気鋭のブランド【スポーティー&リッチ】と【ハイスポート】に熱視線!

活動的なライフスタイルに不可欠な、デイリーウェアとは? ウェルネス・インフルエンサーと、自身を表に出さないデザイナー、L.A.を拠点としつつも対照的な二人による、それぞれのブランドの魅力を探る

Sporty & Rich(スポーティー&リッチ) エミリー・オバーグの新しい提案

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Emily Oberg

カナダ出身。ビデオコンテント・プロデューサーとしてキャリアをスタート。KITH NYCのウィメンズウェアのディレクションを経て2015年にスポーティ&リッチをローンチ。

"スポーティで豊か"を極めるエミリーが、自らのアクティブなライフスタイルを発信するスポーティ&リッチ。彼女が考える、真のウェルネスとは?

グローバルに提案するのは、健康でハッピーな暮らし方

エミリー・オバーグ

スポーティで、リッチ。アクティブでヘルシーコンシャスなエミリー・オバーグが体現するのが、まさにこの言葉だ。彼女はピラティスを1日2回、ジョギングやハイキングも頻繁に行う。さらに今はテニスに夢中だと言うから、文字通りスポーティ。ただし“リッチ”については彼女はこう語る。

「金銭的価値のことではないわ。ハピネスとヘルス、つまり日々の生活の基本において”豊か(リッチ)”であることを示唆しているの。そしてもちろん、上質な素材で仕立てのよいスポーティウェアもね」

彼女が2015年に立ち上げたブランド、スポーティ&リッチは「常に新しいもの、エキサイティングなことを発信していきたいから」と、月に1度か2度のドロップ。中にはアイコニックなホテルやスポーツクラブ、スポーツウェア・ブランドとのコラボレーションも含まれる。テニススカートなど特定のアイテムを除き、すべてがユニセックス。毎回40点前後からなるドロップを成すのは、定番のデザインをベースに色で変化を出したアクティブウェアと、SRC(Sporty & Rich Club)のロゴや“Health”“Wellness”といった言葉をキャッチーな書体で綴ったカジュアルウェア。公式サイトのeコマースで新ドロップと同時に公開されるのは、エミリー本人のディレクションによる、まるで映画のワンシーンのようなキャンペーンイメージだ。

ちなみにスポーティ&リッチの前身は、2015年から彼女がインスタグラムに投稿し始めたムードボード。タンブラーやヴィンテージのファッション誌で見つけた、スポーティなシーンでのセレブスナップや、スポーツウェアのファッション写真で構成されている。「特に、1980-90年代のダイアナ元妃のスナップには目がないの。好きな写真家は、ハンス・フォイラーやスリム・アーロンズ」と、好みが明確なエミリー。彼女が選ぶ写真は、今でもスポーティ&リッチのアカウントにブランドのキャンペーン写真に交じって投稿されている。つまりハイエンドなスポーツクラブに通うファッションアイコンや、セレブのスポーティなワードローブというブランドの方向性が、ことあるごとにアピールされているのだ。

また、昨年は240ページにわたる豪華本『The Sporty & Rich Wellness Book』を出版。写真はすべて撮り下ろしで、ボディ&マインド、ビューティから食まで、健康で美しくなるためのすべてが語られている。また、ニューヨークには、ショップ&スパがオープン。小規模ながらスキンケアラインもローンチされ、スポーティ&リッチによるヘルシーライフの提唱は、ますますグローバルに。これらすべてを、エミリーは“パッション・プロジェクト”と呼ぶ。自身をブランドの顔だと考え、セルフィーの投稿にも熱心。ミレニアル世代のビジネスウーマンでもある彼女のライフスタイルに共感するコミュニティは広がっている。

「ウェルネスは、私のパッション。これにラグジュアリーなライフスタイルをミックスしたことならなんでも興味があるの」と、エミリー。秋以降のドロップにはジャケットやコートが登場し、将来はショップ&スパに宿泊施設が加わるかもしれない。スポーティ&リッチはますます豊かに発展中だ。

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エミリー自身が執筆、ディレクションしたウェルネス・ブックと、オリジナルのスキンケアプロダクト

スポーティ&リッチのコレが欲しい!

昨年秋に日本上陸を果たしたスポーティ&リッチ。今こそ手に入れたいコレクションを紹介。購入は公式HP(www.sportyandrich.com)をチェック

Los Angeles Drop

Los Angeles Drop

イメージはL.A.のスポーツクラブに通うときのスタイル

ローンチ秒読みのロサンゼルス・ドロップ。定番のTシャツやスウェット・ポロ等を、ミントグリーンとラベンダーのパステル2色と、チョコレートにゴールデンイエローという1970年代のヴィンテージ感あふれる配色、そしてペールグレーとクリームのニュートラルカラーで展開。エコボトルやトートバッグなど、小物も豊富だ。

1・2 Tシャツ$69とレギンス$150
3・4 リブ編みのポロ$150とマッチングのバイカーショーツ$104
5 ボーダーTシャツ$138
6 キャンバス地のトートバッグ$81
7 ソックス$35
8 帽子$69
9 エコボトル$64
10 ミントグリーンのウインドブレーカー$276
11 スウェット地のポロ$213
12 スウェット地のボクサーショーツ$110
13 Tシャツ$98

Countryside Drop

3月のドロップより。(写真右)ベージュのスポーツブラ$100とセットアップでまといたいレギンス$130。エミリー自身も愛用しているアクティブウェアは定番で、ドロップのムードに合わせ、毎回さまざまな色で登場する。(写真下)トラックスーツはジャケット$220、パンツ$210

College Drop

College Drop

アメリカのキャンパスライフのユニフォーム

すでに公式サイトで販売中のカレッジ・ドロップは、文字通りアメリカのキャンパスライフを思わせるコレクション。プレッピーなムードのストライプシャツを筆頭に赤、白、ネイビーを基本色としたコレクションには、スポーティ&リッチのスピリットがぎゅっと詰まっている。

14 スウェット地のポロ$213
15 テニススカート$184
16 アメフトのユニフォーム風のTシャツ$110
17 帽子$69
18 リブ編みタンクトップ(参考商品)
19 クロップド丈のスウェット$173
20 スウェット地のボクサーショーツ$110
21・22 コットンのシャツ$196と同素材のボクサーショーツ$92
23 "健康は宝"という金言が背中にプリントされた、アイコニックな長袖Tシャツ$69

College Drop

カレッジ・ドロップのキャンペーンフォトより。(写真上)パパラッチを避けている風のカップルのルック。
左・スウェット$184、下に着た長袖シャツ$202、ショーツ$110。右・Tシャツ$87、テニススカート$184。(写真下)定番アクティブウェアのトップス$144。このドロップではネイビーで登場した

High Sport(ハイスポート) アリッサ・ザッカリーによる、日常のスポーティブウェア

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Alissa Zachary

デザイナー。ニューヨークではザ・ロウで10年間マーチャンダイザー、さまざまなファッションブランドのコンサルティングを担当。夫の仕事の関係でロサンゼルスに移り、2年前にハイスポートをローンチ。

マーチャンダイジングのプロ、アリッサは、忙しい日々の生活自体をスポーツだと考える。アクティブかつスタイリッシュな日常のためのウェアは、特別な素材の開発から始まった

ロサンゼルスカジュアルとNYシックが出合うとき

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仕事と社交、家事や子どもの世話を両立させる日常自体がスポーティ、と言うアリッサの考えが象徴された、ワンシーン(赤ちゃんはアリッサの末娘)。"キックパンツ"は黒、白、赤、ネイビー、カーキ、アイボリーの定番色のほか、シーズンごとに展開する

 

先に紹介したスポーティ&リッチのエミリー・オバーグとは対照的に、ある考えから自身の顔を公開していないデザイナー、アリッサ・ザッカリー。ブランドの公式サイトにはAboutセクションを設けず、インスタグラムのアカウントもプライベートに設定している彼女はこのように語る。

「私のエネルギーが向かう先をブランドに集中させているんです。今の時点では自分を語る必要性を感じません」

10年以上ニューヨークでマーチャンダイジングに磨きをかけ、ザ・ロウではロサンゼルス店のオープンに携わり、新カテゴリーのローンチにも関わったアリッサ。ロサンゼルスに移り住んだのをきっかけに、2年前に立ち上げた自身のブランドがハイスポートだ。その核心は、ライフスタイルに対する正確な分析眼と、それに沿うウェアを可能にするために開発した、特別な素材にある。

「私自身9、7、3歳と3人の子どもがいて、かつ趣味のためや友人との外出、そして旅行も多い。歩くのが好きだしランニング、ヨガ、ピラティスもしています。でも、特にワークアウトという意味ではなく、アクティブな日常自体が、私にとってはスポーティなものなんです。これは私の例ですが、特にコロナ禍以降は、複数の職業をこなす人も多いし、モダンな女性のライフスタイルが変わってきていると感じます」

アリッサは、ブランド名に冠した“スポート”について、こう説明してくれた。一方、“ハイ”に由来するのは”ハイエンド””ハイレベル”。
「ニューヨークからロサンゼルスに移ってから、カジュアルな格好をすることが増えましたが、シックな装いも捨てがたいですね。二つの都市のスピリットのミックスが、新鮮に感じます」
マーチャンダイザーの視点でこう分析する彼女は、自分を含めそんな女性たちのニーズについて考える。
「アクティブウェアには、すでにいいものがたくさんあります。コットンシャツやレザーのハンドバッグの分野も市場は飽和状態で、これ以上作る必要はないでしょう。ファッションではすべてがやり尽くされている感じがするし、単に新しいブランドを始めることが目的ではありませんでした」

とは言え、何かオリジナリティがあるもの、セーターとジーンズの代わりになるもののカテゴリーがあるはずだと考えると、次第に理想のワードローブの輪郭がはっきりしていった。

「真に必要で役に立つもの、しかも仕立てがよくて長持ちし、愛し続けられる服を作りたかったんです。夜帰宅したときも、鏡に映る自分に自信を持って朝出かけたときと同じくらい、パーフェクトに見えるルックを」

イージーな着心地、スタイルのすべてをかなえるアイテムとは? 彼女はさらに熟考した。まずは、着脱が簡単でデリケートすぎず、頻繁なクリーニングにも耐久性があり、何よりもシワにならないことがマストだ。特に注目したのは、パンツの型崩れ。“何度着ても膝が出ないパンツ”は盲点で、探してみると意外とないことに気がついた。

さらに具体的に求めたのは、最適なコンポジションのストレッチ素材と、スポーティなムードを演出するためのマットな質感。こうして彼女が開発したのは、美しい糸で織られ、発色がよく毛羽立たないイタリアンコットンと、ライクラをミックスした伸縮素材だ。コットン68%、ライクラ28%、エラスティン4%という特別な配合に2年の歳月を費やした。それまでもつき合いのあった生地メーカーとの仕事だったが、企業は規模の大きいオーダーやブランドを優先する傾向にあるため、アリッサのプロジェクトはしばしば後回しに。しかし、目的から目を逸らすことなく、彼女は忍耐強く数度の試作をし、ついに理想の素材を手に入れたのだ。

これを用いて完成した、ブランドを象徴するアイコニックなアイテムが“キックパンツ”だ。ファスナーやボタンがなく、着脱はまるでレギンスのようにいとも簡単。体を締めつけない適度なストレッチ性と、ややフレアで短めの丈も、動き回るにはぴったりだ。

特別な素材と 鮮やかな色で、一年中着回せるアイテム

ハイスポート

2024年SSのルック。(写真右上)コート(参考商品)、ヴィスコースとポリエステルをミックスしたトップス$860、シグネチャー素材であるコットンとライクラのキックパンツ$860。(写真右下)トップス$1,140、キックパンツ$860。(写真左)Tシャツ各$580、ギンガムチェックのパンツ$880、中央のスカート$960、セーター$640。NET-A-PORTER(https://www.net-a-porter.com),Moda Operandi(https://www.modaoperandi.com)で入手可能

アリッサにとってもう一つ大事だったのは、スタイリングのしやすさ。つまり、モジュラー性だったと語る。
「素材も縫製も最高なので、確かに値が張ります。しかし、たとえばハイスポートの4つのアイテムを持っていたら、簡単に着回せるし、買い足していけばいろいろな組み合わせが可能です。特にコットンとライクラの製品は通気性がよく、暖かい。オールシーズン活躍するんですよ」

こんなふうにいいことだらけのハイスポートのヒットアイテム、キックパンツ。定番色のほか、これまで出したシーズン色ではターコイズ、パープル、ピンクなどビビッドな色合いも予想外に需要が高い。スポーティなムードに加え、このカラーパレットのおかげで、ハイスポートはクワイエット・ラグジュアリーでも、コンセプチュアルでもなく、そして装飾過多とも違う、新しいカテゴリーを見出した。

「色選びでは、アートからインスパイアされることが少なくありません。特に20世紀半ばのアーティストの色使いに惹かれます。たとえばジョン・チェンバーライン、ロバート・ラウシェンバーグ、フランク・ボウリング……。最近ではパリで見たロスコの展覧会に触発されました。ロサンゼルスの光や、緑の多い環境にも、無意識に影響されているかもしれません。生き生きとしたトーンは、ブランドや私のムード、フレンドリーでインクルーシブな姿勢も象徴しています。世界からの悲しいニュースが多い昨今ですが、人々に元気を与えられたら、と思っています」と、ポジティブなアリッサ。ハイスポートを身にまとえば、メンタルヘルスにもいい影響を与えてくれそうだ。日本でもこの夏からロンハーマンで入手可能になる。