ジーンズをデザインした浜井弘治さんとは長年のつき合い。好きだという思いをショップカードにしたためて縁ができ、結婚式の衣装を作ってもらったことも。服は捨てない主義で、息子が一時期ハマっていたホスト御用達ブランドのフーディも自身のワードローブに。
1 ドレスと首に巻いたスカーフはオイリリー。フランスの雑貨ブランド、ピローヌのやかん型のバッグを持って
人としての魅力が装いを超えるのか、どんなに奇抜な格好をしていても声をかけられてしまう。
「ファッションはこう思われたい、という気持ちの表れで、自分を守ってくれるもの。若いときは人になめられたくなくて怖い格好をしようとしていましたね。金髪にして、レザーの上下にサングラス・網タイツ・ハイヒールとか。それでもおばあちゃんに道を聞かれちゃうんですよね。勧誘やナンパも多くて、着物姿のときでさえもお茶に行きませんか、とか誘われる(笑)」
2 浜井弘治さんが内田さんをイメージして作ってくれたという一点物。和紙を使ったデニムにたくさんのステッチが施されている。ベルトは取材でSHIBUYA109に行ったときに購入
3 息子が着なくなったトルネードマートのフーディはハイネックがお気に入り
4 D&Gの革ジャンはここぞ、というときに羽織っている
5 子どもたちがくれたピアス。大好きなエイリアンのモチーフも
2015年に大腸ガンが見つかり、翌年手術をして人工肛門になった。もともと体にフィットする服が好きだったが、おなかまわりが落ち着かないため、ゆったりしたシルエットを選ぶように。短い丈のトップスも避けている。今は子育て中に知って惚れ込んだオランダの子ども服ブランド、オイリリーがお気に入りで、学生のときから好きだった洋裁も楽しんでいる。
「ファストファッションも買いますが、絶対に捨てません。着なくなったトップスは、スカートを足してワンピースにリメイクしたり。最近はつなぎやサルエルパンツを作りました。20年以上前に舞台衣装とジーンズにひと目惚れしてからつき合いのあるデザイナーの浜井弘治さんは私のことを“作り仲間”と思ってくれていて、何か一緒にやりましょう、と言われているんです」
さんざんファッションを楽しんできたからこその境地。歳を重ねたこともあり、肌の露出は控え、迷ったときは娘たちに「61歳で着てもいいと思う?」と意見を聞いている。でも、最近大好きな女優、ヘレナ・ボナム=カーターのインタビューを読んで、初心を思い出している。
「“ファッションは自分の表現です”と言っていて、本当にそうだよな、と共感しました。改めてちゃんと考えるようにしようと思っているんです」
内田春菊 SHUNGICU UCHIDA(Comic artist, Novelist, Actress, Singer)
1959年長崎県生まれ。地元でも派手なファッションで 評判だった。上京し、’84年に漫画家デビュー。’93年に は初小説『ファザーファッカー(』文春文庫)を発表す る。2018年『がんまんが〜私たちは大病している〜(』ぶ んか社)で人工肛門になった経緯を描いた。