トゥモローランドのバイヤーとして世界を巡りながら、休日は陶芸で土と向き合う山野邉彩美さん。相反するふたつの時間を行き来する彼女が、日常に寄り添う香りとして選んできたのは、日本を感じさせるウッディな香りだ。愛用香水とともに、香りとの向き合い方、そして“自分らしさ”を保つための選択を聞いた。

おしゃれな人はなぜ“いい香り”? センスあふれるバイヤーが愛用する香水と香りの遍歴|山野邉彩美さん

トゥモローランドのバイヤーとして世界を巡りながら、休日は陶芸で土と向き合う山野邉彩美さん。相反するふたつの時間を行き来する彼女が、日常に寄り添う香りとして選んできたのは、日本を感じさせるウッディな香りだ。愛用香水とともに、香りとの向き合い方、そして“自分らしさ”を保つための選択を聞いた。

INDEX
山野邉 彩美さんプロフィール画像
トゥモローランド バイヤー山野邉 彩美さん

埼玉県出身。大学卒業後にトゥモローランド入社。販売を経験した後、バイヤーとして買付を担当。2018年から陶芸を始め、現在では個展を開くなど精力的に活動。

山野邉さんの「香り」の選択|“和”を感じる香りが、日常の軸となる

トゥモローランド バイヤー山野邉彩美さんのおしゃれな全身コーデ

山野邉さんが着用しているシャツは、オランダのハンドメイドブランド「ジュープ バイ ジャッキー」。一度いいと思ったものは、とことん着る性格。素材が持つ温かみや質感が好きで、ファッションでも香水でも、作り手のルーツから探るのだそう。

山野邉さんが3年以上愛用しているという香水は、サノマ『1-24 鈴虫』。サノマとは、元証券マンという異色の経歴を持つ渡辺裕太氏と、フランスのトップパフューマー ジャン=ミッシェル・デュリエ氏のタッグによって2020年に誕生した、日本人のためのフレグランスブランドだ。

懐かしさ感じる、日本の夏の終わりを描いたサノマの『1-24 鈴虫』

トゥモローランド バイヤー山野邉彩美さんの愛用香水はサノマの『1-24 鈴虫』

湿度の高い夏の終わり、ほんの一瞬だけ吹き抜ける空気の変化。その感覚を香りに落とし込んだのが、『1-24 鈴虫』だ。湿度を感じさせるウッディをベースに、熱気をサフラン、冷たい風をカルダモンで描いている。

「サノマの『1-24 鈴虫』はすでに2本目。この香りは、日本の夏の終わりの刹那の瞬間を表現しています。ブランドディレクターの渡辺さんは本がお好きで、とても文才がある方なんです。香水を作る際の表現を聞いているだけで、情景が目に浮かんでくるんですよ」

大切なシーンで、心をほぐしながらも自信をまとえる香り

山野邉さんの愛用香水はサノマの『1-24 鈴虫』は仕事のシーンでつける

香りは、肌にまとうことで完成するものだと山野邉さんは言う。「香りに自分の体温が合わさると、より一層まろやかに感じるんですよね」

昔から日本では、相手との距離感を表す言葉として“間合い”を使うが、山野邉さんにとって香りとは、“間合い”を大事にする心強い味方だという。「人の前に出てプレゼンをしないといけないときや、とにかく気持ちを落ち着かせたいとき。ひと吹きすると、焦って高ぶる心を、穏やかにしてくれる効力があるように感じられます」

自然を感じる香りで静寂をまとう、パフューマー・エイチの『レイン ウッド』

静寂をまとう感覚、パフューマー・エイチの「レイン ウッド」

雨上がりの空気に、木々の湿度が残る。ガルバナムとエレミに、ペッパーとミルラが溶け合う。最後は湿り気のあるウッディベースにパチュリの葉を重ねて。

パフューマー・エイチは、英国の調香師リン・ハリスが体験した季節や自然、そしてふとした瞬間の光景をもとに作られたフレグランスブランドだ。山野邉さんは2020年のロンドン滞在時に、偶然にもふらっと店に入って出合ったのが『レイン ウッド』だったそう。

「生活に根付いた、自然な香りが好きなんです。何も考えずにリラックスしたいときは、『レイン ウッド』をまといます。私にとって、これは“静寂”の香り。土が濡れたようなニュアンスや、雨の余韻が感じられます」

仕事中のリフレッシュは、柑橘が香るビョークアンドベリーズの『セプテンバー』

仕事のデスクに常備してあるビョークアンドベリーズの『セプテンバー』

スウェーデンのブランド・ビョークアンドベリーズで人気のトラベルセットのステンレスケース。中身を自由に替えられ、持ち運びにも便利。

昨年、スウェーデンを訪れた際に知ったビョークアンドベリーズ。山野邉さんは環境先進国ならではのデザインや、持続可能なものを作り出す姿勢に惹かれたそう。

「このブランドはフローラル系の華やかな香りが得意なのですが、唯一『セプテンバー』はウッディでアロマティック。トップにはさわやかな柑橘が弾けます。ランチ後デスクに戻ったら、頭上からひと吹きして、仕事モードに切り替え。北欧らしい赤をポイントにしたデザインも好きですね」

人生のステージごとに変わる、山野邉さんの「香水遍歴」

とにかく流行りの香水をまといたかったティーンエイジの頃から、ファッション業界に足を踏み入れた20代、そして30代の今。山野邉さんが愛用してきた香水をプレイバック。

中学生で買った初めての香水は、スウィートな香り

「“おしゃれな人のカバンの中を拝見”という雑誌の記事を見て、載っていたハート型の香水を買いに行きました。アプリコットやピーチなどの甘い香りにワクワクしたのを今でも覚えています」

20代は、バイトの先輩に教えてもらったバイレードが定番

「大学生時代にファッション業界へ。先輩に教えてもらったバイレードの名香『ブランシュ』『ジプシーウォーター』などを長く愛用していました」

30代に入り、自然を感じるサンダルウッドを求めるように

「20代後半で陶芸を始めてから、土と向き合うように。次第に、土や木などの自然の香りに魅せられ、いつの間にかウッド系の香りを求めるようになりました」

“静”と“動”のライフスタイルと、香りとの付き合い方

バイヤーの仕事では、年に数回、数週間単位で海外に出張。その一方、バイヤーの仕事が休みである週末は、アトリエで作品作りに勤しむ。静と動、両極端な生活を送る中で、山野邉さんの香りに対するこだわりを聞いた。

“今”に集中する至福の時間、陶芸中は香りを遮断

陶芸作家としても活躍する山野邉彩美さんの作品は、色使いが特徴

独特の色使いが特徴的な山野邉さんの作品。現在は全国で個展を開くなど、陶芸作家として活躍の幅を広げている。

10代の頃から料理が好きだったという山野邉さん。次第にお皿も自らで作りたい、という気持ちが芽生えていった。それから8年。今では、都内にアトリエを構えるほどの腕前に。

「土の匂いを嗅ぎながら手さきに集中しているので、陶芸中は香りをつけません。地球に存在する素材を火にかけて、形を形成していくという作陶の工程が、少し香水の調香にも似ているなと思うんです」

出張に欠かせない3種の神器は「梅干し、お味噌汁、お香」

山野邉彩美さんの愛用お香はKITOWAの「インセンススティック サンダルウッド」

出張中、フルスケジュールの一日を終えた夜は、KITOWAの「インセンススティック サンダルウッド」を焚いてストレッチするのが日課だそう。「この儀式を行うとぐっすり眠れて、翌日も仕事がはかどります」

3カ月に一度は買い付けで、世界中を飛び回っている山野邉さん。現地では1時間ごとのアポイントがあり、1日に何件も回ってホテルに戻ると疲労困憊。だからこそ、海外でも毎日の習慣を欠かさないのだそう。

「梅干し、お味噌汁、そしてホテルを自分の空間にするためのお香やパロサント(香りを放つ香木)は絶対に持って行きます。仕事を終えてから、湯舟に浸かって、ストレッチする際にはお香を焚く。そうやって自分の時間を取り戻すようにしています」

目に見えなくとも、その人の時間や価値観を雄弁に語る、香り。山野邉さんが選ぶのは、作り手の哲学が見えて、日常に寄り添う香りだ。背景のストーリーにも愛おしさを感じる香りを、ぜひ見つけて。

FEATURE