すれ違いざま「すごくいい香り」と褒められた【ドルセー】の香水

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「すごくいい香り」と声をかけられたのは、ドルセーの新作

ドルセーの香水 Love After Rain K.M.

つい昨日、見知らぬ誰かから「香水、すごくいい香りですね」と声をかけられました。電車を降りる、ほんの数秒前のこと。隣に座っていた同い年くらいの女性が、私の方へ傘を落としてしまったので手渡したら、笑顔でそう言ってくれたのです。そして彼女は足早に降り立っていったのですが、降り際にかけられたそのひと言が、梅雨でどんより曇っていた心をパッと明るく照らしてくれました。そんな日にまとっていたのが、ドルセーの新作「Love After Rain K.M.」だったのです。

雨上がりの、澄みわたるピュアな空気

ドルセーの香水 Love After Rain K.M.

90ml・¥36,300

1830年にアルフレッド・ドルセーによって誕生したドルセーは、秘めた恋を香りで表現したフレグランスメゾン。当時20歳だった彼は、32歳で既婚者だったマルグリット・ブレシントンと恋に落ち、二人だけがまとう“赦しの香り”を作ったところに始まります。

それぞれの香水はイニシャルをもち、ラブレターの一部の抜粋や、秘密の誰かの名前を冠したもの。誰かを想う気持ちや、名前をつけられない感情、ふたりの間に流れる空気を香りで描き出します。ひとつひとつの作品には、まるで短編小説のようなタイトルが添えられていて、「それぞれどんなストーリーがあるんだろう?」と想像するのも愉しみの人ひとつ。そして、「Love After Rain K.M.」もまた、その世界観を静かに受け継いでいるのです。

嵐のような雨が過ぎ去り、ひんやりと澄んだ空気に包まれる。そのあとには、どんな物語が待っているんでしょう。
アイコニックな“雨”の描き方はたくさんありますが、この香りからふと浮かんだラブストーリーは、映画『ロスト・イン・トランスレーション』(2003)。雨の降る冷たい東京の街で、見知らぬ誰かと偶然に心を通わせていく。淡く、刹那的で、儚いけれど、じんわりと思い出に染み込んでいくような……この香りからは、そんな切ない温度を感じます。劇的な恋の始まりというより、人と人がふとつながり合う、その一瞬の美しさを閉じ込めたように。

パッと広がるのは、透明感のあるフローラルノート。パウダリーなアイリスの柔らかさに、可憐なスズランが重なり、みずみずしい梨のジューシーな甘さが弾けて。そしてベースの深みあるグリーンやモスが調和し、肌の上でゆっくりと表情を変えていく。決して強く主張するわけではない。それでも、気づけば誰かの記憶に残っている。そんな静かな存在感を放っています。

軽やかな余韻を残して

ドルセーの香水 Love After Rain K.M.

軽やかだけれど、忘れられない余韻がある。大げさでドラマチックな物語だけがラブストーリーではないように、この香りからは、日常をそっと照らしてくれるような優しさを感じます。

もしかすると、物語を豊かにしてくれるのは、劇的な出来事ではなくて、小さな幸せの積み重ねなのかもしれません。例えば電車の中で誰かが「いい香りですね」と言って微笑んでくれたように、世の中には“Small Good Things”が溢れているんだなと、改めて感じさせてくれた香りでした。

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エディターMICHISHITA

シンプルだけれど一癖ある服を求めて三千里。日々、モードを追いかけています。バロックパールと洋梨が好き。