キアヌ・リーブス #18

©LFI/Photoshot/amanaimages
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自他共に認めるシネフィル(映画熱愛者)のブラッド・ピットやマット・デイモンなどに比べると、キアヌ・リーブスは物凄く映画に詳しいというイメージはない。『JM('95)で共演しているビートたけしのことも「実はあまり良く知らなかったんだ」と正直だし。ビートたけしこと北野武監督が“世界のキタノ”として有名なのは、アメリカよりヨーロッパで熱狂的に受け入れられているからなのだ。
「でも、それ聞いて合点がいったよ。日本の有名なコメディアンということは知らされていたけど、人間を見る目が尋常じゃないような気がしていたから。彼の目からは、普通と狂気が見てとれる。きっと凄い映画を撮るんだろうね。早速見てみるよ!」
『アウトレージ』の番外編にキアヌに出てもらったら迫力がありそう。

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キアヌを世界的スターにした作品は『スピード』('94)に『マトリックス』('99)というのが定説。が、ここに待ったをかけるのが『ハートブルー』('91)のキャスリン・ビクロー監督だ。
「若い俳優を見る目というか、きれいな男の子をより輝かせることには自信があるのよ(笑)」と言う通り、この映画の中のキアヌは、サーフィンやスカイダイビングのシーンも含めて、ひたすら美しく撮られていた。撮影中、日本人記者数名がキアヌを囲むインタビューがあったが、後日、日本に帰ってテープ起こしをしてガク然。「きれい〜」「すっごい」とバカみたいな自分の声が何度も入っていたのだ。
以来、キアヌがけっこうバッチい格好を好むのは、本来の美貌隠しだと私は睨んでいる。

およそシェイクスピア作品などとは無縁のようなキアヌだが、映画版『から騒ぎ』('93)にも出演しているし、ある日突然、故郷カナダのウィニペグで『ハムレット』の舞台に立って、日本のファンも観劇につめかけたほど。後日インタビューで、「『ハムレット』の中で一番心に残った台詞は?」と質問したら、やおら立ち上がって、数分間ほど実演したくらいだ。
「実は『プライベート・アイダホ』('91)で親友になったリバー・フェニックスとシェイクスピアをやりたいね、と話していたんだ。シェイクスピアの時代みたいに女性の役も自分たちで演ってさ(笑)」
そのリバーが亡くなった時のキアヌのコメントが痛切だった。「僕のジュリエットはどこに行ってしまったんだ!?」

時々『47RONIN('13)のような珍品(?)に出てしまうのもキアヌの憎めないところだが、50代になってめぐり会ったのが伝説の元殺し屋に扮する『ジョン・ウィッグ』('14)で、早くも『チャプター2が公開される。そりゃあ年齢相応に外見にも変化は出て来たが、ガン・ファイトとカンフー・アクションのキレは相変わらずで、既に『チャプター3』の製作が決まっている人気ぶり。闘う相手もニューヨークのイタリアン・マフィアにロシアン・マフィアと、いくらでもシリーズを続けていけそうな様子だ。「(ベルナルド・)ベルトルッチやガス・ヴァン・サントみたいなアート系の映画も、ド派手なアクションが売りの映画も、両方出られるのが理想」と言っていたキアヌ。予定通りかも。

ジャーナリスト佐藤友紀プロフィール画像
ジャーナリスト佐藤友紀

映画や舞台、ダンスに造詣が深く、独自の視点で鋭く切り込むインタビューに定評が。ジョニー・デップから指名されることも多々。

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