【人生100年時代のジュエリー vol.07】Dior(ディオール)

ヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌが作り出すディオールのファイン ジュエリー。独創性が際立つクリエーションの背景には、秘密がある。

50代で買うなら

裏表どちらから見ても美しい色石やパヴェダイヤモンドが華やか。

「ローズ デ ヴァン」ネックレス〈YG、ダイヤモンド、MOP、オニキス、マラカイト、ラピスラズリ、カーネリアン、ターコイズ、ピンクオパール〉¥3,630,000/クリスチャン ディオール(ディオール ファイン ジュエリー)

20代で買うなら

立体的な手書きのモチーフが、2本の指をやさしく包み込む、遊び心あるデザイン。文字の一部にあしらった2石のダイヤモンドが、控えめながら上質な輝きを演出する。

「ウィ」ダブルリング〈YG、ダイヤモンド〉¥242,000/クリスチャン ディオール(ディオール ファイン ジュエリー)

フリーハンドで描かれる、エモーショナルな輝きに心酔

岡部(以下O) 子どもの頃、雑誌で見かけたのが、ディオールのファイン ジュエリー。大きなアメシストに、色とりどりのラッカーで花などのモチーフを彩ったカクテルリングでした。今思い返すと、このときの衝撃がジュエリーに関心を持つきっかけでしたね。

本間(以下H) 幼い頃からディオールのファイン ジュエリーに興味を持つなんて、早熟! ヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌのクリエーションには、ほかにはないエキセントリックな魅力がありますね。

 前衛的でありながら、品格も携えている。貴族のルーツを持つバックボーンが、ユニークな感性を育んだのでしょうか。

 それもひとつの理由でしょうが、彼女はもともとファイン ジュエリーではなく、コスチュームジュエリーのデザイナーであったことが大きく関係しているように思います。

 なるほど。だからこそ自由なイマジネーションを具象化できるんですね。

 制作プロセスを見ても、いわゆる伝統的なジュエリーメイキングとはまったく違う。岡部さんが選んだ「ウィ」はその最たるもの。

 このコレクションは、ヴィクトワールが付箋に手で書いた文字をそのままモチーフにしているんですよね。

 ネオンサインのようなスタイルのジュエリーは昔から定番ですが、ヴィクトワールが手がけると、さすがに洗練されている。繊細でありながら、モダンな印象が際立ちます。

 エモーショナルなメッセージが込められているのも素敵。愛の言葉「ジュテーム」と綴られたダブルフィンガーリングなんて、ロマンティック。そんな「ウィ」とはうってかわって、本間さんが選んだ「ローズ デ ヴァン」は幾何学的なモチーフが特徴です。

 2015年にデビューした「ローズ デ ヴァン」。ムッシュ ディオールが幼少期を過ごしたグランヴィルの邸宅の庭に、モザイクで描かれたウィンド ローズ(風配図)を模したメダイヨンが主役。ストーンの周囲に施したビーズ装飾や、パヴェダイヤモンドのセッティングも美しく、細部にもこだわっています。

 風向きだけでなく、人生の指針も示してくれそう。まさに風の時代にぴったり。

 おっしゃるとおり。私自身、昔からジュエリーには何か願いを込めて身につけることが多い。デイリーに使えるお守りジュエリーは、世代を問わず魅力的に映るはずです。

 素材のバリエーションも豊富でどれも欲しくなり、迷ってしまいます!(笑)

Profile

本間恵子

時計・ジュエリー専門ジャーナリスト。ジュエリーデザイナーという経歴に基づく鋭い目利きと、圧倒的な知識を武器に、メディアでの執筆やテレビ出演など幅広く活躍するエキスパート。

岡部駿佑

美しいものをこよなく愛するエディター。専門分野はランウェイとジュエリー&ウォッチ。SPUR.JPでのYouTube連載も好評。デジタルとプリントを横断して活動。

※この特集中、以下の表記は略号になります。YG(イエローゴールド)、MOP(マザー・オブ・パール)

SOURCE:SPUR 2021年10月号「人生100年時代のジュエリー」
photography:Masanori Akao〈whiteSTOUT〉 styling:Lisa Sato〈bNm〉 text:Shunsuke Okabe

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