【旅したくなる文庫本】『深夜航路』で「そうだ、フェリーで旅しよう!」

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ひとりアペロにぴったりの文庫本、見つけました

清水浩史 『深夜航路 午前0時から始まる船旅』書影

明るいうちからアルコールをたしなむ習慣に、アペロという洒落た響きの呼び名をつけてくれた方に感謝します。昼酒、昼飲み、昼つまみ、大好きです。平日ならばなお愉快、ひとりも善哉。

そんな「孤独のアペロ」の時間は、気軽な読書の時間でもあります。大長編の続きに没頭するもよし、ノンフィクションに胸躍らせるもよし、詩歌をちびちび口ずさむもよし、ジャンルは問いませんが、小体な店のカウンターでは文庫本がちょうどいいおつまみになります。

先日のアペロのつまみは、三陸の生牡蠣と、清水浩史・著『深夜航路 午前0時から始まる船旅』。酒盃がはかどる素敵な旅本だったのでご紹介します。

『深夜航路 午前0時から始まる船旅』が誘う、真夜中の海の旅

『深夜航路 午前0時から始まる船旅』に登場する周防大島松山フェリー/防予フェリーの船体

『深夜航路 午前0時から始まる船旅』にも登場する防予フェリーの昼便には私も乗ったことがあります。こちらは松山の三津浜港を出発する「おれんじまーきゅりー」の姿

『深夜航路 午前0時から始まる船旅』は、日本国内の午前0時〜3時に港を出発する深夜の船便全14航路を旅した清水浩史さんが、深夜航海の旅情を綴ったエッセイガイド。

北は青森ー函館を結ぶ「津軽海峡フェリー/青函フェリー」に、南は奄美大島ー鹿児島間、トカラ航路の「フェリーとしま」。また、長距離では敦賀と苫小牧を20時間で旅する「新日本海フェリー」、短いものだと乗船時間15分、瀬戸内海の宇野と直島を結ぶ通勤航路「四国汽船」などなど。すべて、真夜中の海をゆく船便の物語です。どんな人々が利用して、どんなふうに出航の時間を迎えるのか、船窓の風景と、船の中の様子、そして帰港地から始まる旅の模様まで、ゆったりと、まるで夜の海のように静かな筆致で書かれた至福の14章。旅する心がくすぐられ、めちゃくちゃ、船に、乗りたくなる! 

神戸と大分をつなぐフェリー「さんふらわあ」船上の夜明け

神戸を19時に出航し、大分に朝7時前に到着するフェリー「さんふらわあ」船上の夜明け

実は私も、鉄道旅より、飛行機旅より、圧倒的に、船旅が好っきー!! なんです。本書にも登場する、山口県の柳井港を出発し瀬戸内海の周防大島(民俗学者・宮本常一の故郷!)を経由して愛媛県松山にわたる「防予フェリー」には、昼間の便に乗ったことも。小島を眺めながらの2時間半の船旅、のんびりしててよかったなー。夜の航路といえば、神戸六甲港ー別府近くの大分西港の「フェリーさんふらわあ」や、門司ー横須賀を21時間でつなぐ「東京九州フェリー」もいい船旅でした。長距離航路には大浴場がついていて、海を眺めながらお風呂に浸かれるんですよ。最高。

まだ乗ったことのない、なくなってしまうかもしれない航路に思いを馳せて

清水浩史 『深夜航路 午前0時から始まる船旅』書影とフェリーグッズ

『深夜航路』は、日付をまたいだ午前0時以降に出航する船に絞ってガイドをしています。その旅客のほとんどは、遊覧観光ではなく運送や通勤移動のための利用者。深夜の航路は、仕事と生活に密着した存在であることも各章から伝わってきます。

2018年に刊行された本書ですが、2026年夏に文庫化に至るまでに、利用者減少や燃料価格高騰などに伴い、いくつもの深夜便廃止や航路変更がありました。なかでも、文庫版あとがきで書き下ろされた2025年の「桜島フェリー」深夜最終便の様子からは、著者の哀惜の気持ちがにじみます。フェリー船内のうどん屋さん、私も行ってみたかった……。

「深夜の旅では、扉が開くように心が開かれてくる」と清水さんは書いています。真っ暗な海を航行しながら、扉を開いて日常から羽ばたいてゆく。余白をゆくような船の旅に、すっかり心をかき立てられています。

今回紹介した本はこちら!
清水浩史 『深夜航路 午前0時から始まる船旅』書影

商品名

:

清水浩史 『深夜航路 午前0時から始まる船旅』

ブランド

:

草思社文庫

価格

:

¥1,100

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エディターKUBOTA

幾星霜をこえて編集部に出戻ってまいりました。活字を読むこと、脂と塩気、2匹の保護猫、平和と雑談を愛します。