モード関係者に人気のパリのホットスポット、カフェ・ラペルーズ

ディオール・メゾンとベビー・ディオールのアーティスティック・ディレクター、コーデリア・ド・カステラーヌ。彼女がインテリアを手がけたレストラン、カフェ・ラペルーズは、晴れて海外旅行が解禁になったらパリでまず駆けつけたい、ホットスポットです。コンコルド広場に面し、4年の改装を経てこの夏にミュゼとしてオープンした旧海軍省、オテル・ド・ラ・マリーンの中庭がロケーション。つまり、18世紀に王室の調度品保管所として建造され、その後は海軍参謀本部が置かれていた、歴史のある建物の一角です。

一方今でもパリ6区に軒を構えるラペルーズ本店は、同じく18世紀に王室御用達のレモネード業者として出発し、その後パリの文化や政治の要人を集めて社交界の中心となった、伝説的なレストラン。創業者のジャン=フランソワ・ド・ラペルーズは当時王室海軍の士官で航海士でもありました。

そしてこのカフェ・ラペルーズは、航海、冒険、文化、社交といった本店のヘリテージを再解釈し、今後ニューヨークやロンドンなど他都市にも進出が予定されている、新しいコンセプトの第一号店なのです。

さて前置きが長くなりましたが、こんな流れからコーデリアが構想したのは、ネオクラシック、自然のモチーフといった18世紀フランスの造形美術のコードを基本としつつ、遊び感に溢れたエクレクティックな世界です。彼女はそこに、海や船の旅、異国情緒、さらにアール・デコやマドレーヌ・カスタン(全盛期前半の著名なインテリア・デザイナー)など、幾つかの異なるタッチを加えました。

オテル・ド・ラ・マリーンの中庭から入ると、まずテラスには南国風の植物が整列し、パリの中心地からいきなり別世界へ滑り込んだかのような印象を与えます。客席もあるこのアーケードを通り抜け、中に入ると最初の部屋、“オリエント・サロン”はミステリアスな雰囲気。アカシアのウッドワーク、レザーの椅子などは、まさに東方を思わせます。中央には、ファンタジー溢れるバー・コーナー。アーティスト、トマ・ブーグ(Thomas Boog)による貝細工では、“海辺”がアーティスティックに表現されました。バーの奥に広がるのは、高い天井の“航海士のサロン”。ブルーの濃淡で展開し、甲板をイメージして一段高くなったコーナーを含むここは、まるでアーティストの作品を配した豪華客船のダイニング・ルームの様です。ブルーのトーンで風景を描いた壁画、アトリエ・ジャン・ロジェー( Atelier jean Roger)によるセラミックの壁ランプ、貝殻風の椅子、テントを思わせるディテール……。そしてコンコルド広場側のアーケードには、籐の椅子と大理石のテーブルを配した、パリらしいクラシックなテラスが広がります。こんな風にカフェ・ラペルーズは、まるで未知の国へ船で旅しているかの様な、胸高鳴らせる空間なのです。

肝心のメニューは、クロック・ムッシューからロブスター・ロールまで、フランスの伝統的ディッシュをモダンに仕上げてストリート・フードも取り入れた、トレンディ&ヘルシー。マストは細長く切ったカリカリトーストですくって食べる、トルフュやキャビア入りの半熟玉子です。スイーツでは、18世紀の風習にちなんでパン・ア・ラ・デュシェスと呼ばれるエクレアや、マドレーヌなど、定番が中心。

折しもコーデリアは、パリを北上した田舎にあるド・カステラーヌ家代々のカントリーハウスを舞台に、四季を巡ってのアール・ド・ヴィーヴルをテーマとした本Life in a French Country Houseを出したばかり。ガーデニング、花や果物の収穫、散歩、といったアウトドアライフから、ハウスリネンやテーブルセッティングを含むインテリア、そしてレシピまで、コーデリアのライフスタイルが写真200点、そして本人によるテキストとイラストで綴られています。この本に見るクラシックなフレンチ・シックから、カフェ・ラペルーズで花開いた冒険心溢れる折衷主義まで、コーデリアの世界をダブルで体験してみては。

Café Lapérouse , Hôtel de la Marine - 2 place de la Concorde - 75008 Paris8時-21時 (朝食〜ランチ、ティータイム、アペリティフ、ディナーまで、11-12時を除きノンストップ)、無休 今後はディナー・タイムも延長される予定。
予約はwww.cafelaperouse-concorde.com

 Text: Minako Norimats

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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