パリの22FW ファッションウイークが終わって、早や1か月。トレンド総論とベスト・ランウェイについては私と編集部Iさんとの語りの形でお届けしましたが、ここでは比較的新しいブランドの展示会ベスト3をご紹介しましょう。
まずは、LVMH賞でセミ・ファイナリスト(ファイナリスト8人に絞られる前の、ショートリスト20人)だったニコロ・パスカレッティ(Niccolò Pasqualetti)。彼はロンドンのセントラル・セント・マーチンズに学び、ザ・ロウやロエベ、そしてジュエリーのアリギエリでも経験を積んだ、イタリア人です。メンズのテーラリングとウイメンズのエレガンスが混在する彼のクリエイションは、ユニセックスと言うよりハイブリッド。まるでオブジェのようなオーガニックな形のウエアや小物はどれも、アートの域です。ナチュラルな色合いや風合いは、彼が育った環境、トスカーナ地方の田舎を思わせます。また独自のサステイナブルな取り組みを象徴するのは、糸のボビンやコルク栓など廃物を使っての手作りジュエリーの数々。この春からはマレ地区のセレクトショップThe Broken Armに入荷され、ファッションウィーク中には同店のウインドウを飾りました。
ユニセックスでもニコロとは対照的にミニマルで機能的なデザインを貫くのは、ミラノ在住の日本人、桑田サトシさんです。1年半前にスタートした彼のブランド、セッチュウ (Setchu) は文字通り、折衷が信条。日本では京都、そしてニューヨーク、パリ、ロンドンにも住んだことがある国際的なバックグラウンドに根付いた、和洋折衷の新解釈です。イードゥン、カニエ・ウエスト、ジヴァンシィ、ガレット・ピューを渡り歩いた彼のキャリアも多種多様。またサヴィルロウで学んだ厳密なテーラリングと、体にやさしくなじむ、流れるようなシルエットのミックスも、ある種の折衷だと言えるでしょう。ときには、平面裁断により簡単に折りたためる和服からヒントを得つつ、セッチュウはあくまでコンテンポラリーな洋服。折り紙を着想源としたドレスやジャケットは、折り目がデザインのアクセントでもあり、旅行に最適です。幾通りにも着られる仕掛け、シンプルながらパーフェクトなプロポーション、長く着られる最高級の素材と熟練の職人によるこだわりのある仕立て……。着てみて初めて良さがわかる、セッチュウ。この夏からはビームス・インターナショナルに入荷予定だとか。
一方限りなくフェミニン、かつロックなアイデンティティを築きつつあるのが、ミニュイ(Minuit)。パリジェンヌのローリー・アルベロが、ニューヨークのプロエンザ・スクーラーのデザインチームで数年キャリアを積んだ後にパリに戻って始めたブランドは、今回4シーズン目を迎えました。ミニュイは透ける素材、ブラトップやカットアウトのトップでいち早く肌出しスタイルをアピールしたのと同時に、ジャケットやパンツのカッティングにも定評があります。新作のミューズは、’70年代のシャーロット・ランプリング。微妙なさじ加減でニューヨークの洗練とパリのさりげないシックさを融合させるミニュイのスタイルに、ますます磨きがかかりました。
それぞれ個性は異なれど、数々のトレンドが複雑に交錯するこれからの時代を担いそうな3人。要注目です。
Text : Minako Norimatsu