下巻
ケイト・モートン著 青木純子訳(東京創元社/各1,800円)

イギリスの名女優ローレルは、母の秘密を探り始める。かつて正当防衛で強盗犯を殺した母。しかし男は母を知っていた? 古い写真の意味するものは? 戦時下と現代のロンドン、ふたつの時間を行き来し、ラストまで読者を謎で惹きつける手腕は秀逸。どれを読んでも面白いモートンの、現段階の最高傑作。

SPUR2016年1月号掲載

FEATURE
HELLO...!