河島春佳さん / フラワーサイクリスト

PROFILE
かわしま はるか●フラワーサイクリスト。株式会社「RIN」代表。ロスフラワーを用いた装飾やプロモーション事業を展開する。大自然の中で幼少期を過ごし、自然を愛するようになった。
Instagram: @haruka.kawashima

好きを仕事にすると可能性無限大。
大変でも、苦になりません

日付が変わるだけでゴミになる。そんな花に新たな命を吹き込む

 廃棄されてしまう花をドライフラワーにして、さまざまな作品に生まれ変わらせるフラワーサイクリストの河島春佳さん。そもそもなぜそのような活動を始めるに至ったのだろうか。
「3年前のクリスマスシーズンにフラワーショップで短期アルバイトをしていたんです。そのとき、プロポーズ用の赤いバラを売っていたのですが、25日の閉店と同時に店内はお正月の商材に変わり、数百本単位で捨てられていたんですね。日付が変わっただけでゴミになってしまう様子を目のあたりにして、すごくショックを受けました。そこで廃棄される花を“ロスフラワー”と名付け、アクセサリーやサシェなどにアップサイクルをして販売を始めたんです」
 そこからは手探りだったが、まず行動することを信条に、河島さんは SNSでの発信に力を入れた。するとキャッチーな肩書きと時代に合ったエシカルな活動がメディアに注目され、徐々に認知が広がっていった。
「ファッションブランドを中心に、ポップアップストアの装飾やワークショップのお仕事をいただけるようになったんです。最近は、資生堂の複合体験施設で3ヵ月間の展示を行いました」
 約3年で目覚ましい活躍ぶりだが、その秘訣は一体どこに?
「“好き”を仕事にすると可能性が無限大になるんですよ。客観的に見ると大変なことでも、苦だと思わないんです。だから常に自分が何に興味があるのか観察して、その中からビジネスになるものを探すことが重要だと思います。あとはあえて人が進まない道に行くこと。実際私はフラワーショップでの実務経験がほとんどありません。業界の知識がない分自由な発想ができると信じて活動しています」

(上)資生堂グローバルイノベーションセンターでの企画展「サステナブルビューティーガーデン」で展示を担当。直径約3mのフラワードームを制作。
(下)アッシュ・ペー・フランス主催の合同展示会「ルームス エクスペリエンス」に出店したことも。

 

緊急事態宣言がきっかけになり業界を変える新たな販路を確立

 最近河島さんが新しく構築したのが代行販売システム“フラワーサイクルマルシェ”。新型コロナウイルス感染症の影響でイベントや結婚式が中止になり、行き場をなくした大量の花を農家から直接、消費者に届けるサービスだ。
「自宅で過ごす時間が増えるなか、花に癒やしを求めている人が多いようで、一日足らずで数千本売り切れることも。緊急事態だからこそ今までと同じようにやっていてはダメだと気づいた農家さんが多数参加してくださり、業界が大きく変わる転換点にいることを肌で感じています」
 さらに河島さんは、今までアトリエで行なっていたワークショップをオンラインレッスンへと切り替えた。すると思いのほかポジティブな面がたくさんあったと語る。
「オンラインにすることで、遠方の方や小さなお子さまがいて日中の外出が難しい方などにも参加していただけました。最近製作したのは石けんだったのですが、あまり細かい作業がないこともあって、問題はほとんどありませんでした。住んでいる場所は関係ないし、アトリエで行うより定員も増やせるので、これからもオンラインでのワークショップを続けていきたい」
 今後は一本でも多くの花を救うべく、ロスフラワーの販路を増やしたい、と河島さん。
「私たちが持つ強みを生かして、新たな出荷ルートを確立することが目標です。コンビニやスーパーなどのレジ横に、ワンコインくらいで買えるブーケを置くかたちで展開するのが理想。花をもっと身近なものにして、特別なときに贈るだけでなく、日常的に飾って楽しむ文化を日本でも根づかせていきたいです」

(上)代官山のアトリエで、オンラインワークショップを行う河島さん。
(下)ロスフラワーを用いた石けん。ワークショップ参加者には、材料が入ったボックスが事前に届く。

ニュータイプな生き方の3カ条

 まず行動する。やりながら見えてくることを大切に
 自分の好きなことの中からビジネスにつながるものを探す
 自由な発想をするためにあえて人と違う道に進む

FEATURE