「一生に一度は手にしたい」と、なぜ私たちは焦がれるのか。世代も職業も異なるそれぞれが語る、“シャネルのバッグ”が持つ引力。

【シャネルのバッグ】が持つ引力。6人が語るその魅力

 「一生に一度は手にしたい」と、なぜ私たちは焦がれるのか。世代も職業も異なるそれぞれが語る、“シャネルのバッグ”が持つ引力。

INDEX

「自由な遊び心が、いつまでも心をつかむ」/桐野夏生さん

ミントグリーンのソフトレザーに、エナメルが艶めく赤い花が咲くシャネルのバッグ

バッグ〈H15.5×W25.5×D6.5〉¥2,675,000(予定価格)/シャネル

バッグに目がないと語り、クローゼットには名だたるブランドのものが並ぶ。中でもシャネルの所有率は高い。そんな桐野さんの“ファーストシャネル”は30代前半の頃に購入したキルティング バッグだった。

「正式な場所で持てる“勝負バッグ”が欲しいと購入したのですが、当時の私はシャネルのバッグに対して定番的な存在感から保守的なイメージを持っていました」。

それがブティックに足を運ぶようになるうち、印象は一変する。

「こんなに自由で、遊び心に満ちたブランドなんだと、それまでの認識がガラリと変わりました。特に30年ほど前にロサンゼルスで買った鮮やかなグリーンのバッグはずっとお気に入りです。最近はどんなブランドもバッグは定番的なものばかりになってきましたが、シャネルにはそれだけでなく“ちょっと外れたもの”がある。そこに惹かれます」。

桐野さんは、心つかまれるものを見つけたときの衝動を「親を殺してでも欲しい」と表現する。

「人生には“あぁ出合ってしまったな”というときがある。物が入らないとか、洋服に合わせづらいとか、そんなことよりも欲望が勝るんですよね。今のシャネルはすごく魅力的なので、そんな瞬間がまた訪れるかもしれません」

ミントグリーンのソフトレザーに、エナメルが艶めく赤い花が咲く。おなじみのチェーンストラップに絡むのも、本体と同じミントグリーンのレザー。センターから両サイドにかけて少し斜めになったフラップを開くと、内側からはボルドーカラーが現れる。グリーンとボルドーの組み合わせは、今季多く登場する配色。

桐野夏生さんプロフィール画像
作家桐野夏生さん

1951年生まれ。’99年『柔らかな頰』で直木賞、『燕は戻ってこない』で2023年の毎日芸術賞と吉川英治文学賞を受賞。’21年から日本ペンクラブ会長を務める。最新作は『眠れぬおまえに遠くの夜を』(文藝春秋)。

「使い手が“DIY”をする余地がある」/富永京子さん

シャネルのブラウンのバッグ

バッグ〈H22×W34.5×D11〉¥1,514,700(予定価格)/シャネル

昨日買ったばかりだというシャネルのデニムのバッグを手に、待ち合わせ場所に現れた富永さん。そこにはカセットテープをかたどったシャネルのブローチが飾られている。

使い心地を尋ねてみると「まだ使いづらいけれど、仲よくなる過程を楽しめるところもシャネルのバッグの魅力かもしれません。使っていくうちに面白くなっていくんじゃないかなと思っています」。

その「面白さ」とは、富永さんが研究テーマに掲げる「DIY」とも通じているようで「たとえばデニム地だからブローチをつけてみよう、それで穴が開くけど、でもそのぶん味が出るかもしれない、と考えさせてくれる。主体的に関わってみたいと思わせるアイテムが、とりわけマチュー・ブレイジーになってからのシャネルには増えた気がします」。

ハイブランドの小物にもかかわらず、工夫して使う余地がある。消費者側にある種の自由を与えてくれるところが、シャネルのバッグの最大の魅力だという、社会学者らしい見立てだ。

「高級品であればあるほど買っておけばいい、持っておけばいい、と思いがちですが、それでは消費者は甘えてしまうし、ものを考えなくなる。シャネルのバッグには使い手を育てるような側面もあると思います」

一見シンプルなフラップバッグながら、トラペーズシェイプがモダンなムードを醸す。A4の書類が収納可能なサイズ、コンパートメントやジップポケット、肩がけしやすいダブルストラップ。働く女性の日常を支えてくれる実用性と、オブジェクトとしての美しさを兼ね備える。深いブラウンが、汎用性の高さも約束する。

富永京子さんプロフィール画像
社会学者富永京子さん

1986年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。立命館大学産業社会学部准教授。専門は社会運動論、都市計画研究など。著書に『なぜ社会は変わるのか はじめての社会運動論』(講談社現代新書)など。

「受け継いでいける、そう確信が持てる」/中澤咲希さん

シャネルのグリーンのバッグ

バッグ〈H12×W20.5×D6〉¥1,029,600(予定価格)/シャネル

スタイリストデビュー5年目、そして30歳になる今年、シャネルのバッグを手に入れた。

「“マチュー・ブレイジーのシャネルが欲しい”と思っていたんです。好きなデザイナーはほかにもいますが、就任に合わせて何か手に入れたいと思ったのは初めての経験。歴史あるメゾンが彼の手によってモダンに生まれ変わった、ということが特別だったんです。そしてたまたま立ち寄ったお店でチェックしていたデザインに出合ってしまって。これはもう買うしかない、と思いました」。

それまでは自分にはシャネルはまだ早いという思いや、ブランドのバッグを持つことに少し気恥ずかしさもあったけれど、そのバッグにはそんな気持ちを凌駕する魅力があったという。

「一見シンプルだけどストラップの長さやシルエットがとても新しくて。でも、もしまったく同じデザインで別のブランドのものが世の中にあっても心は動かなくて、やっぱりシャネル特有の“魔法”があると思います。長く使えて、受け継いでいける、その確信があるから投資できたんです」。

古着やラフな装いにも品格を与えてくれる頼もしさはもちろん、ただ持つだけで気分が上がる愛すべき存在。「今でもごはん屋さんでぽん、と置いたふとした瞬間にもあー可愛い、やっぱり可愛いって(笑)。そんなふうにニヤニヤしながら愛でています」

フレッシュなグリーンに染まったカーフスエードが印象的な小さめのハンドバッグ。緩やかなトラペーズシェイプに、シンメトリーなダブルハンドルがあしらわれている。クラスプの左側に施されたつまみをスライドするとフラップが開く仕掛けにも心にくい遊びが。ストラップは長さを調節できるから、その日の気分や装いに合わせて変えてみてもいい。

中澤咲希さんプロフィール画像
スタイリスト中澤咲希さん

1996年生まれ。椎名直子さんに師事ののち、2021年に独立。現在はファッション誌や俳優のスタイリングも手がける。「ファッション命」でここまで走ってきたが、違うジャンルの趣味を持ちたいと思う今日この頃。

「物語がある、だから惹かれる」/首藤 凜さん

シャネルのバッグ

バッグ〈H16×W25×D6.5〉¥2,913,900・靴¥253,000(ともに予定価格)/シャネル

シャネルと是枝裕和監督が手がけるメンターシップ プログラム「CHANEL AND CINEMA TOKYO LIGHTS」の第1回受賞監督の一人である首藤さん。7月に行われたパリの上映会ではシャネルのバッグを持って登壇し、滞在中も持ち歩いていた。それまでは自伝映画などからメゾンについての知識は得ていたが、実際に触れたのはこれが初めてのこと。

「滞在中一緒だった田中さくら監督と古川葵監督と“このバッグが似合う人でいよう” “このバッグが買えるように頑張ろう”と話していて、思想にまで影響を与える力があるなと思いました。マドモアゼルが実際に暮らしていたアパルトマンも拝見したのですが、そこにあるものが今もデザイナーのインスピレーション源になっているということに驚きました。創業者が生み出したものを少しずつ継承していく、能や狂言のような伝統芸能にも通じる世界ですよね。そして何より一人の女性が愛したものや情熱を傾けたものからクリエーションが生まれたのだという物語を受け取れた。これまで“高級品”という記号として捉えていたものへの解像度が上がり、大切に持ちたいものへと変わっていく感覚がありました。今回の取り組みで得たものを、自分の創作にも生かしていけたらいいなと思っています」

キルティングステッチ、チェーンストラップ、「マドモアゼル」クラスプにダブルC。メゾンのアイコンをたっぷり詰め込んだバッグは、ダブルフラップがアイキャッチー! 上のフラップは飾りで、下のフラップを開くと、二つのポケットを備えたボルドーカラーの内装が。ぷっくりとしたフォルムの存在感がスタイリングのカギになる。

首藤 凜さんプロフィール画像
映画監督・脚本家首藤 凜さん

1995年、東京都生まれ。2021年『ひらいて』でドイツの映画祭ニッポン・コネクションにてニッポン・ヴィジョンズ審査員賞を受賞。「CHANEL AND CINEMA TOKYO LIGHTS」で『親切がやって来る』を発表。

「ほかにはない“高揚感”をくれるもの」/祐真朋樹さん

シャネルのベージュのバッグ

バッグ〈H16×W23×D6〉¥1,107,700(予定価格)/シャネル

シャネルとの出合いは17歳。5歳上の兄に連れられてナイトアウトしたときのこと。「兄のガールフレンドとその友達が数名いて、みんなでゲームをやっていたんです。女性たちは当時流行っていたDCブランドを着ていたんですが、パッとソファのほうを見るとシャネルの黒いバッグがずらりと置かれていました」。

幼い頃から洋服が大好きだった祐真少年は「この3年間で一生分遊ぼう(笑)」と思っていたほど、毎日ファッションのことばかり考えている高校生だったという。「だから服のことはそれなりに知っていたんだけど、シャネルのバッグはそのとき初めて見て。みんな違うスタイルなのにそれぞれシャネルのバッグが似合っていて、物としてのパワーを感じた。僕にとって初めての“シャネルショック”でした」。

2000年前後の10年間はウィメンズのパリコレクションにも通っていたが、シャネルのショーではほかにはない特別な高揚感を覚えたという。

「メンズを中心として活動しているのでウィメンズにはどうしても“距離”を感じていたけど、それを忘れるほど圧倒的だった。何よりショーを歩いているモデルがみんな幸せそうだったんです。“シャネルのランウェイを歩くこと” “シャネルを持つこと”、それでこんなにも多くの女性をハッピーにする。やっぱり特別なブランドですね」

淡いベージュと、シボ感のあるグレインドカーフレザーの組み合わせがエレガント。フラップの丸みに合わせて両サイドのトップはカービーなフォルムを描く。チェーンストラップを留めるダブルCのクラスプが左右対称にあしらわれていて、ガブリエル・シャネルが愛したシンメトリックなスタイルを想起させる。

祐真朋樹さんプロフィール画像
スタイリスト・ファッションディレクター祐真朋樹さん

1965年、京都府生まれ。男性誌のエディターからスタイリストへ転身。雑誌のほか、広告、衣装スタイリングなどを手がける。著書に『祐真朋樹のSHOP-A-HOLIC MEMORIES』(ソウ・スウィート・パブリッシング)ほか。

「新しいシャネルには、日常を感じる」/栗山愛以さん

シャネルの赤いバッグ

バッグ〈H16×W26×D2.5〉¥1,178,100(予定価格)/シャネル

年に2回、パリへ足を運びウィメンズコレクションの取材を続ける栗山愛以さんは、マチュー・ブレイジーのデビューの瞬間も目撃している。

「ファーストルックがマニッシュなジャケットとパンツだったことは衝撃でした。モデルのキャスティングや掲げる人物像も変わり、“新しいシャネル”の幕開けを感じました」。

これまでのエレガントでファンタジックな世界観から、より“日常”に引き寄せられた印象を持ち、そこに心惹かれた。「マチュー・ブレイジーが就任してから、パソコンが入るサイズとか、レザーが柔らかくて使いやすそうなバッグも登場しましたよね。特別なときだけじゃなく、日常的に使えるもの。そういった考え方に基づいたクリエーションに共感を覚えます」。

創業者のガブリエル・シャネルは、華やかに着飾った上流階級の人々の中で、ボーイフレンドの服を借りて着たり、ジャージー素材を積極的に用いたりする人だった。彼のスタンスにはそれに共通するものがある。

「日々の中で持ちたいと思えるデザインであると同時に、よく見ると細部に至るまで工夫がなされていて発見がある。さらっと流して作っているものがひとつもないんですよね。簡単に手に入れられるものではないですが、やっぱり引力があるものだと思います」

カーフレザーに施したクロコ風型押しや、鮮やかな赤がインパクトたっぷり。かちっとしたレザーのトップハンドルに対し、揺れ動くチェーンストラップがアクセントになる。内側はボルドーカラーで、カードポケットが装備されている。軽やかなハンドバッグは、ふらりお散歩にも、パーティのお供にも。

栗山愛以さんプロフィール画像
エディター・ライター栗山愛以さん

1976年、長崎県生まれ。コム デ ギャルソンで広報を務めたのち、ファッションエディター、ライターとして独立。2014年からファッションウィークの取材を続ける。エッジのきいたセルフスタイリングにも定評あり。

生活に寄り添うホーボーシルエット

シャネルのホーボーバッグ

バッグ〈H28×W41.5×D8〉¥1,204,500(予定価格)/シャネル

2026年秋冬 コレクションのランウェイでも素材や色違いでいくつものバリエーションが登場したホーボーバッグ。こちらはカーフスエードにサンドベージュをのせたもの。半円形の金具とダブルCのクラスプでストラップを留めるサイドのデザインは、ほかのタイプのバッグでも多く用いられている。大きく開くジップクロージャーに大容量が頼もしい。

装いを引き締める深紅の魔法

シャネルのクラッチバッグ

バッグ〈H13×W23×D4〉¥1,120,900(予定価格)/シャネル

艶のあるラムスキンを彩る明るい赤に目を奪われる。マグネットフラップを開くと、メタルフレームで縁取られたコンパートメントがお目見えする。左上に飛び出しているダブルCのクラスプで開閉できる仕組みだ。赤とゴールドのビビッドな組み合わせ、オブジェのような佇まいも目を引くクラッチバッグは、シンプルなドレススタイルの仕上げに。

オーロラ色が生む唯一無二の個性

オーロラカラーのシャネルのバッグ

チェーン クラッチ〈H11×W23×D12.5〉¥1,024,100(予定価格)/シャネル

クロコ風の型押し、パール調に光るオーロラカラー、かっちりとしたボックスシルエット。華やかなディテールがレディライクなムードを運んでくる。ワンハンドルのクラシカルなバッグに遊び心を加えるのは、トップハンドルや本体に採用された丸みを帯びたフォルム。“おしゃれを楽しむため”の華麗なアティチュードに惹かれて。

ミニマルかつモダンなブラック

シャネルのホーボーバッグ

バッグ〈H24.5×W35.5×D7.5〉¥1,107,700(予定価格)/シャネル

上と同じホーボーバッグは、黒のラムスキンならほんのりストイックなムードに変わる。キルティングステッチやチェーンストラップ、ダブルCなど、アイコニックなエレメントをキープしながらも、ジップクロージャーでフラップレスの構造が、これまでにはなかったモダンで軽快なムードに。容量もあり、通勤など幅広いシーンに対応。

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