ベニヤ ユキ●服飾の専門学校を卒業後、モデル活動のためロンドンへ。『SPUR』をはじめとしたモード誌やカタログなどで幅広く活躍している。
1 自分で染めた糸を使って作ったバッグ。「父がふと言葉にした『え』をデザインしてみました。日本語が好きなので、これからもニットと融合させていきたいです」
2 モヘアの糸で編んでいるのは、プルオーバーのベスト。「いつもパターンなどは引かずに編み出しちゃいます。イメージどおりにならなかったらほどけばいいので。それくらいの気楽さでやっています(笑)」
自由気ままにチャレンジを繰り返して
ロンドンでのモデル活動中に、縁あってニットのクリエイターデュオの元でインターンをしていたYuki Beniyaさん。そこで基本的な技術を学び、今はかぎ針編みのほか機械編みにも挑戦している。「ニットは私にとって友達みたいなもの。どこにでも持っていけるし、遊びたいときに遊べる存在です。調子がいい日は朝早くから夜まで一日中編み続けてしまうこともありますね。頭の中にデザインのアイデアが湧いてきて、形にしなきゃ気が済まなくなっちゃうんです。ひたすら1本の糸を編んだり、色の組み合わせを目で楽しんだりするのはメディテーションにもなっていると思います」
そうしてでき上がった作品は、近しい人々にあげてしまうため、ほとんど手もとに残っていないという。「パンデミックをきっかけに、ロンドンから帰国し、実家に住んでいるんです。久しぶりに家族を近くに感じて、自分の周りにいてくれる人たちに"ありがとう"の気持ちを伝えたくて編んでいます。人に喜んでもらえるのはやっぱりうれしいですね」
コロナ禍で時間ができたことや家庭菜園好きの母のすすめもあり、草木染めも始めた。「椿やヨモギ、桜の木の皮などを家の近所で拾ってくるんです。でも取るのは落ちている葉や花のみ、というのがマイルール。なかなか市販の染色剤のような色は出せないけど、いつか草木だけで再現するのが目標です。不思議だと感じることを探求するのが好きなので、草木染めも編み物ももっと極めていきたいです!」
3 実家の近くで調達してきたクチナシの実、ブドウの皮、自宅で育てているローズマリー。散歩中に見つけて「色が出そう!」と思ったもので挑戦することも多い
4 草木は不織布の袋に入れ、適量の水で20分ほど煮出す
これで染めたらどうなる?を試す日々です
5 煮出した水にコットン糸を浸けていく。事前に豆乳などタンパク質を染み込ませておくと染まりがよくなる
6 右から、ブドウの皮、ローズマリー、クチナシの実で染めた糸をグラデーションになるよう並べて。「染色を助ける媒染剤の種類によって、色のニュアンスが変化するんです。今日は銅と鉄を使ってみました」
photography: Cosmo Yamaguchi text: Mai Ueno