2021.10.08

内なるピエロとともに生きる【UMMMI.の社会とアタシをつなぐ音】

UMMMI./うみ
1993年東京都生まれの映像作家。これまでに、愛、ジェンダー、個人史と社会をテーマに作品を発表。ルイ・ヴィトンやナイキなどのファッションブランドとの仕事の傍ら、音楽好きな一面を生かしMVの制作も行う。

vol.8 内なるピエロとともに生きる

「All of This」
Jorja Smith
「CLOWN」
OMSB

 灼熱の夜には、ラブリーな誰かと南アフリカ発のアマピアノで踊りたい。アツアツな夏を想像していたけれど、アタシの住んでいる九州は豪雨続きで、ひとり家にこもっている。アマピアノは、ここ数年盛り上がっている新ジャンルで、ログドラムが印象的なハウス派生の音楽。永遠に続きそうな酩酊感たっぷりのサウンドを浴びて、今からでも終わらない夏を過ごしたい。
 そんな中、イギリスの歌姫Jorja Smithがアマピアノとして発表した新曲「All of This」について解説したDJのmitokonさん(@mitokon)のTwitterの投稿を見た。このジャンルが生まれたエリアの出身者とタッグを組むのではなく、他国であるガーナのプロデューサーを起用したこと、発祥地のオリジネーターへのリスペクトのなさについてを指摘していた。アマピアノの背景を知るきっかけとなった作品だっただけに、悔しい。でも、失敗を通じて学べることもある。この世に失敗しない人なんていないのだから、何を言われても、これで辞めてしまうのではなく、次回はぜひ南アフリカのミュージシャンと組んでほしい。
 また、アマピアノと酩酊の夏に思いきりくらったのは、OMSBの「CLOWN」だった。哀しくもやさしいリリックが心に響く。「恥で芸肥やす奇妙な牢屋」、「いかれたclown 笑ってくれよ」とラップする。自分をピエロと評した彼の作品は、アタシの人生のテーマソングにもなりそうだ。甘いビートに誘われて耳を傾けてみると、アマピアノで踊る人々のイメージが浮かんだんだ。ボトルを頭に乗せたり、グラスを片手に持って、酒をこぼさないように酩酊の中でゆっくりと体を揺らしている。ギリギリを攻める危うさと、ひょうきんさが入り交じったダンスは、OMSBの傑作とリンクする。そして悲しみとお笑いに生き抜いてきた自分自身をも、見いだしてしまった。この社会において、アタシは優等生にも美女にも天才にもなれないから、自分の心地よい場所を探して、どうにか折り合いをつけながら、おどけて場を沸かそう。そんな"内なるピエロ"を抱えた人たちを肯定してくれる曲。

Monthly Pick-up

『Before I Die』
Park Hye Jin
¥2,420/Beat Records
LA在住の気鋭の韓国人シンガー兼プロデューサーが、ヒップホップからテクノまで、多彩なビートに乗せたファーストを送り出す。音の数を絞ってコンパクトな曲を作る彼女は、徹底したミニマリスト。歌い方も素っ気ないが、自分の欲望と恐れ、強さや脆さを映す簡潔な言葉には、エモーショナルな重みがある。
『Memory Device』
Baba Ali
¥2,530/Big Nothing
黒光りするレトロなシンセの音とファンキーなグルーヴ、そしてブルース・シンガーのような憂いに満ちた歌声で構築された本作は、ナイジェリア系アメリカ人アーティストのデビュー作。世界各地を転々としながら彼が感じてきた、現代社会に漂う不安を、テンションあふれるダンス・ミュージックに転化した。

SOURCE:SPUR 2021年11月号「UMMMI.の社会とアタシをつなぐ音」
text: UMMMI.   Hiroko Shintani(Monthly Pick-up) edit: Ayana Takeuchi