「忘れられない人」になりうる香り

曇りの日が似合う香りだと思います。FIVEISM×THREE「タッチング フロム ア ディスタンス フューチャー メモリー」。サンダルウッドやフランキンセンス、シダーウッドといったウッディノートが織りなす、森で深呼吸をしたくなるような清々しさ。そこにタバコ、レザーがほんのりと苦味を添えます。このかすかな苦味が、かいだときにもう、とんでもない切なさを呼び起こすんです。普段の生活ではタバコの匂いってすごく苦手なのですが、香水の原料となると良い仕事をしてくれるので不思議です。

こちらは決してハッピーな匂いではないんですが、感情をぐわんぐわんにかき乱して不安定にするようなものでもない。「そういえばあの人、今頃何しているかしら……」とふと思い出して、アンニュイに窓の外を眺める。すると、うっすらと陽を透かした曇り空が広がっていて、ほろ苦い気持ちがだんだんと胸の内に広がっていく。それは意外にも、自分にとって心地よい感傷だったーーそんなフレグランスなのです。木々の香りで始まりますが、時間が経つにつれて官能的で、自分でも驚くほどかっこいい香りへと変化していきます。実はスーツに最も似合う香水なのでは、と思います。
とにかく記憶に残る香りだから、何気なくつけるのは要注意かもしれません。出会った人にとって、「なぜだか忘れられない人」になってしまう可能性があるからです。

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エディターITAGAKI

ファッション、ビューティ担当。音楽担当になったので耳を鍛えてます。好きなものは、色石、茄子、牧歌的な風景。

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