美と品格のうずまくグレース・ケリー展 #10

松屋銀座店から横浜、大阪、名古屋と各地を巡回する「グレース・ケリー展~モナコ公妃が魅せる永遠のエレガンス~」に行ってまいりました。シンデレラストーリーを体現したグレース妃は、誰もが憧れるセレブの最高峰的存在です。

入るとまず、アルベール2世からのメッセージが。美貌遺伝子を受け継いでいると近頃話題のジャック王子のお父上です。「彼女の内側からにじみ出るエレガンスや思いやりを知っていただきたい」とのことでした。内側からも外側からも美しいグレース・ケリー。美しい写真がプリントされたスクリーンが何枚も下がっていて、美しさの破壊力に圧倒されます。



最初のコーナーは、映画女優としての軌跡。フィラデルフィアの裕福な一家に育ったグレース。マリリン・モンロー全盛期に、気品を武器にスターダムにステップアップしていきます。当時のグラビア写真が展示されているのですが、海から上がった瞬間の写真は表情もメイクも全く崩れておらず、一般人との差を痛感。グレースをずっと撮影し続けていたハウエル・コナンというアメリカ人カメラマンとは、結構親しいのが写真から感じ取れますが、どんな関係か妄想が刺激されます。「上流社会」というタイトルの、その後の人生を予感させる映画にも出演。その時既に、レーニエ3世からの婚約指輪をはめていました(カルティエの巨大なダイヤモンド)。アカデミー賞も受賞し、人気絶頂でプリンセスになられるとは、リア充という俗な言葉では言い表せません。

レーニエ3世とは映画祭で訪れたカンヌにて雑誌の対談で出会いました。彼のことを「とてもチャーミング」と感じたというグレース。文通で交流し、「2度目にお会いする前から大公に恋をしていた」そうです。しかしレーニエ大公、結婚のとき、33歳だったとは。4-50代に見えて、それだとグレースがお金目当てであるような誤解を与えかねない老け顔です(そう思ってしまった私の心が歪んでいたのかもしれません)。しかしお二人の写真は仲睦まじそうです。

結婚式のドレスの複製をはじめとした、数々のドレスも展示されていました。バレンシアガのサテンのジャンプスーツとか、ディオールのブルーのドレス、イヴ・サンローランのイブニングドレスなど、どれも全く古びていない、今見ても素敵なデザインです。キャサリン妃のチープシックも良いですが、後世展示することを考えたら、妃殿下の品格を知らしめるためにハイブランドを選びたいところ。体型が変わっていないのも素晴らしいです。

結婚後数年間は言葉や風習の違いに悩み、あまり表に出てこなくて、表情も暗かったそうですが、パリとモナコの関係改善や、モナコの近代化に尽力したり、アーティスト育成などに力を入れているうち、国民にも認められるようになってきました。

今回の展示ではじめて知ったのですが、それまでモナコは没落貴族のたまり場的な、古くてダサいイメージだったのですが、グレース妃のスター性と気品で、モナコ自体が格上げされたそうです。以降も、世界中の富裕層の憧れの地として、ポジションをキープしています。グレース・ケリーの功績は大きいです。

52歳で自動車事故で亡くなってしまいますが、展示は陰の部分にはフィーチャーせず、押し花作品など、美しい部分に光を当てていました。グレース・ケリーのモノクロの顔のイラストが浮き出た、2007年のケリー・バッグが、一見心霊写真のようでドキッとしました。実際は、雲の上から自分の美の遺伝子が受け継がれているのをご覧になって、心安らかに成仏されていると思いますが……。

日本モナコ友好10周年記念 グレース・ケリー展
期間:~2016926日(月)
時間:10:0020:00(最終日17:00閉場・入場は閉場の30分前まで)
場所:東京都中央区銀座3-6-1 松屋銀座8階イベントスクエア

http://www.gracekelly-exhibition.com

横浜会場(ランドマークホール)
2016年11月19日(土)~12月1日(木)

大阪会場(阪急うめだ本店)
2017年2月22日(水)~3月6日(月)

名古屋会場(ジェイアール名古屋タカシマヤ)
2017年4月予定

グレース・ケリー展の詳しい情報はこちら>>
グレース・ケリーから受け継いだ美貌が話題に。モナコのジャック王子、ピクニックへお出かけ>>

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辛酸なめ子

漫画家、コラムニスト。埼玉県出身、武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。アイドル観察からスピリチュアルまで幅広く取材し、執筆。新刊は『辛酸なめ子の世界恋愛文学全集』(祥伝社文庫)『タピオカミルクティーで死にかけた土曜日の午後 40代女子叫んでもいいですか 』(PHP研究所)『大人のコミュニケーション術 渡る世間は罠だらけ』(光文社新書)『妙齢美容修業』(講談社文庫)『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎文庫)。Twitterは@godblessnamekoです。

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