パリでの運命的な出会いからカンヌ最優秀女優賞に! 岡本多緒さんにインタビュー

岡本多緒

ジャケット¥269,500 ・シャツ(参考商品)/ステラ マッカートニー ジャパン(ステラ マッカートニー)

公演のためパリを訪れた舞台演出家・真理が、介護施設で働くマリー=ルーと出会い、一晩語り明かす。観客は彼女たちとともに時を過ごすうち、自分を取り巻く社会への見方が変わっていく。そんな思考と感情の変化を鮮やかに体験できるのが、濱口竜介監督の新作『急に具合が悪くなる』だ。第79回カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞した二人のうち、真理を演じたのが岡本多緒さん。オーディションを受ける前から、この役に強いつながりを感じていた。その理由は?

「彼女が普段考えていること、思考のパターンですね。使う言葉も自然に響いてきて。私は普段、環境問題について発信しているんですが、真理が『社会の構造を考えてみよう』と資本主義の話を始めて、環境から搾取することについて話すシーンがある。こんな作品には出合ったことがなかったので、脚本を読んだときに興奮したのを覚えています」

濱口監督作品では珍しくない、女性同士の会話劇。ただあれほどインテレクチュアルな話が人物像を示し、人と人が短時間で深くわかり合う場面となるのは、確かにあまり見たことがない。往復書簡集である同名の原作から設定は飛躍しているが、その本質は共通しているのだ。だからこそ非常に重要となるのが、マリー=ルーを演じるヴィルジニー・エフィラとの相性、ケミストリーだった。

「最初の顔合わせはZoomミーティングだったんです。ギリギリにヴィルジニーの出演が決まったんですが、そのときからもう日本語などの準備をされていて、勤勉さに圧倒されました。実際に会ってからは親しみやすいオーラ、包み込んでくれる感じがあって。私自身感情の部分でも支えてもらったし、確実にケミストリーが存在していた。そこは二人とも自信がありました。ロマンスみたいな言葉は一切使わなくても、私もヴィルジニーも、濱口監督もそういうものを私たちに感じていた気がします。恋愛じゃない、でも友情だけでもない。でも誰も口に出さなくて、そこがセクシーでしたね」

トップモデルとして活躍した多緒さんにとって、パリはファッションウィークで行き慣れた街。でも、印象は180度変わったそう。

「ファッションという特殊な世界で触れていたフランスの印象と、今作で体験したフランスはまったく違っていて。正直、モデル時代にはつらい経験もしたし、シビアな環境だったんです。でも今回の現場はみんなとにかく働き者で、チームワークも素晴らしくて」

『急に具合が悪くなる』は本も映画も、人と人の関係だけでなく、社会問題や介護、がんといったシビアな題材を取り上げる。ただそれについて話し続けることで、未来や世界に対する信頼を取り戻すところもある。「闘う価値がある」と感じさせてくれるのだ。

「社会問題に敏感に生きていると、『どうしようもなくない? この問題』みたいに思うことが頻繁にあるんです。相手があまりに大きくて、途方に暮れてしまう。挫折してしまう人も見てきたし、私自身、燃え尽き症候群になりそうなことがあったんですけど、この映画には『やってみてダメかもしれないけど、やってみないとダメかどうかわからない』というメッセージがありますよね。それがどういう人たちにどれだけ響いて、どういう変化が起きるかは測り知れないですけど……自分にとっても期待したいところです」

岡本多緒プロフィール画像
俳優岡本多緒

1985年生まれ。14歳でモデルデビュー、TAO名義でトップモデルに。映画『ウルヴァリン: SAMURAI』(’13)で俳優デビュー。拠点を日本に移し岡本多緒として活動を始め、映画制作もスタート。短編映画『サン・アンド・ムーン』(’23)のほか、最新作『マイ・スウィート・パーラ』が国内外の映画祭で上映中。

INFORMATION

『急に具合が悪くなる』

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原作は文化人類学者と哲学者の往復書簡集。日本人女性とフランス人女性の出会いを描く。岡本多緒演じる真理はパリで哲学を学んだステージⅣのがん患者。社会や介護、死について交わされる刺激的な会話が濱口竜介監督ならでは。(公開中)