おめでとう!2018年LVMH賞グランプリは日本のダブレットに

1300人あまりが応募したと言う、第5LVMH。6月6日、パリのルイヴィトン財団には、LVMHグループ傘下メゾンのアーティスティック・ディレクターたちから成る審査員団が結集し、授賞式が開かれました。賞を授与したのは、二人のスペシャル・ゲストたち。その一人、ジェイデン・スミスが読み上げた特別賞は、ロック・ファンによるロック(Rokh)に贈られました。評価されたのは完璧なテイラリング基づいた、躍動感があって幾通りもの着こなしができるデザイン。次に登場したのは、なんとエマ・ストーンです。チャーミングなつたないフランス語で挨拶を述べた後、彼女の口から漏れた名前は、ダブレット!デザイナーの井野将之(いのまさゆき)氏は「信じられない」といった表情で壇上に登ると、彼女から金色に輝く星型のトロフィーを受け取りました。彼が今後享受するのは30万ユーロの賞金と、1年間のビジネス指導。「英語は苦手なので日本語で」と前置きしつつ述べた感謝の言葉に、取材陣からは大きな拍手が。

MIHARAYASUHIROで靴と小物部門のヘッド・デザイナーを務めていた井野氏が独立してダブレットを立ち上げたのは、2012年のこと。メンズウエアとしてスタートしましたが、フーディ、スウェット、トラックパンツ、Tシャツなどの数々は実際にはユニセックスで、ルックブックやランウェイでも女性モデルを起用しています。ブランド・コンセプトは彼曰く、“ユーモアのセンス、着心地、そして奇妙奇天烈なこと”。

「知名度が上がればいいな」くらいの気持ちで応募したと言う井野氏に、勝因は何だったと思うか、とたずねると「たまたま!」と笑いつつ「真面目なふざけ具合?日本らしい軽さかな」。そして賞金の使い途は?「まだ現実感がないからわからないけど……英会話習った方がいいって言われてて」と、またもや面白い返答。とは言え、「今後も変わらずマイペースで確実に服作りを続けたい」と地に足が着いた一面も見せてくれました。

また授賞式直前のプレゼンテーションでは、マーク・ジェイコブズに会えたことが嬉しかったそう。「僕の服を手に取って、楽しんでくれていたみたい」と、井野氏。ちなみに今後のパリでの展開はと言うと...。今他にも引き合いがあるものの、最初に買ってくれたコレットが閉店したからと言って、すぐには他に飛びつかないでもう少し待つ、と井野氏は意外と義理堅いようです。最後にフランスのジャーナリストから、自分のコレクションに合う歌を一曲選ぶとしたら?と言うちょっと変わった質問が。随分考えた後、沈黙を破って井野氏が挙げたのは「ボブ・マーリーのEverything’s gonna be alright」。確かに井野氏のユーモアがあれば、“なんでもうまくいく”はずです。

text: Minako Norimatsu

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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