A&Sでのジュエリーフェアのアイテムの中でも特に心を奪われてしまったのが、「チチェック(「花」の意)」と名付けられたホワイトゴールドのピアス。ぷっくりとした三日月型のフォルムの全面に、唐草模様が彫り込まれている。ひとつひとつが手彫りというから、感動はひとしお。角度を変えるたびにキラキラとまたたくのは、小粒のダイヤモンドが随所にセットされているから。幅2cmにも満たない世界に広がる、優美な小宇宙。再びオンラインショップで画面越しに見ても、じつに眼福です。異国情緒あふれる意匠に、まだ見ぬモスクの天井に広がる美しさを重ね合わせてみる。ただ見つめているだけで、おまじないにかかったような気分になった。
地金の表面にはロジウムメッキが施されておらず、ホワイトゴールド本来のスモーキーな色味が引き立つ。発光力のあるファンデーションでメイクアップしたような凛とした輝きももちろん素敵なのだが、控えめで媚びない素顔にもマチュアな気品が宿る。一見ずっしりと重みがありそうだが、中は空洞になっているので意外にもつけ心地は軽やかだとか。このうれしい裏切りがまたニクイ。日本の宝飾技術に裏打ちされた力強さと、どんなオケージョンにもフィットするやわらかさを持ち合わせた稀有な一品。お互いのささやかな表情の変化を分かち合いながら、共に時を重ねてゆきたい。