チャイナシューズとのひと夏の思い出

チャイナシューズの佇まいがすごく好きです。光沢感のある生地も刺繍もきゅんとくる! さらに欲を言えば甲はV型で浅め、底はフラットが好み。そんな条件を満たす一足を、数年前に台湾で探し当てて購入したのですが、引っ越しのドタバタでどこかにいってしまい……。あの靴どこにいっちゃったのかしらとぼんやり思っていたら、またもや旅先で理想の一足に出合えました。

上品な紫に可憐な花が刺されていて一目惚れ! 中華料理店の物販コーナーに陳列されていました。サイズも奇跡的に小さく、それゆえに売れないで何年も残っていたそうです。大きさが合わなくても多分買っていたけれど、ぴったりと素足がはまった瞬間にはもうこれください!と口走っていました。
家に持ち帰ってからはしばらく飾って眺めていたのですが、ある朝無性に「この靴で外に出たい!」という日があり。そういえば、外でガシガシ履けるようなつくりなのだろうか?と脳裏によぎったものの、すでに履く気になっており時遅し。歩いていて様子がおかしくなってきたのは、駅までの道のりの半ばに差し掛かった頃でした。違和感を感じて右足を見ると、なぜか爪先部分から親指が露出している。アッパーとインソールの間に穴が開いてしまっていたのです。おそらく経年で接着が劣化してしまっていたのでしょう。これくらいなら頑張って歩いてどこかで直してもらおうと思いましたが、何歩か進むごとにだんだん見える指の数が増えてくる。ついには、5本指が隙間からすべて露出している状態に(笑)。最終的にはなんと上と下にきれいに剥がれ分解されてしまいました……。駅まではあと1分。会社へ向かう道中だったので、もう家に戻る時間はない。自分でも驚くことに、結局駅まで素足で小走り、100均ショップでビーチサンダルに履き替えて出社したのでした。裸足で路上を駆け抜けていたあのとき、誰も知人に会わなくてよかった。あまりの間抜けさにひとりで笑ってしまい、完全に怪しい人でした。
今、右足は修理に出され、左足だけが飾られています。無茶して傷つけてしまって靴には申し訳ないことをしました。戻ってきたら、今度は丁寧に愛でたいと思います。

エディターSAKURABAプロフィール画像
エディターSAKURABA

好きな服は、タートルネックのニットと極太パンツ。いつも厚底靴で身長をごまかしています。

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