「トランスサタニアン」とはなにか?

水晶玉子さんと石井ゆかりさんの特別対談、2023年のテーマは、「トランスサタニアン」です。星占いの世界で、主に長期的な時代の動きを司る天体ですが、耳慣れない人も多いと思います。そこで以下、補足的に説明をしていただきました。解説は石井ゆかりさんです。

「トランスサタニアン」とは?

「トランスサタニアン」とはなにか?の画像_1

illustration: Asako Masunouchi ※イラストはイメージです。天体の実際の大きさや並びなどは表現していません

トランスサタニアンとは、「土星外天体」の意味で、通常は天王星海王星冥王星を指します。これらの天体は、星占いのシステムが成立した数千年前の時代にはまだ、発見されていませんでした。もともとの星占いのシステムは「肉眼で見える天体のみ」でできあがっていたのです。近代になって望遠鏡が発明され、天文学が発達した後、土星以遠の惑星が次々に発見されました。占星術家たちはこれを受けて、様々に議論を重ね、新たな天体の象徴世界を定義し、古い占星術のシステムに「導入」しました。

基本的に、3天体にはそれらが発見された時代を映し出すような象意を与えられています。たとえば天王星は「航空技術」を、第一次・第二次世界大戦の時代に発見された冥王星は「破壊と再生」を象徴しています。また、トランスサタニアンは「肉眼では見えない」星々なので、象意においても「意識に上りにくい」ものごとを示すと考えられています。

私たちの無意識、時代が抱いている集合的無意識、リアルタイムでは意識化しにくい時代精神のようなものが、トランスサタニアンの管轄です。「無意識」というものも、現代的な心理学の潮流の中で一般化された概念であり、ここにも時代的な「新しさ」が表れています。

ちなみに現代でも、伝統的な占星術を用いる占星術家の中には、トランスサタニアンを敢えて用いずに占う人々が存在します。トランスサタニアンはある意味「モダン」な存在なのです。

「トランスサタニアン」の注目したい動きについて

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illustration: Asako Masunouchi

上のチャート図は、水晶玉子さんと石井ゆかりさんの対談のなかに登場した、2023年から2026年にかけての「トランスサタニアン」の動きについて。詳細については、下にあるリンク先からチェックを。対談ページと照らしあわせて読むとより理解がしやすくなります。

冥王星:2023年3月23日、2008年から山羊座に入っていた冥王星が水瓶座へ移動。

海王星:魚座に滞在。3月7日、土星が海王星のいる魚座に入る。2025年3月30日、海王星は一旦牡羊座に入り、2026年5月23日に本格移動。

天王星:牡牛座に滞在。2026年4月26日、双子座に移動。


また、「トランスサタニアン」の3天体について知ることで、より対談ページを楽しむことができます。冥王星、海王星、天王星それぞれについても、石井さんが解説くださいました。

冥王星(Pluto/プルート)について

冥王星は1930年に発見された当初は「惑星」でしたが、2006年に「準惑星」となりました。今では多数存在する「冥王星型天体(プルートイド)」を象徴するような存在となっています。とはいえ星占いの世界では、冥王星はまだまだ「惑星」的に扱われ、ちゃんと活躍しています。

冥王星のキーワードは「破壊と再生」「根本的変容」「支配」「融合」「トランスフォーム」「性的欲望」「(非常に大きな)富」「地底に眠る鉱物(の価値)」「金融」「(象徴的な意味での)死」「没頭」「圧倒的な力」「隠された力(を暴く)」などです。これらはすべて「生命」の活動の根源にある、ごくプリミティブなパワーと関係があります。私たちは欲望し、新陳代謝を繰り返し、夜に眠り朝に復活します。また、冥王星の象徴世界は、「冥界」のイメージに多くを負っています。地面の下に隠されているけれども、実は私たちを支配し動かしている強力なパワーが、冥王星の象徴する世界なのです。

冥王星は「火星のハイアー・オクターブ」と言われることもあります。闘いと欲望の星・火星の、「一オクターブ上」のような存在なのです。冥王星も火星同様、「熱」を象徴します。たとえば、火星が火力発電なら、冥王星は原子力発電、といったイメージです。

冥王星が12星座を一周するのに248年ほどかかります。冥王星の軌道は他の星の軌道と比べ楕円の度合いが大きく、1つの星座に滞在する期間にはばらつきがあります。射手座付近でもっとも早く、牡羊座から双子座あたりではゆっくり動くように見えます。

冥王星は社会を支配するような大きな力を象徴します。ゆえに、冥王星が「動く」時、世の中を支配する力のシフトが起こる、というイメージがうかびます。重力や大気の存在を生活の中で実感することが難しいように、冥王星的な力も、リアルタイムではなかなか実感できないところがあります。大きな時代の波を乗り越え、過去を振り返ったとき、「あの時代、私たちは特殊な力に支配されていた」と考えるしかない部分もあるのだろうと思います。

海王星(Neptune/ネプチューン)について

海王星は、青く大きな氷の星です。星占いではその名の通り、海や水と結びつけられています。さらに「幻想」「夢」「宗教」「無意識」「救済」「悲しみ」「ガス」「オイル」「目に見えないもの」「音楽」「芸術」などが、海王星の管轄です。海王星ではダイヤモンドの雨が降るそうですが、海王星のイメージにぴったりの、美しい、どこか非現実的に思える現象だなと思います。もちろん、海王星の上ではそれが「現実」なのですが、私たちにとって手の届かない不思議な夢のような現象だという点で、「海王星的」なのです。形がないけれどもそこにあるもの、因果関係のハッキリしないこと、現実と非現実の境目にあるものなどが海王星の管轄下に置かれます。その一方で、非常に高い理想や誇り、名誉、殉教、自分へのこだわりの一切を捨てた、純粋な献身や救済なども海王星と結びつけられます。現実の中にある様々なしがらみや欲望から不思議な具合に解き放たれ、「本当に大切なこと」を見つめながら生きる。たとえばそうした生き方は、海王星的な生き方と言えそうです。

海王星は「意識しにくい星」です。この星が象徴することもまた、リアルタイムではわかりにくい部分があります。たとえば原因不明のこと、なぜそうなるのかわからないこと、利害関係では説明できないようなことについて、「海王星の位置」が理解のヒントをくれることもあるように思われます。

天王星(Uranus/ウラヌス)について

天王星のキーワードは、「変革」「革新」「革命」「独立」「新しい時代」「技術革新」「突然」「自由、解放」「エキセントリック」などです。古い世界のしきたりや伝統をぶち壊して新しいシステムを作り始めるとか、重力圏内から宇宙船で抜けだして旅に出るとか、そんな世界観の星です。天体自体、公転軌道に対して自転軸が横倒しになっており、土星のような「輪」が縦に回っているような、ユニークな姿をしています。

天王星は84年ほどで12星座を一周します。1つの星座に約7年とどまり、その間、何らかのテーマに関する「変革」を、継続的に促し続けます。この星が巡ってくるとたいてい、予想外の出来事が起こります。たとえば2011年、天王星が「始まりの星座」牡羊座に移動したその前日、日本では東日本大震災が起こりました。天王星のイングレス(移動のタイミング)は、日本では忘れ得ぬ原発事故の日として記憶されることになったのです。もちろん、天王星の星座移動の日に必ず大事故が起こるとか、そういうことではありません。ただ、天の星の動きと地上の出来事がこのように「照応」するとき、私たちはなぜか、心を強く揺さぶられ、そこに特別な意味を見いだそうとしてしまう生き物なのです。

天王星は新しい時代への手掛かり、古いシステムを打ち砕く破壊力を象徴します。この星が動くとき、私たちは「どの方向に向けて自由を探すか」を問いなおされるのかもしれません。

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