パリではブティックのオープンが相次いでいる。ここではじっくり見るべき数店を、インテリアの詳細と共に紹介。

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【ボーディ】の新店も。ファッションからライフスタイルまで、パリの新アドレス3件

パリではブティックのオープンが相次いでいる。ここではじっくり見るべき数店を、インテリアの詳細と共に紹介。

『ボーディ』アメリカ以外の初店舗で、ヴィンテージの魅力再発見 。

エミリー・アダムス・ボーディによるニューヨーク拠点のブランド、ボーディ。アンティークの生地で仕立てた、またヴィンテージをカスタマイズした一点もの、ヴィンテージを着想源としたオリジナルデザインで、根強いファンを持つ。3月にははじめてアメリカの国境を超えて、パリ店をオープンした。内装は、グリーン・リバー・プロジェクトで家具とインテリアデザインを手がけるエミリーの夫、アーロン・オージュラによる。インスピレーションは、若い頃アメリカに長く住んだシャルル・リッツ(オテル・リッツの創業者セザール・リッツの息子で、1950年代から20年余りホテルを経営)がこよなく愛したという、アメリカのアウトドアとフライ・フィッシング。店内に魚のモチーフや釣竿、フランスの釣り具メーカーが作ったバンブーの小物などが見られるのはそのためだ。家具はアメリカのヴィンテージと、フランス銀行が数年前の大改装の際に手放した調度品、とアメリカとフランスをミックス。商品のラインナップでは、エッフェル塔のアップリケをつけたアンダーウェア、フランスのアンティーク生地で仕立てたウエア、フライフィッシュ用の“フライ”モチーフを手縫したネクタイなど、パリ店限定アイテムも。

BODE

6, rue de Valois 75001 Paris(11-19時)

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額に収めたポートレートの一連を飾って、個人宅の様な温もりを演出したボーディのブティック。Photo: Courtesy of Bode

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木製パネルと花柄のテキスタイルに、ボーディのヴィンテージ愛が顕著。Photo: Courtesy of Bode

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棚には釣り用のバスケットを配して、さりげなく着想源を示唆。Photo: Courtesy of Bode

 

ジャパン・フレンドリーな『モノクル』が、やっとパリにもオープン。

本拠地のチューリッヒ、そしてロンドンに続き、パリにもモノクルのカフェ&ライフスタイルショップがオープンした。「各都市のオープンは、物件やパートナーとの自然なめぐり合いによりますね。パリでもやっと機会が訪れました」。とは、パリ店に姿を見せたファウンダー、タイラー・ブリュレ(Tyler Brûlé)談。ヒップスターでも高級ショッピング街でもなく、市場街に近くて生活感もクリエイティブパワーも感じられるこのエリアが、モノクルのエスプリにマッチしたと言う。彼は元々ジャーナリストで、2007年にスタートした同名の雑誌をラジオ局やガイドブックに発展させている、クリエイティブ・ディレクター兼ビジネスマンだ。ショップのみ、コーヒーショップのみの店舗を数えると、今では世界に7軒を数える各支店からのリポートを毎日欠かさず読んで、顧客のニーズを把握する。とは言えモノクロが“マーケティング”臭さを感じさせないのは、各店がショップと言うよりコミュニティとして機能しているからだろう。また目には見えないが、タイラーの倫理観も、ここには息づいている。カン・デザイン(Kann Design)に内装を託したパリ店のために家具からドアのフレームまでをレバノンに発注していた彼は、ベイルートでの爆発で作業が滞った際も、職人たちをサポートして注文を決行したのだ。

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モントルゴイユの市場街からほど近い、モノクル パリ。Photo: Courtesy of Monocle

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コーヒーショップでは朝食、軽いランチに続き、夜はワインとカクテルがサーブされる。Photo: Courtesy of Monocle

パリでは他店と同じく、ベストセラーはコムデギャルソンのパルファン。人気アイテム、セバスチャン・マルバハー(Sebastian Marbacher)によるスイス製の木製ソルト&ペッパーには新色が加わった。ローカルなチョイスは、ビック、マルセイユ石鹸、文房具のパピエ・ティーグル、ウェアからブランケットまでを提案する羊毛の老舗アルパン(Arpin)、仕立てシャツやシルクスカーフで知られるシャルヴェ(Charvet)、刺繍ワッペンのマコン・エ・レクワ(Macon & Lesquoy)、そして家具のトリクス(Tolix)とのコラボレーション。またこれまでイベント参加者へのお土産で非売品だったダルマ“モノちゃん”も、店頭に並ぶことになった。コーヒーショップには、テン・ベルズ(Ten Belles)のコーヒー、テロワール・ダヴニール(Terroir d’Avenir)のペストリー、そしてヤバイ・サンドのカツや卵のサンドをセレクト。

 

ちなみにタイラーは、近年世界中で日本ブームがヒートアップするずっと前から、日本人の仕事ぶりやものづくりを評価している。思えばモノクル・カフェ1号店のロケーションは、有楽町阪急だった。モノクル・ショップのメンズを主とするウェアと小物のラインでは、ビームスや吉田カバンのポーターをはじめ、レザーグッズのエンダースキマ、ワークウェアやアウトドアウェアのポストオーバーオールズ、ラゲージのプロテカまで、10を数える日本のブランドとコラボレーション。オリジナルウェアのファブリックも日本からだ。“メイドインジャパン”は、クリーンで機能的なデザインがモノクルの美的価値観にあうだけでなく、クオリティも信頼できるからだと言う。パリの店頭では、日本がモノクルにどう解釈されているかを見るのもおもしろい。

Monocle
16, rue Bachaumont 75002 Paris (8時〜22時)

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ホームウエアから服、小物、パルファンまで、コラボレーション・アイテムを揃えたショップ・コーナー。Photo: Courtesy of Monocle

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セバスチャン・マルバハーによるソルト&ペッパー。Photo: From Monocle.com

本店とは似て非なる、『メルシー2』

ライフスタイルの殿堂、メルシーの2つめのブティックは、名付けてメルシー2。オーナーが偶然見つけたと言う物件は610M2にわたる元郵便局で、並行する二つの道に出入り口を持つ。15年前から北マレに君臨する一軒家のような本店とシェアするのは、“インダストリアルかつアーティザナル”にユーモアを加えたエスプリだ。ブルックリンのロフトの様な新店舗では、ガラスブロックの天井から燦々と差し込む自然光が心地よい。取り付けの棚を含め、家具の一連を手がけたのは、スクラップ廃材や工業廃棄物リサイクル素材の使用で知られるオランダのデザイナー、ピート・ヘイン・イーク(Piet Hein Eek)。キリムのラグやフィッテイングルームの刺繍カーテンはクラフト感を表現し、黒のメタルで仕上げた地階への階段は、モダンさをプラス。またメルシーらしいウィットは、壁に描いた手描きのトロンプルイユと、壁の上方に配した赤のフィアットで(このヴィンテージカーは、本店の中庭に常時駐車しているメルシーのアイコン)。

 

品揃えは本店と同じく雑貨、本、ホームウエア、ビューティ、ファッションまで。麻の後染めハウスリネンと、一部のベーシックウェアはオリジナルだ。ファッションではリーバイスとのコラボ限定品以外、比較的小規模なブランドからのワークウェアやカジュアルウェア、ユニセックス・アイテムが中心。各ブランドからのセレクトは少ない一方、取り扱いブランドは無数だ。スタジオ・ニコルソンの様にノームコアなスタイルと、ラフェティッシュ、ジジ・ハディッドによるカシミアブランドであるゲスト・イン・レジデンスなどのカラフルなニットが、コントラストを成している。

Merci 2
19, rue de Richelieu 75001 Paris (月、火、水曜 11時〜19時30分、木、金、土曜 11時〜20時、日曜10時〜19時30分)

 

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メルシーのアイコン、赤のフィアットを模したオブジェを飾った、メルシー2。Photo: Courtesy of Mercie

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ファッションのセレクトは、カジュアルでカラフル。Photo: Courtesy of Mercie

 

ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子プロフィール画像
ファッション・ジャーナリスト 乗松美奈子

パリ在住。ファッション業界における幅広い人脈を生かしたインタビューやライフスタイルルポなどに定評が。私服スタイルも人気。
https://www.instagram.com/minakoparis/

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