赤と黒の糸が紡ぐ物語。塩田千春のアートと最新モードが響きあう

森美術館で開催中の『塩田千春展:魂がふるえる』。 生と死と向き合う展示は、見る人を人生の旅へと誘う。 最新モードとアートのコラボレーション を、アーティスト自身へのインタビューとともにお届けする


空間を覆いつくすように張り巡らされた赤い糸、黒い糸。力強い生命力と人と人の絆、同時に果てない宇宙や避けられない死をも連想させる塩田千春のアート作品。デザイナーたちのクリエーションと出合うとき、森羅万象に通じるそのイマジネーションはさらに拡張してゆく。

画像: ≪不確かな旅≫(2016年/2019年) 塩田千春にとって赤い糸は、血管や血縁、縁を意味する。赤い糸は絡み合い、解け、また結びつく。舟は見えない先行きの象徴だ。不確かな旅の先にはさまざまな出会いが待っている ニット¥127,000、ニットパンツ¥148,000、ブーツ¥148,000(参考価格)、シルバーリング(左手薬指・参考色)¥38,000、エッフェル塔リング(左手中指・参考色)¥38,000 バレンシアガ ジャパン(バレンシアガ) TEL.0570(000)601

≪不確かな旅≫(2016年/2019年) 塩田千春にとって赤い糸は、血管や血縁、縁を意味する。赤い糸は絡み合い、解け、また結びつく。舟は見えない先行きの象徴だ。不確かな旅の先にはさまざまな出会いが待っている ニット¥127,000、ニットパンツ¥148,000、ブーツ¥148,000(参考価格)、シルバーリング(左手薬指・参考色)¥38,000、エッフェル塔リング(左手中指・参考色)¥38,000 バレンシアガ ジャパン(バレンシアガ)TEL.0570(000)601

――『魂がふるえる』というタイトルの意味は?

塩田千春(以下S)森美術館での展覧会が決まったときに、まず生きていてよかったと思いました。しかし翌日に、がんの再発を告げられ、手術を行い、抗がん剤治療が始まりました。病院ではすべてがシステマティックに進んでゆき、そこに“私”は存在せず、人間の不条理を感じました。普段から生と死の問題に向き合い作品を作ってきましたが、ここまで死に寄り添って制作したのは初めてです。自分の命に限りがあることを実感しながら展覧会の構想を練りました。自分がいなくなったあと、魂はどのくらい生きてゆけるのか、意識や感情はどこにゆくのか......そうしたことを考えていて、生まれたタイトルです。

―― 今回の展覧会は308番目と聞きました。

S 私の作品はインスタレーションなので、発表の場があって初めて作品を作ることができます。展覧会は生きがいです。制作していると次はああしようこうしようと考えが浮かぶので、止まってしまうことは考えられません。

―― 国内では初の大規模な回顧展となりますね。

S ここまで深く自分を追求したのは初めてです。塩田千春は、“塩田千春”になるために生まれてきたと思わせるような展示になっていると思います。(続きを読む)

画像: ≪静けさのなかで≫(2002年/2019年) 幼少期に、隣家が夜中に火事で燃えた記憶から生まれた作品。音の出ない燃えたピアノは、沈黙を象徴するとともに、不在の音を想像させる。「不在のなかの存在」は塩田が作品制作においてずっと追求してきたテーマだ ニットドレス¥380,000、ベルト¥132,000、パンプス¥112,000 ボッテガ・ヴェネタ ジャパン(ボッテガ・ヴェネタ) フリーダイヤル:0120-60-1966

≪静けさのなかで≫(2002年/2019年) 幼少期に、隣家が夜中に火事で燃えた記憶から生まれた作品。音の出ない燃えたピアノは、沈黙を象徴するとともに、不在の音を想像させる。「不在のなかの存在」は塩田が作品制作においてずっと追求してきたテーマだ
ニットドレス¥380,000、ベルト¥132,000、パンプス¥112,000 ボッテガ・ヴェネタ ジャパン(ボッテガ・ヴェネタ)フリーダイヤル:0120-60-1966

画像: ≪時空の反射≫(2018年) 衣服は人にとって第二の皮膚。鉄枠に囲まれた黒い糸の空間に浮かぶドレスは、着る人の不在を示唆する。そして空間を半分に仕切る鏡が、ドレスとともに不在を増幅させる ジャケット¥179,000、ブラウス¥38,000、パンツ¥39,000、シューズ¥65,000、レギンス¥28,000 コム デ ギャルソン TEL.03(3486)7611

≪時空の反射≫(2018年) 衣服は人にとって第二の皮膚。鉄枠に囲まれた黒い糸の空間に浮かぶドレスは、着る人の不在を示唆する。そして空間を半分に仕切る鏡が、ドレスとともに不在を増幅させる ジャケット¥179,000、ブラウス¥38,000、パンツ¥39,000、シューズ¥65,000、レギンス¥28,000 コム デ ギャルソンTEL.03(3486)7611

SOURCE:「Journey of Life」By T JAPAN New York Times Style Magazine:JAPAN BY JUN ISHIDA, PHOTOGRAPHS BY KENSHU SHINTSUBO, STYLED BY NAOKO SHIINA, HAIR BY KIYOKO ODO(kiki), MAKEUP BY UDA(mekashi project), MODEL BY KIKO ARAI(Donna) SEPTEMBER 30, 2019

>>現代アートと伝統の職人技。‟時計以上の何か”に触れる「オーデマ ピゲ」のエキシビション

>>あるアーティストが有色人種の女性たちの歴史から受け取った「記憶と遺産」

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