2024.06.28

俳優・石橋静河が愛用する、定番のファッションアイテム【あの人のお気に入りvol.4】

SPUR.JPの連載「あの人のお気に入り」第4弾となる今回は、ドラマ、映画、舞台など数々の分野で活躍する俳優の石橋静河さんが登場。演技と身体表現に真摯に取り組み、ファッションについてもまっすぐな哲学を貫く彼女の、エッセンシャルな名品&定番アイテムとは?

作り手の誇りが見えるアイテムが、自分の心を喜ばせ、自信をくれる

「心地よく、なおかつ自分に自信が持てる服というものがだんだんわかってきたような気がします」と語る俳優・石橋静河さんは、まもなく30歳。「20代前半は悩み多き時期だったかな。自分がどう見られるかをすごく気にしていました。目立つのが嫌で、地味な服ばかり着ていた記憶があります」と振り返る。



世間の目を振り切ることができたのは、意外にもコロナ禍がきっかけだったという。「世の中がこんなに大変なのだから、明るい色の服を身につけて、せめて自分の気持ちを上げないと。そう思ってから、自分が心からうれしいと感じるものを身にまとうようになりました」。好きなものに対して素直に、自由な着こなしを楽しむ。そのことがなによりも自分に自信をくれることに気づいた。

話題沸騰中のNHKドラマ10『燕は戻ってこない』は、「代理出産」「女性の貧困」など、現代社会の問題を浮き彫りにしたディストピア的ストーリー。石橋さんは主人公の大石理紀役を演じ、視聴者の心を鷲掴みにした。20代の最後に取り組んだ新たな代表作について「誰の評価も関係なく、自分の心からいいと思う作品に出合えて、やり切った。胸を張って30代になれる、という気持ちでいます」と、晴々とした表情を見せる。大きな仕事に向かう時は心を奮い立たせる服を、終えた後は、自分を喜ばせる服を購入するのだそう。

表現者として、ものを生み出す現場に身を置いてきたからこそ「この一着を作るために、どれだけの労力がかかったのだろう」と想像できるようになったと石橋さんは言う。「だから、作る人たちの誇りが見えるものが好きです。クラフツマンシップが息づくファッションアイテムは、長く着られて肌に馴染むように思います」。

今回、紹介してくれた10のアイテムは、そんな石橋さんの現在地を示すもの。風通しのいい場所に立ち、自分自身の輪郭をしっかりと描き出すような、意思あるスタイルが表れている。

【メゾン マルジェラのドレス】自分を勇気づけてくれる、特別な一着

メゾン マルジェラのドレス
ドレス/本人私物、ネックレス¥78,100・靴¥173,800/マルジェラ ジャパン クライアントサービス(メゾン マルジェラ)0120-934-779

ドラマ撮影の最中、自分を勇気づけるために買いました。表現をする者として、自分の身体が一番大事な仕事道具。だから身体――さらに言えば骨格そのものを美しく見せてくれる服は、やはり大きな自信をくれます。選んだのは、“メゾン マルジェラ アイコンズ”のドレス。プレーンでタイムレスなデザインで、着ていて気持ちのいい軽やかなウール素材。マルジェラの服は、身体をすごくきれいに見せてくれるけれど、その塩梅が本当にさりげなくて、媚びがない。誰かの視線に対してではなく、私が私に「きれいでしょう?」と、胸を張れるようなラインがかっこいいんです。きっと着るたびに、あの時に買ったと思い出すような、特別な一着になると思います。

【メゾン マルジェラ×マイキータのサングラス】薄い色のレンズと華奢なフレームに惚れ込んで

メゾン マルジェラ×マイキータのサングラス
サングラス/本人私物

友達とのショッピング中、眼鏡屋さんで見つけたサングラス。淡いグラスの色味がひと目で気に入って、友人はオーバルシェイプ、私はこのカクカクしたオクタゴンシェイプ(八角形)を購入しました。親しい人と一緒だと、可愛いものを見た途端「お揃いで買っちゃおう!」となってしまって危険ですね(笑)。60〜70年代を思わせるレトロなフォルムに、初めは少し抵抗があったのですが、かけてみると線が細く軽やか。ちょっと大人っぽい雰囲気になるので、大好きです。

【メゾン マルジェラのバッグ】ぎゅっと抱きしめて、大切に持ち歩く、毎日の相棒

メゾン マルジェラのバッグ
バッグ/本人私物、シャツ¥121,000/マルジェラ ジャパン クライアントサービス(メゾン マルジェラ)0120-934-779

メゾン マルジェラの「グラム スラム」ホーボーは撮影現場など、どこへ行くにも愛用中。ナッパレザーのキルティングは、実際に枕として使える程にふかふか!! このフォルムが特に可愛くて、気に入っています。意外に大容量で、持ち物がいっぱい入って使いやすい。深いネイビーのような、なんとも言えない色合いもブルー系の服が多い自分のワードローブと合わせやすいです。

メゾン マルジェラのバッグ
バッグ/本人私物、シャツ¥121,000・靴¥128,700/マルジェラ ジャパン クライアントサービス(メゾン マルジェラ)0120-934-779

「グラム スラム」ホーボーも、自分への“ご褒美”としてお店で購入。ネットで気軽にポチッとするのも好きだけれど、実際に眺めて、持ってみて……という買い方は、その時の体験を乗せられる感じがして、選んでよかった、ずっと大事にしようという思いが強まります。

【古着のベルト】ディテールの繊細さを楽しむ、ジュエリーのような存在感のベルト

古着のベルト
ベルト/本人私物

メタル部分のレースのような細工、燻したようなゴールドと、スウェードのエメラルドグリーンの色の美しさに、ただただ一目惚れしました。服のバランスを調節するための小道具というよりは、全身のアクセントとしてジュエリーのように身につけるベルトです。昔のアクセサリーの方が、作り手の思いが伝わってくるというか、「こういうものを作りたかったんだな」と想像がふくらむ感じがします。それこそが古着屋さんでの出合いの楽しみかもしれません。

【カンペールのサンダル】家族からプレゼントしてもらったベビーブルーのサンダル

カンペールのサンダル
サンダル/本人私物、デニムパンツ¥41,800/エドストローム オフィス(トゥ エ モン トレゾア)03-6427-5901

このサンダルは家族からの誕生日プレゼント。アニメ的なフォルムが可愛くて、しかも一番好きな色であるベビーブルー。自分から「これがいい!」とおねだりして、一緒に買いに行きました。とっても歩きやすくて、愛着が湧いています。欲しいものはいつも直感で決めるタイプです。

【ガブリエラ コール ガーメンツのスカート】心地よさをまとう、エアリーなスカート

ガブリエラ コール ガーメンツのスカート
スカート/本人私物、シャツ¥22,000・ブラトップ¥8,800/エイチ ビューティ&ユース 03-6438-5230 ネックレス¥61,600/フィルグ ショールーム(サピア バハール)03-5357-8771

締めつけないデザイン、シアーな素材、カットオフした裾やスリットなど、ディテールのすみずみまで無機質でない息づかいが感じられて、リラックスして着られるスカート。ガブリエラ コール ガーメンツは、しばらく前に仲のいいスタイリストさんから、「絶対好きだと思う」とすすめられて出合ったブランド。身体とシームレスに密着する素材や、カチッと構築的なフォルムの服を着るのが楽しい時もあるけれど、今は、自分の身体そのものと向き合うことに興味と喜びがあります。上質な肌触りとシルエットのガブリエラの服は、まさに私の気分にぴったり! 着心地がよく、力を抜いていても、自分の身体をきれいに見せてくれる服だな、とうれしくなります。

【thairaのネックレス】柔らかなニュアンスのシルバーは、カレン族によるハンドメイド

thairaのネックレス
ネックレス/本人私物

土地の人の手仕事が取り入れられたもの、民族的な要素があるものに惹かれます。ネックレスは、タイ北部に住むカレン族によるハンドメイド。シルバーのアクセサリーって、ストリートっぽいムードがあると、自分にはちょっと強すぎる気がしていて。人の息づかいを感じさせるような柔和なチェーンに出合った時、「ああ、素敵!」と心から思いました。ホワイトシルバーの浅い色合いが私の肌にしっくり馴染んで、軽く優しいつけ心地です。

【トムウッドのネックレス】ギリシャ神話の女神がモチーフ、お守りのようなカメオのペンダント

トムウッドのネックレス
ペンダント/本人私物、ニットトップス¥16,500・キャミソールミニドレス¥25,300/エイチ ビューティ&ユース 03-6438-5230

貝殻を彫刻して生み出されるカメオも大好き。愛の神キューピッドが刻まれたペンダントを、お守り的にずっと愛用しています。このペンダントは、ギリシア神話からインスパイアされた、4〜5年前のトムウッドのコレクションで、今は販売終了になってしまっているのでなおさら大切。伝統工芸らしい温もりがありつつ、モダンなシェイプに落とし込まれているので、どんなスタイリングにも合わせやすいです。

【イザベル マランのバッグ】カジュアルスタイルにきかせる、スタッズ付きバッグ

イザベル マランのバッグ
バッグ/本人私物、シャツドレス¥399,000・ネックレス¥81,000/エドストローム オフィス(ルメール)03-6427-5901

イザベル マランのバッグはいくつか持っていて、今はこのハーフムーン型のレザーショルダーがスタメン。サイドにあしらったスタッズのクールな感じが好きで、カジュアルスタイルに合わせています。実用性という意味では、ものがたくさん入って使いやすい!というわけではないのですが、この存在感は他に代えがたい。デニムを穿く日には、たいていキャスティングしてしまう名脇役です。

【ERMANNO SCERVINOのブラウス】自分の素直な「好き」が形になった、母からの贈り物

ERMANNO SCERVINOのブラウス
ブラウス/本人私物

母のお下がりのブラウスで、袖の刺しゅうや切りっぱなしのディテールがたまらなく私好み。実は、もらってしばらくは「違うな」と思って着ていなかったのですが、急にしっくりくるタイミングが訪れたのです。もともと刺しゅうに目がなくて、見つけると「うわぁ!!」と高揚するほど(笑)。ただ、少し前までは“可愛い服”を着ていると自分が弱くなってしまう気がして、パンツなどのマニッシュなアイテムでどこか“武装”していたんですよね。けれど、30歳を目前に、そのフェーズが突然終わりました。おそらく、服で自分を守ろうとしなくてもよくなったのだと感じています。可愛いものをありのまま可愛く着たい!という気持ちに素直になったこの先の自分に、わくわくする楽しみをくれる一着です。

石橋静河プロフィール画像
石橋静河

1994年生まれ、東京都出身。俳優。2009年から4年間のバレエ留学後、コンテンポラリーダンサーとして活動。2017年、初主演作『夜空はいつでも最高密度の青色だ』で数多くの新人賞を受賞。映画『きみの鳥はうたえる』『あのこは貴族』、ドラマ『東京ラブストーリー』『大豆田とわ子と三人の元夫』、舞台『未練の幽霊と怪物―「挫波」「敦賀」―』などに出演。NHKドラマ10『燕は戻ってこない』で主人公を演じる。

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