自分らしくあるための、仲間たち。女子スケーター映画『スケート・キッチン』

(c)2017 Skate Girl Film LLC.

ミュウミュウのフィルム・プロジェクトの一本として、2016年に発表された『That One Day』。クリスタル・モーゼル監督がこの短編で紹介した女子スケボー・クルー、スケート・キッチンはたちまちファッション界で人気となりました。映画も長編となってカムバック。今回はもっと突っ込んで、彼女たちが抱える悩み、問題、それを乗り越える仲間意識がわかる一本に。監督とスケート・キッチンが結んだ絆が内容にも映像にも表れている。でも、やっぱり一番光っているのは彼女たちのカッコよさです。

物語はひとり孤独感を持っていた郊外に住むカミーユが、NYの街で女性だけのスケート・クルーと知り合い、成長するというもの。母親はカミーユがスケートボードをするのを認めないし、気になる男子は仲間の一人の元カレで、そこには揉めごとが待っています。このあたりは王道の青春映画。ただ違いを作っているのは、一人ひとりの服装やヘア、仲間でわちゃわちゃ話している感じ、そして男子が幅を利かせるスケートパークでの振る舞いです。彼女たちには明らかにフェミニスト的なエッジがあって、お互い服装が似ていることもなく、とても個性的。そこに爽快なスケートボードの映像が乗ってくる。

(c)2017 Skate Girl Film LLC.
(c)2017 Skate Girl Film LLC.


見ていてふと思い出したのは、17歳で世界中のチャートNo.1になったミュージシャン、ビリー・アイリッシュ。彼女はオーバーサイズの服を着て、話し方もまるでブラックのラッパーみたいだったりします。スケート・キッチンのクルーも従来の「女らしさ」にとらわれず、それぞれが自分のスタイルを見つけようとしていて、連帯することでそれを支え合っている。

『That One Day』の最後にはビキニ・キルの曲、“レベル・ガール”が流れました。ビキニ・キルが牽引したムーヴメント、ライオット・ガールでは女性が成長すると妻や母になることに反抗して、わざと少女っぽい服を着たりしていた。「ガーリー」は反抗のしるしだったのです。いまの若い女性も違う形でジェンダー・ロールに反抗している。彼女たちが作るカルチャーがまた「女性であること」の意味を広げてくれるんじゃないか、とワクワクしています。


『スケート・キッチン』
監督/クリスタル・モーゼル
出演/レイチェル・ヴィンベルク、ジェイデン・スミス
5月10日より渋谷シネクイントほかロードショー

映画ライター 萩原麻理プロフィール画像
映画ライター 萩原麻理

本誌で映画のレビューを手がける。ライター、エディター、翻訳もこなす。趣味は散歩と、猫と遊ぶこと、フットボールを見ること。

 

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