開幕してから平日でもかなり賑わっている特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」。国立科学博物館に地球上のあらゆる種類の宝石が集結している展示で、石のパワーが人々を引き寄せているのかもしれません。石好きとしては見逃せないもので、石の知識とパワーを吸収したいところです。
第1章は「原石の誕生」。地下の深いところで、長い歳月をかけて誕生した宝石について、誕生のプロセスを紹介するコーナーです。マグマが冷えて固まってできた火成岩から見つかる宝石は、ダイヤモンドやペリドットなど。原石が展示されていましたが、無骨なグレーの石にダイヤモンドやペリドットのきらめきが混じっているのが素敵です。
地下深く、100度の熱水が上昇した跡の熱水脈から見つかる宝石もあります。アメシストや水晶、シトリン、フローライト、バイライトなど。熱水の浄化パワーを感じさせる輝きを放っています。マグマが固まった特殊な火成岩、ペグマタイトから宝石が見つかることも。トパーズやトルマリン、アクアマリンなどがこの種類です。マグマ感がない、涼しげな石が多いのが不思議です。
既存の岩石が圧力を受けてできた変成岩から見つかる宝石は、ルビーやエメラルドなど。熱や圧力によって色鮮やかな成分ができるそうです。
他にも、生物由来のコーラルやシェル、化石由来のアンバーなど、宝石は様々なプロセスで生み出されます。熱水や圧力など、過酷な環境で生まれているので、人間も辛い経験をすればするだけ、内側に宝石が生まれていてほしいです……。
このコーナーの見どころは、巨大なアメシストドーム。2.5mというサイズ感で、もし買ったら数千万円はしそうです。アメシストにはヒーリングやストレスを癒す、インスピレーションを高める効果などがあるとされています(以下、石の効能については『一番くわしいパワーストーンの教科書』/ナツメ社を参考にしました)。ドーム前でしばらく佇んでいたら、穏やかな気持ちになってきました。
第2章は「原石から宝石へ」。宝石の魅力とパワーを最大限に引き出す「カット」の加工技術などを紹介しています。原石から、研磨やカットを経て見違えるように洗練された宝石たちが展示。
たとえばダイヤモンド。アンカットダイヤモンド、と呼ばれるカット前の石は、見た目は水晶と見分けがつかないです。ダイヤモンドの輝きは、特性を引き出すためにカットされることで生まれます。一市民としてはカットされたダイヤの削りくずがどうなるのか気になりますが……。
第3章ではメジャーな宝石をジャンルごとに展示。エメラルドの仲間はアクアマリン、モルガナイトなど、ベリリウムという成分を多く含む鉱物だそうです。ちなみにエメラルドのパワーは幸運、繁栄、愛の成就など。アクアマリンは不安解消、勇気と冷静さ、モルガナイトは慈悲の心、といったパワーが。仲間の石でもポテンシャルは違います。
アレキサンドライトやキャッツアイはクリソべリルという鉱物で、光源によって全く異なった色に見える不思議な宝石です。アレキサンドライトは「宝石の王様」と呼ばれ、太陽や蛍光灯の下では緑色、ろうそくや白熱灯の下では赤色に輝きます。以前、ロスチャイルド家の女性の来日コンサートに行ったらこの希少性の高い石をつけていたのを見た記憶があります。
さらに珍しい「あまり知られていない宝石」コーナーはマニア心を刺激します。ブルー系のデュモルティエライト、茶色っぽくて渋いシンハライト、深みがある色合いのアンダリュサイト、濃い緑のグランディディエライト、など。マニアックな石を推すのも楽しそうです。天然石業界人っぽい男性が「チャロアイトのヒーリング力はすごい」と話すのが聞こえてきました。
第2章、第3章の展示コーナーにある宝石たちは、透明度も輝きも素晴らしくてサイズも大きめで、クオリティが高いです。もしかしたら、ルースのままアクセサリーにならず、誰も身につけていないからかもしれません。
第4章「ジュエリーの技巧」は、セットされ仕立てられた宝石の美しさが引き立つ展示。そして第5章「宝石の極み」では、王侯貴族やセレブが身につけていた絢爛豪華なアクセサリーが展示されていました。
世界史に出てきそうな、王族に伝わる宝石も多いです。「イタリア王妃マリア・ジョゼ旧蔵ロイヤル・ルビー・リング」は巨大なルビーに圧倒されます。「ロシア大帝エカテリーナ2世よりアレクセイ・オルロフへ贈られたエカテリーナ大帝の肖像エメラルド・インタリオ」は、エメラルドの内側にふくよかなエカテリーナ2世の横顔が浮き上がっていて、コーディネイトが難しそうです。
ナポレオンの時代の名将、モルティエ元帥が娘カロリーヌの結婚に際して作らせた「リュミニー伯爵夫人旧蔵 ピンク・トパーズとアクアマリンのパリュール(セット)」は、淡いピンクとブルーの石が可憐でおしゃれでした。淡い色合いに、結婚しても娘の純潔性をまだ願っている父の親心が現れているようでした。
「ヴュルテンベルク王室旧蔵 ピンク・トパーズとダイヤモンドのグラン・パリュール」もゴージャスでプライスレスな輝きとサイズ感でした。ヴュルテンベルク王室、不勉強で知りませんでした。
「ウェリントン公爵のシャトレーヌ・ウォッチ」も、ダイヤモンドがちりばめられてゴージャス。当時イギリス国王並の人気を誇っていた公爵だそうで、検索したらこの宝石が似合いそうなハンサムなルックスでした。
他にも、「英国王ジョージ5世第1王女にしてハーウッド伯爵夫人メアリー旧蔵 ゴールドのネセセール(裁縫道具の飾り容器)」とか、「スペイン王妃マリア・クリスティナ旧蔵ダイヤモンドのコルサージュ・オーナメント」とか、現実離れした宝飾品の数々が陳列。「リュミニー侯爵夫人旧蔵 ピンク・トパーズとアクアマリンのパリュール」や、「サヴォイア=ジェノヴァ家 マリア・アデレイド公女旧蔵 ダイヤモンドの花と葉飾りのティアラ」など、次々と王侯貴族の名前が出てきます。どれだけヨーロッバの王侯貴族が栄華を誇っていたのか、想像を遥かに超えています。パリュールとかネセセールとか馴染みのない名称にも王侯貴族界の敷居の高さを感じました。映えという単語にはおさまらない高級感と輝き。権力や身分、財力をアピールするための勝負アイテムだったのでしょう。ただ王侯貴族の業を吸収したのか、どんよりとくすんだ宝石もあるような……。ダイヤモンドが引き立て役として、メインの宝石の周りでがんばって輝いている印象もありました。持ち主のエネルギーを吸収した宝石は妖しい光を放ちます。
代々の貴族の業を感じさせる宝石を見て疲れたら、またピュアな原石コーナーに戻って浄化されるのも良いかもしれません。石はいつでも悩める人間に寄り添って相談相手になってくれます。そんな宝石を買うために、仕事のモチベーションも高まる展示です。
「特別展 宝石 地球がうみだすキセキ」
期間:〜 6月19日(日)
時間:9:00~17:00 (入館は閉館30分前まで)
休:月曜日(祝日の場合は翌火曜日休館)※ただし5月2日、6月13日は開館
※開催日時などにつきましては、新型コロナウイルス感染症の状況により変更の可能性もあるので、公式HPなどでチェックしてください。
会場:国立科学博物館(東京・上野公園) 地球館地下1階 特別展示室
東京都台東区上野公園7−20
https://hoseki-ten.jp/