THE WORDS OF Matthieu Blazy 

昨年12月、自身初となるメティエダール コレクションをニューヨークの地下鉄で発表したマチュー・ブレイジー。センセーションを巻き起こした作品への想いを語る

日本初! 独占インタビューが実現! 【シャネル】マチュー・ブレイジーからのメッセージ

THE WORDS OF Matthieu Blazy 

昨年12月、自身初となるメティエダール コレクションをニューヨークの地下鉄で発表したマチュー・ブレイジー。センセーションを巻き起こした作品への想いを語る

INDEX

日常を特別なものへと昇華させたいと考えました。

日々の装いを、卓越したクラフツマンシップによって素晴らしいものにしたかったのです。

I wanted to transform the everyday into the exceptional. I wanted day-to-day pieces to be made incredible through super high craftsmanship.

マチュー・ブレイジー

メティエダール コレクションの出発点は、ガブリエル・シャネルの歩み、とりわけ彼女がアメリカを訪れた出来事から着想を得ました。映画衣装の制作に携わるために渡米したという事実は、非常にシンプルでありながら印象的なエピソードです。

多層的な構成でありながら、軽やかで親しみやすい表現に仕上げられています。多彩なキャラクターが登場し、ポップな魅力を放つ一方で、le19Mのメゾンダールが誇る卓越した技術とクラフツマンシップが支えています。まるでハンバーガーのように、一つひとつが重なり合いながら、すべてが一体となって全体を引き立てています。

サヴォアフェールは、しばしば変化しないもの、歴史的なものとして語られます。しかし私は、伝統的な知識やクラフトこそが現代のファッション文化の中で生き、呼吸し、進化していると考えています。ものづくりや装いの中に人が関わっていることは重要です。不完全さの中にこそ、人間らしさの中にこそ、完璧さが宿るのです。時がたつにつれ、アトリエの卓越した技術、そしてそこで協働する素晴らしい職人たちの技は、ますます大きな意味を持つようになるでしょう。

日本初! 独占インタビューが実現! マチュー・ブレイジーから届いた3つの回答

マチュー・ブレイジー

ラフ・シモンズのもと、カルバン クラインで数年働かれていましたね。久しぶりにカムバックしたニューヨークの街。アメリカンファッションでの経験から、メティエダール コレクションに通じる学びがあれば教えてください。

ニューヨークにはそれ以前にも何度も訪れたことがありましたが、33歳のときに移り住み、数年間をこの街で過ごしました。私は常に、まるで映画の登場人物になったかのような気持ちでニューヨークを感じてきました。角を曲がるたびに何か予期せぬ出来事が待っている、そんなワクワクする感覚がこの街にはあります。個性豊かで魅力的なキャラクターがあふれる場所。特に印象に残っているのは、地下鉄に乗ったときの光景です。ニューヨークでは、子どもや学生はもちろん、世界のリーダーたちや、ブラックタイやイブニングドレスでメトロポリタンオペラから帰る人たち、さらにはタイムズスクエア周辺で見るスーパーマンやバットマンといったコミックのヒーローさながらの人々まで、誰もが同じ地下鉄を利用しています。このコレクションを制作するにあたり、私はそんなニューヨークのスピリットを表現したいと考えました。物語性やキャラクター、命を吹き込むようなピースを思い描きながら、楽しんで創作に取り組みました。

Although I had visited New York many times before, I moved there when I was 33 and lived there for several years, and I’ve always thought of the city almost as if it were a character in a film. You constantly feel that something unexpected might happen just around the corner. It’s a place full of personality and fascinating characters. I remember taking the subway and witnessing the most incredible scenes: in New York everyone takes it – children, students, world leaders, people coming from the Metropolitan Opera in black tie and evening gowns, and even figures that seem straight out of comic books like Superman or Batman around Times Square. When creating this collection I wanted to capture that spirit. We had fun imagining pieces that tell stories and bring a sense of character and life to the clothes.

2023年3月に来日された際、SPURでインタビューをさせていただきました。示唆に富む言葉を紡ぐ方だと感銘を受け、まるで哲学者のようだと思いました。メティエダール コレクション時に会場で配布されたタブロイドでは、 ご自身をデザイナーではなく 「考える人」 と答えていらっしゃいましたが、 なぜ 「考える人」 なのでしょうか?「考える人」として、シャネルにおけるあなたの役割をどのように認識していますか?

私は自分自身を「作り手」でもあり、「考える人」でもあると捉えています。もちろん私の仕事は服を作り、シルエットを構築することですが、同時に物語を紡ぐことも私の大切な役割だと感じています。ガブリエル・シャネルには、非常に豊かな物語があり、その中には広く知られているものもあれば、まだ誰も知らないようなものも存在します。私の仕事は、こうした物語や感情を服に昇華し、人々の心を動かすもの—詩的なものですらあるかもしれません—、感じ取れる何かを生み出すことです。結局のところ、人が新しいバッグやジャケットを欲しくなるのはなぜでしょうか。それは、欲望や感情—心地よさや自信、高揚感といったもの—がその背景にあるからなのです。

I see myself as both a maker and a thinker. Of course my work is to create clothes and build silhouettes, but I also feel that my role is to tell stories. With Gabrielle Chanel there is an extraordinary wealth of stories, some that are well known and others that people may never have heard before. My job is to translate these stories and emotions into clothing and to create something that can move people – perhaps even something poetic. Something that can be felt. In the end, why does someone want a new bag or a new jacket? It is about desire and emotion – about what makes you feel good, confident, or uplifted.

お会いした際、クラフツマンシップへのリスペクトをとても感じました。まるで子どものように純粋な興味を持って、真摯にものづくりに向き合っていらっしゃる印象でした。そんなあなたが、クラフツマンシップの最高峰でもあるle19Mを初めて訪れたときの忘れられないエピソードを教えてください。きっととても興奮されて、喜びに満ちた瞬間だったのではないかと想像します。

初めてle19Mを訪れたときに印象的だったのは、数々のメゾンが一つ屋根の下に集まり、絶えず互いに交流しているという事実でした。それぞれのアトリエの個性はしっかりと感じられるのですが、同時にそれらがシナジーを生み出す可能性も感じられました。それが本当に素晴らしかったです。異なるアトリエ同士が、コレクティブかつ祝祭的な雰囲気で、特定のルックを共同制作するようなことをしてみたいと思わせてくれました。同時に、素晴らしい遊び場に足を踏み入れたような感覚もありました。まるでキャンディショップの中の子どもになった気分でした! 最初のインスピレーションから、職人たちはそれを育むための具体的な技術を探求し始め、最終的にはまったく新しいものが生まれました。le19Mが私にとって特別に魅力的なのは、実験的な創造ができる素晴らしい空間を提供してくれる点です

What struck me the first time I visited le19M was the fact that all these Maisons are gathered under one roof and constantly interacting with one another. You can feel the identity of each individual atelier, but also the sense of possibilities of synergies between them. That was truly remarkable. It made me want to have the different ateliers collaborate on certain looks, in a way that felt both collective and celebratory. At the same time, you have the sensation of stepping into an incredible playground. I felt like a kid in a candy shop! From my first inspirations they started exploring specific techniques that nurtured those ideas and we ended up with something different. For me that’s what makes le19M so exciting: it offers an incredible space for experimentation.

マチュー・ブレイジープロフィール画像
マチュー・ブレイジー

1984年パリ生まれ。2007年に ラ・カンブル・モードを卒業後、22歳でラフ シモンズのメンズ コレクション デザイナーとしてキャリアをスタート。2011年から2014年までメゾン マルタン マルジェラでウィメンズ プレタポルテとアーティザナル コレクションのデザインを担当。2021年から2024年までボッテガ・ヴェネタのクリエイティブ ディレクターを務め、2025年4月シャネルのファッション部門アーティスティック ディレクターに就任。