『【推しの子】』アイ、一夜限りの復活祭。横槍メンゴさんが特別に描き下ろし!

アイ、夢のパリ・ファッションウィークへ

SPURと『【推しの子】』のスペシャルコラボが再び実現! 今回は「もしもアイがセレブリティとしてファッションショーに招かれたら?」というストーリーのもと、横槍メンゴさんが特別に描き下ろし。アイが向かうのはヴァレンティノの2025年春夏のショー会場。さらに横槍さんやさまざまな表現の分野で活躍する作品ファンのインタビューから作品の魅力をディープに掘り下げる

アイ、夢のパリ・ファッションウィークへ

SPURと『【推しの子】』のスペシャルコラボが再び実現! 今回は「もしもアイがセレブリティとしてファッションショーに招かれたら?」というストーリーのもと、横槍メンゴさんが特別に描き下ろし。アイが向かうのはヴァレンティノの2025年春夏のショー会場。さらに横槍さんやさまざまな表現の分野で活躍する作品ファンのインタビューから作品の魅力をディープに掘り下げる

SPUR2月号 【推しの子】 アイ 横倉メンゴ描き下ろし
ドレス¥891,000・レースタイツ(参考商品)(ともにヴァレンティノ)・イヤリング¥319,000・ネックレス¥495,000・グローブ¥70,400・靴(参考商品)(すべてヴァレンティノ ガラヴァーニ)/ヴァレンティノ インフォメーションデスク

ショー会場での撮影にお得意のポーズで応じるアイ。ピンクを基調とした華やかなスタイリングで視線を集める。幻想的なラッフルのあしらい、ビジューが輝くボタンなど、アレッサンドロ・ミケーレならではの装飾的な世界観が彼女のきらめきと共鳴する。レースのタイツとグローブ、トゥのリボンなど小物までちゃめっ気たっぷりに、キュートなルックを着こなす。

SPUR2月号 【推しの子】 アイ 横倉メンゴ描き下ろし
ドレス¥753,500・ソックス(参考商品)(ともにヴァレンティノ)・イヤリング¥319,000・左耳につけたイヤリング¥110,000・ネックレス¥572,000・同 ¥189,200・同 (参考商品)・バッグ〈H12×W19×D6〉¥422,400・ターバン¥199,100・靴(参考商品)(すべてヴァレンティノ ガラヴァーニ)/ヴァレンティノ インフォメーションデスク

パフスリーブにプリーツなどシックな要素を盛り込んだブラックドレスを、シアーなドットの襟でレトロなムードに。パールネックレスの大ぶりな花が首もとに輝く。シルク素材のターバンとのミスマッチが、唯一無二のスタイリングを生み出した。"B小町のアイ"とはひと味違った趣のある装いが、彼女の新たな表情を引き出す。

アイプロフィール画像
アーティスト・俳優。アイ

芸能事務所「苺プロダクション」所属。アイドルグループ「B小町」のセンターを務める。メンバーカラーは赤。映像作品にも多数出演し、存在感を放っている。

横槍メンゴさんにインタビュー。『【推しの子】』と駆け抜けた4年半

2024年11月に『週刊ヤングジャンプ』で最終回を迎えた『【推しの子】』。作画担当の横槍メンゴさんが対峙した制作過程での苦しみや喜びとは。連載を通して追求した"絵で作品を表現すること"について語り尽くす

『【推しの子】』が持つ不思議な引力にのまれないよう必死だった

『【推しの子】』4巻 139ページより
『【推しの子】』4巻 139ページより
ルビー、有馬かな、MEMちょの3人で臨む新生「B小町」初ライブの1コマ

2020年春の連載スタートから約4年半。世界が固唾をのんで見守るなか、『【推しの子】』が第166話をもって完結! 赤坂アカさんとタッグを組み、作画を手がけた横槍メンゴさんが、SPURのためにスペシャルなイラストを描き下ろした。

「前回のジュエリーを身につけたルビー&アクアに続いて、今回は〈ヴァレンティノ〉の最新ルックを着こなすアイちゃんです! アイドル全盛期を経て少し年を重ねた彼女が、もしもファッションショーのゲストに呼ばれたら……と想像してSFでいうところの"イフの世界"を描いてみました」

「暗闇に光を照らす為に生まれてきた」という言葉の通り、アイドルのきらめきを全身にまとうアイ。『【推しの子】』もまた、何年後、何十年後、もしかしたら何百年後の未来にまで届くほどの光を放つ作品になった。

『【推しの子】』15巻 134ページより
『【推しの子】』15巻 134ページより
アクアを想い泣く有馬かな

「連載前の準備から終了まで、文字通り駆け抜けた5年間でした。たくさんの人に読んでもらえてうれしい、という気持ちがある半面、想像以上に幅広い範囲の読者に届いたことによるプレッシャーはすさまじかった! 自分で描いておいてこんなことを言うのもなんですが『【推しの子】』って不思議な引力のある作品だと思っていて、その磁場の強さに引きずり込まれないよう必死でした。アカ先生もきっと同じ思いだったんじゃないかな」

漫画もアニメも記録的な大ヒットを飛ばし、SNSのトレンドで『【推しの子】』や登場人物の名前を目にすることも多かった。

「アカ先生とは頻繁にやりとりしてアイデアも出し合いましたが、私は作画に徹することを当初から決めていました。だからアカ先生が何を出してきても、毎週届くネームがどんな内容であっても、最後まで信用して描き切ろうと考えていました。連載を通して絵に集中することができたのはありがたかったし、連載の終盤は月2〜3回と掲載ペースが少し緩やかになって、ネームにも作画にも時間をかけられたのがよかったです」

『【推しの子】』9巻 49ページより
『【推しの子】』9巻 49ページより
アクアに距離をおかれ、悲しむ有馬かなを気遣うMEMちょの名言!

転生から始まる物語の設定に加えて、主要キャラたちの"演技"によって、一人の人間のなかにいくつもの人格が往来する。特に第9章映画編の重層性と、漫画ならではの表現の凄みに驚かされる。

「映画編で特に難しかったのは、ルビーがアイを憑依させて、アイにしか見えないけどアイではない、という場面の絵作りですね。頭で考えたことを技術で具現化するだけでは追いつけないところがあったので、役者がキャラに入るようなイメージで描き出していきました。アクアがカミキヒカルを演じる場面なら、瞳の表現に変化をつけたりしつつ、あくまでアクアの解釈による"演技"を描くことを意識。描いていてつくづく思ったのは、第5章で2.5次元舞台編を描いていてよかった、ということ。これがいきなり映画編だったらパニックになってしまったんじゃないかな」

『【推しの子】』10巻 150ページより
『【推しの子】』10巻 150ページより
アイ殺しを企んだ、復讐すべき相手を見つけたアクアの瞳に暗い光が宿る

ルビーには前世のさりなの記憶と人格があり、アクアの中にはゴローがいる。人の意識と記憶と時間が幾層にも重なり、漫画でなければ実現不可能な表現が連打される。

「映画編のルビーとアクアの演技のターンは描くのがとても楽しくて、ずっと描いていたいくらいでした。この物語はアイちゃんとカミキくんから始まったけど、二人が幸せだった頃の描写って物語の終盤にいかないと出せないところでもあったので。やっとここまでたどり着いたんだ!という達成感もあって、私にとってはご褒美回。一方でシリアスで恐ろしい表情って、しんどさもあるけど絵を描くという意味では楽しいんです。表現においては自分の未熟さを感じることも多かったけど、今持っている力は出し切れました。物語の結末は決まっていたし、自分が表現力を磨かなければとても描き切れないというのはわかっていたので、細かな技術や画力うんぬんより、最後は表現力で勝負だ!と」

『【推しの子】』12巻 34ページより
『【推しの子】』12巻 34ページより
クアと五反田泰志監督が脚本を手がけた映画『15年の嘘』が始動。ルビーの姿にアイを幻視する監督

感受性の窓を開け放って表現する力を磨き上げた4年半

『【推しの子】』13巻 148ページより
『【推しの子】』13巻 148ページより
映画のため衣装合わせをしたルビーは、残酷なほどにアイにうり二つ

「これってもう人間力の話だと思うんです。人物の感情を描くのに、その感情を本当に知っている人が描いたと思わせないと意味がない。だけど、たとえば殺人鬼を描くとして、その心理をひたすら勉強したら描けるという話ではないし、人を失う悲しみの描写を人を失うことで高める必要はないんですよね。まったく関係ない、日常におけるささいな出来事でも、一つひとつを深く感じとることで育っていくものがあると思います。演技の話にも通じるかもしれませんが、『【推しの子】』を描いていくうえで感受性の幅を広げることが表現力の向上につながったと思います」

『【推しの子】』3巻 150ページより
『【推しの子】』3巻 150ページより
恋愛リアリティーショー終盤。独自のプロファイリングによりアイのような女の子を演じる黒川あかねの演技力にアクアも驚愕
『【推しの子】』11巻 59ページより
『【推しの子】』11巻 59ページより
週刊誌に隠し撮りされ、涙を流した直後に強がる有馬かな

ただし、感受性の窓を全開にすると、悲しみや恐ろしさというネガティブなものと正面から向き合うことになる。

「そう! だからめっちゃきつい! 一人で描いているときはあくまで自分のネームだから、出てくる感情もある程度予測がつくんですが、『【推しの子】』のネームに毎週のように潜り込み、打ち返していくというのはやっぱり大変でした。だから、この4年半開きっぱなしにしていた窓を閉じていく練習をしなければ、閉じた状態で自分をとことんいたわらなければと思っていて。しばらくの間はゆっくりして、またいい漫画を描くための準備期間に充てたいです」

『【推しの子】』3巻 84ページより
『【推しの子】』3巻 84ページより
恋愛リアリティーショーで炎上した黒川あかね
『【推しの子】』3巻 76ページより
『【推しの子】』3巻 76ページより
SNSのタイムラインを埋める誹謗中傷の言葉など、社会の姿も活写した

とはいえ、発売したばかりの最終巻に続き、ドラマ&映画公開、小説、アニメⅢ期、2.5次元舞台などの展開が目白押しだ。

「原作はここで一段落ですが、いろいろな展開を楽しんでほしいし、これからも長く皆さんの心に居続けられたらうれしいです!」

横槍メンゴプロフィール画像
横槍メンゴ

よこやり めんご●2009年デビュー。TVアニメ、実写ドラマ化された『クズの本懐』、岡本倫が原作を手がける『君は淫らな僕の女王』、『レトルトパウチ!』、『めがはーと』、短編集『一生好きってゆったじゃん』など作品多数。SPURには2023年8月号に続く登場。

『 【推しの子】 』

『 【推しの子】 』

アイドルグループ「B小町」のセンター、アイを推すことを生き甲斐にする少女さりなと、研修医のゴロー。アイの双子の子どもとして二人が転生するところから激動の物語がスタートする。
赤坂アカ×横槍メンゴ著
集英社/全16巻・693円〜