東京のアートスポットで激写! ファッション賢者はここにいる

ファッション感度が高い人たちは、アートスポットに集まっている! 話題のエキシビションの来場者たちをスナップし、パーソナリティに迫った。アーティスト、ココ・カピタンの特別インタビューとともにレポート!

来場者へ質問!
Q1 アート展の感想は?
Q2 アート展を楽しむ上でどんな着こなしにしましたか?
Q3 展示情報はどうやって入手してる?
Q4 好きな作家を理由とともに教えてください

 

PARCOミュージアムトーキョー
『NAÏVY: in fifty (definitive) photographs』

気鋭のアーティストを紹介するパルコミュージアム。ファッション界でも注目される、スペイン人アーティスト、ココ・カピタンの巡回展が完全版となり日本初上陸。「Naïvy」シリーズの50点を展示した。
会期/〜5月9日(現在は終了) 
東京都渋谷区宇田川町15の1
03-6455-2697

東京のアートスポットで激写! ファッショの画像_1

Coco Capitánさん(アーティスト)

冒険、帰属、無垢の喪失をテーマに、架空の世界で迷子になったセーラーたちを撮影した写真作品。さらにハンドライティングの散文と刺しゅうを施したヴィンテージのセーラー服のインスタレーションを展示した。本展のレセプションに、ココ・カピタンはスーツ姿で登場。

「スーツは私のシリアスなキャラクターとマッチするし、他者へのリスペクトを示すシンボル的な服装。いつも個展の初日は、自分と作品に対し祝福の想いを込めて、新しいスーツで迎えます。今日の一着は東京のためにロンドンのテイラーで、スコティッシュウールであつらえたもの。もともとスーツは男性が着るものでしたが、ライフワークである刺しゅうで自分らしくカスタムして装うことが大好き。東京の思い出も縫いつけたいと思っています」。

目を引くのが、繊細なセンスを感じさせる小物使い。
「ラッキーアイテムの小さなネクタイに、愛用しているChurch’sのフォーマルシューズ。ゴールドの指輪とネックレスは、父から贈られた家族の絆を感じる大切なお守り。妹の名前が私の字で刻まれています。そして私が本展のためにデザインしたキャップ。道に迷った(LOST)ときに被れば、誰かが助けてくれるかも(笑)」

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高橋優香さん(ブックキュレーター)

A1 一歩ひいて撮影する彼女のユニークな視点が魅力的です。コマーシャルとファインアートを分断しない自由な立ち位置も好きです。
A2 作品を鑑賞する場なのでコム デ ギャルソンのジャケットとミニバッグでカジュアルになりすぎないように。
A3 仕事柄、展示のリリースをいただくことも多いですが、Instagramのストーリーもチェック。
A4 Aurel Schmidt。NYの街のゴミをドローイングでコラージュした作品は、愛らしい表情でアイロニーにあふれています。マイウェイを突き進む女性アーティストで憧れです。

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山王丸久美子さん(スタイリスト)

A1 友人にアーティスト本人が来日すると聞き訪れました。パリと韓国の個展も素晴らしかったです。セーラー服は個人的に愛用しており、親近感を持って鑑賞しました。写真はその場の空気が伝わるようで心に沁み、手書きの文字も独特な世界観。どこか遠くへ連れていってくれるようなアーティストだと思います。
A2 作家の私服にトラッドのイメージがあり、ヴィンテージのデニムジャケットにルイ・ヴィトンのバッグを合わせました。
A3 クチコミや雑誌から。
A4 写真家のGrace Ahlbom。本人の私服が素敵です。

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長尾悠美さん(Sister 代表)

A1 写真には透明感があって、みずみずしい。「私もそうかもしれない」と思わせてくれるポエムも共感を覚え好きです。
A2 作品に集中するため、極力シンプルに。Coperniのトップスを主役に、作家への敬意を込めて、韓国の個展で購入したトートバッグが映える色使いにしてみました。
A3 好きな作家のInstagramから。
A4 今年の国際女性デーでSisterとコラボレーションした、Monica Mayer。人々の声を可視化して、対話する空間を生み出す参加型アートプロジェクトを渋谷PARCOのCOMINGSOONで行いました。

 

国立新美術館
『ダミアン・ハースト 桜』

広大な空間を駆使した大規模展覧会を行う国立新美術館。本展は最新作《桜》のシリーズから色彩豊かでダイナミックな風景画24点を展示。
会期/~5月23日(現在は終了し、『ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション』ほかが開催予定)
東京都港区六本木7の22の2
050-5541-8600(ハローダイヤル)

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菅原ありあさん(モデル)

A1 何通りもの距離感から描かれた桜は迫力満点。木の下から花を眺めているような疑似体験ができました。ダミアン・ハーストは自由にスタイルを変えながら創作しているところがかっこいい。
A2 リラックスしながら時間をかけて作品を鑑賞したいので、着心地がよい服と歩きやすい靴がマスト。アーティストのイメージに合わせてUNDERCOVERのタンクトップで。
A3 ウェブニュースなど。あとは定期的にインターネットを使って調べるようにしています。
A4 Robert Bosisio。ぼやかした作風と独特なトーンが、いい意味で違和感を覚えます。

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倉田佳子さん(アーティストコーディネーター)

A1 初めて作家の絵画への苦労を知ることができました。作家のコンセプトである「生」と「死」が、桜の儚さと重なり、実物の花とはまた違った迫力を感じました。
A2 アーティストのエネルギーや想いに向き合えるようシンプルで身軽に。Eckhaus Lattaのパンツを軸に、展示内容に合わせ明るい色でまとめました。
A3 友人と誘い合ったり、Instagramを見て。
A4 Balenciaga Crocs 2.0のキャンペーンで話題になったAnna Uddenberg 。SNS上の自己認識や現代社会におけるジェンダー論について考えさせてくれます。

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照元萌子さん(アートディレクター)

A1 ダミアン・ハーストの興味深いところは、英国的でシニカル、ビジネスパーソンであるところ。そんな彼に桜はどう映ったのか想像しながら鑑賞しました。
A2 桜がテーマということで、ヴィンテージのSonia Rykielの花柄のスカートを選びました。カラフルな服装は気持ちがポジティブになり、自ずと展覧会への期待が高まります。足もとはザ・ロウのブーツで。
A3 駅に張ってあるポスターやSNSで。
A4 Giorgio Morandiは静かかつ穏やかで、いつどんなときに観てもいいなと思います。

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井上 恵さん(PR)

A1 桜は日本で春の風物詩となる特別なもの。作品から春を再解釈したり、西洋絵画の文脈について新しい発見ができました。ダミアン・ハーストのアートだからこそできる大胆な表現を行う姿勢や覚悟には圧倒されます。
A2 桜に合わせてHender Schemeのフラワーモチーフのシューズを選びました。
A3 会場のハンドアウトや友人がアップするSNSの感想や画像。
A4 Laila Gohar、Clementine Keith-Roach、安藤晶子。ジャンル問わず幅広く鑑賞しますが、女性らしいファッションや表現に惹かれることも多いです。

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岩下莉奈さん(モデル)

A1 ダミアン・ハーストが「生」と「死」を探究しながら、思考や哲学から生み出した作品はどれも心に響きます。正面から距離をとったり、近づいて一筆一筆の跡を観察したり。ゆっくり座ってボーッと眺めることも。今年はお花見ができなかったので、贅沢な時間を過ごせました。
A2 アーティストがモダンなイメージなので、モノトーンの装いでファセッタズムのタイツのグリーンが映えるように。歩きやすさも重視したプラダのヒールの絶妙な高さもポイント。
A3 Instagramや『美術手帖』で。
A4 Robert Bosisioは、曖昧さと繊細なタッチが好みです。

 

ラベンダーオープナーチェア
『xo 川角岳大』

西尾久にあるアートギャラリー。作品とともに食も楽しめる。絵画、木材や建築資材などによるインスタレーションを発表してきた川角。本展は三重県に移住後に制作した絵画作品を展示。
会期/〜6月12日(現在は終了)
東京都荒川区西尾久5の2の18
lavenderopenerchair.com

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倉敷安耶さん(アーティスト)

A1 日常風景を描くことで、目の前のできごとはやがて思い出になると訴えているかのよう。ぼやけたタッチから人の「思い出す」行為は記憶の中で空間と物をなぞることだと気づかせてくれます。過去作の犬の絵もお気に入り。
A2 作品と調和する色をまとうこと。ニットのアンサンブルにTOGAのサンダルを。
A3 WEB版「美術手帖」、「artscape」、フリーペーパーのGUIDE。
A4 水上愛美は洞窟壁画のような作品で、人類の創作のロマンを感じます。久保田智広は、大量生産・大量消費社会に抗する作家として制作を続けている点に好感を持っています。

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シャラ ラジマさん(モデル・文筆家)

A1 アート作品を鑑賞する機会は多いほうだと思うのですが、絵画作品は久しぶりでした。色のトーンが好き。また、やわらかい曖昧な輪郭が印象的で、興味深かったです。ギャラリーのウィンドウに飾られた動物の骸骨のような作品に目が止まりました。
A2 鑑賞するときも、特に普段と服装が変わることはないですね。強いて言えば、自分らしくいられる装いで。今日は同系色でまとめました。
A3 友人のクチコミやギャラリーのInstagramからチェックしています。
A4 答え切れないくらい、たくさんの好きなアーティストがいます!

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タン ウンシさん(デザイナー)

A1 すべての作品に共通する、淡い色合いからインスピレーションを得られました。平面を強調するような構図なのに、独特な点画風のタッチの意外性が面白い。
A2 Helmut LangのドレスにPLEATS PLEASE ISSEY MIYAKEのパンツ、さらに自分のブランドTWEOのニットバッグ。街中でガラス越しに自分を見てテンションが上がるような、多彩なピンクを使ったコーディネートに。ポイントに友人と残布で作ったファニーなチャームをつけています。
A3 Twitter。
A4 Willem de Kooning。あふれんばかりの色と力強さ。

 

インヘリットギャラリー
『Ogawa Yohei Solo Exhibition"MASSIVE"』

若手から人気作家まで、有名無名にかかわらず、フックアップし紹介するギャラリー。ヤシの木がある風景画とノスタルジックな色彩が印象的なアーティスト、小川洋平がペインティングした廃棄瓶200本を展示販売した。
会期/〜5月29日(現在は終了)
東京都世田谷区下馬1の48の3
inheritgallery.com

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桐生綾子さん(販売員)

A1 リキュールの空き瓶が、日々を彩り豊かにしてくれるアート作品に生まれ変わるのかと、観て楽しい気持ちになりました。
A2 作品、空間が引き立ち、その場になじむような着こなしを心がけています。ヴィンテージのパキスタンのプリントワンピースにforte_forteのベルベットパンツを合わせ、バッグはKASSL editions。
A3 情報サイト「artscape」を参考にしています。気に入ったギャラリーがあれば、Instagramをフォローし、情報を送ってもらえるように会員登録をします。
A4 KASUMI OOMINEさんの独創的なぬいぐるみは癒やしです。

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土岐ひろみさん(スタイリスト)

A1 チルな作品の魅力はもちろん、200本の中から気に入ったものを選び購入できることが鑑賞の楽しみにつながりました。わが家は、ブラウンの瓶に岩とピースマークが描かれた作品を購入。ギャラリーが自宅と近く、オーナーとも仲よし。展示はいつも拝見しています。
A2 GIL RODRIGUEZのトップスにNEEDLES× NOMA t.d.のスウェットパンツで動きやすく明るい気持ちで鑑賞できるように。バッグはHepzibah Lyon。
A3 Instagramで。
A4 MADSAKI。常に驚きのあるエネルギッシュな作品を世に送り出しているので。

 

カーム&パンク
『System of Culture"Exhibit 4"』

国内外のさまざまなフィールドで活動する作家の展覧会をキュレーションするギャラリー。アーティストSystem of Cultureが絵画や映画からインスピレーションを受け、演出し構築した風景を撮影。記憶を呼び起こす写真作品を展示。
会期/〜6月5日(現在は終了)
東京都港区西麻布1の15の15 浅井ビル1F
03-5775-0825

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和田ミリさん(スタイリスト)

A1 置かれた物体の意味や、一見自然光での撮影に見えるライティング。ギャラリースタッフの説明を受けて、写真の違和感を解き明かす作業が面白かったです。被写体の選び方にも、親しみや可愛らしさを感じます。
A2 資料にあったグミの写真を見て、Helen Lawrenceのスカートを着たいと思いました。美術館やギャラリーに行くときは、コツコツ音がしないものを選んでいて、靴はPaula Canovas del Vas。
A3 Instagramや友人との会話で。
A4 Maya Deren。夢か現実かわからない不気味さと心地のよさがある映像作品が気に入っています。

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鈴木麻莉子さん(デザイナー)

A1 心に残ったのは、いくつかレイヤーがかかったような視点と不思議な光の表現。どこか虚しさと温かさが交わるような雰囲気、絵画をモチーフにした表現方法に見入ってしまいました。
A2 はき慣れたパンツとシューズで美術鑑賞に行くことが多く、ANTHEM Aのボトムス、ヴィンテージのトップスにベストを重ねました。
A3 知人からの紹介、ギャラリーからのDMなどで。
A4 Gerhard RichterやHarold Ancartは白の作品、Jack DavisonとOlivier Kervernは光や色彩の使い方、間の取り方が独特なところが好きです。

 

ブックマーク
「ED TEMPLETON『87 DRAWINGS』」

マーク ジェイコブスが手がける書店の地下にあるギャラリー。現代美術家でプロスケーターのエド・テンプルトンが作品集『87 DRAWINGS』を出版。ドローイング15点を展示した出版記念エキシビションを開催した。
会期/〜5月18日(現在は終了) 
東京都渋谷区神宮前4の26の14
03-5412-0351

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とんだ林 蘭さん(アーティスト)

A1 構図がシンプルで、描きたいものが伝わってきます。モチーフや色使いも好みだったので、作品集を購入しました。
A2 特に意識していません。普段どおり着たいと思う洋服で。noir kei ninomiyaのトップスに、Acne Studiosのデニム。サンダルはJIMMY CHOO、かごバッグはバレンシアガ。ピアスはOTTOLINGERを合わせました。
A3 SNS。友人に誘ってもらうことも多いです。
A4 Ian Cochranという、アーティストの家具のような作品が可愛すぎて欲しいと思っています。 透明でぷるんとしたテクスチャーは、見るとついうっとりしてしまいます。

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吉岡咲羅さん(PRアシスタント)

A1 パンキッシュな作品から女性の繊細なポートレートまで、たっぷり鑑賞できる展示内容がよかったです。出版された本と作品を実際に見比べられるのもうれしい。開催されたトークイベントでは、アーティスト本人のパーソナリティを身近に感じることもできました。
A2 ギャラリー内で自分が主役にならない装いに。MM6 Maison Margielaのクロップドシャツにデニム、adidas × lotta volkovaのサンダルを合わせました。
A3 Instagramで。
A4 Stefan Marx。簡単に描けそうな落書きのようなタッチだけどアート作品として成立している点が好き。

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清水瀬里さん(会社員)

A1 人物の日常的な瞬間を切り取ったような表情と佇まいに目を奪われました。生き生きした被写体の表情が好きで、もともとエドが撮る写真のファンだったのですが、ドローイング作品はどこかに毒々しさを感じるところが彼らしさなのではないかと思いました。
A2 アートをゆっくり鑑賞するためにHOKA ONEONEのスニーカーで。Allegeのトップスで落ち着いたトーンにまとめました。
A3 InstagramやWeb媒体。友人との情報交換。
A4 nico ito。初めて観たときに「私が好きな世界はこれ!」と思いました。

SOURCE:SPUR 2022年8月号「東京のアートスポットで激写! ファッション賢者はここにいる」
photography: Miyu Terasawa text: Aika Kawada edit: Ayana Takeuchi

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