ジュエリーデザイナーの頭の中。bororoとhumが描くものづくり

人気ジュエリーブランド、bororoとhumのディレクター&デザイナーにインタビュー。それぞれの創作の源泉やものづくりへの哲学、そしてジュエリーに託す思いを聞いた。

人気ジュエリーブランド、bororoとhumのディレクター&デザイナーにインタビュー。それぞれの創作の源泉やものづくりへの哲学、そしてジュエリーに託す思いを聞いた。

INDEX

鉱山で出合った石の個性を、 肌にのせるように届けたい

アクアマリンの原石

アクアマリンの原石たち。採取された形を生かした「ラフストーンシリーズ」などに使用される

ディレクターの赤地明子さんの手によって生み出されるbororoのジュエリーは、石を飾り立てるというより、石そのものを魅せる感覚に近い。

「私は、石を肌にのせる“感覚”重視のジュエリーを作りたいんです。パーツはできるだけ繊細にして、デザインもそぎ落とす。石が主役に見えることを一番大切にしています」

bororoのリング

鉱物の個性に合わせてカットしたリングがずらりと並ぶ

IT企業で働いていた赤地さんは休業をきっかけに、幼い頃から憧れていた宝石の道へ。ニューヨークに留学しGIA(米国宝石学会)で宝石学を学び、世界各地の鉱山を巡るようになった。

「GIAでお世話になった先生に“石は人間の指紋と同じくらい全部違う”って言われて、本当にその通りだなって思ったんです。同じ名前の石でも、色も内包物も光の入り方も全部違う。だから石を見ていると、ひとつひとつに個性があるんですよね。買いつけの際はツールも使いますが、最終的には直感が頼り。説明が難しいんですけど、最後は自分の感覚にひっかかるかどうかを見ています。古着の買いつけに近い感覚かもしれませんね。最初は選ぶのに時間がかかっていたけれど、今は自分の軸に響くものを選べるようになってきました」

bororoのディレクター

石を紹介する赤地さん

今年5月にオープンしたばかりの旗艦店では、その感覚を空間でも表現しているという。

「ジュエリーではなく、その土地の空気ごと届けたいと思ったんです。去年マダガスカルの鉱山に行ったときに、持って帰ってきた鉱物や岩を粉砕して香りを抽出し、店舗のフレグランスを作りました。什器もオリジナルで、石が内側から発光しているように見える照明に。無意識のうちに石に没入できる空間になったらいいなと思います」

店頭での接客によって、ジュエリーに宿る個人の物語も、より強く感じるようになったという。

bororoのミルキークォーツのリング

太陽光の下で見ると石の中に光がたまって輝くミルキークォーツ

「お客さまは、ただ華やかになりたくて選ぶだけではないんですよね。ご自身や大切な方への節目のお祝いをはじめとした、人生の貴重なタイミングで迎えてくださる方が多いです。流行というより、そのときの感情や記憶が宿るものなんだと感じます」

石を探し、選び、その個性を見つめ続ける赤地さん。そのまなざしの先には、ジュエリーを超えて、誰かの人生に寄り添う存在が見えている。

赤地明子さんプロフィール画像
bororo ディレクター赤地明子さん

ニューヨークにて宝石学を学んだ後、美しい石を求めて世界中を旅する。コロンビア、ブラジル、ドイツ、タンザニア、スリランカ、タイなど世界各地の宝石産地や市場に独自のコネクションを持つ。

INFORMATION

NEW OPEN!

bororo Aoyama

INFORMATIONの画像_5

南青山にオープンした旗艦店。全コレクションを見られるほか、これまで大切に集めてきたスペシャルピースで仕立てた一点もののジュエリーも。

●東京都港区南青山5の3の10 フロムファーストビル207
☎03-3527-9015
◯営11時〜19時 ◯休木曜

ニ拠点での創作が導く、 余白のあるものづくり

ハムのジュエリー

手持ちの大切なジュエリーを、デザイナーや職人とともに新たな形にする「リモデル」

ハムのジュエリーには、強さがありながら静かな余白がある。デザイナーの稲沼由香さんは京都と東京を行き来しながらブランドを手がけている。8年前に移住を決めた理由とは?

「10年間東京で駆け抜けてきたので、一度少し離れた場所から見てみたいと思ったんです。自分が一人でいてもおかしくない街はどこだろうと考えて、最終的に京都を選びました」

職人の貞清智宏さん

共同代表で職人の貞清智宏さん

京都での暮らしは、デザインへの向き合い方にも変化をもたらした。

「見上げると山があって、少し歩くと川が流れている。四季を感じられる自然に触れることで、有機的なフォルムから着想を得たりするようになりました。そしてお寺や骨董店など、身近に古くて美しい場所がたくさんあることにも、刺激をもらえていますね。流行にとらわれない、色褪せない魅力をどうジュエリーに込めるか。ここにいると、その考えをより大事にすることができる気がします」

ハムのショップに併設されたショップ

デザイナー自身が彫金教室でジュエリー制作の楽しさを知ったことから、ハムのショップには教室を併設

稲沼さんが歴史あるものに惹かれるようになったのは、海外でアンティークジュエリーに触れた経験も大きい。

ジュエリーデザイナーの頭の中。bororの画像_9

都市鉱山から回収され、精錬を経てピュアになった貴金属を用いた「リファイン メタル コレクション」

「2010年頃からヨーロッパの展示会に参加するようになって、アンティークを目にする機会が増えました。ジュエリーの起源をより身近に感じるようになり、職人による素晴らしい技術を目の当たりにしました。手仕事だからこそかなう緻密な表現や彫金技術の精緻さは、ハムのものづくりにも表れています。細かなディテールも大切だけれど、デザインは机に向かって描くというよりは、感覚で出てくることが多いです。ラフなイメージを描いて、それに対して職人と、どう留めるか、どう地金を使うかをディスカッションする。そこから幅を1㎜、時には0.1㎜単位で調整していきます」

ハムのジュエリー

自身のお気に入りのジュエリーを身につけた稲沼さん

現在、稲沼さんがさらに膨らませたいと考えているのは、身につける人と一緒に作るジュエリーだ。

「ハムのジュエリーは、お客さまのご要望をお伺いしながら一緒に作り上げていくビスポークなんです。現在も取り組んでいますが、さらに力を入れていきたいですね。受け継がれてきた想いを大切にしながら、職人の手仕事によって新たな形へと生まれ変わらせる“リモデル”もあります。これからも作る人、買う人、身につける人が見えていることを大切にしたいです」

稲沼由香さんプロフィール画像
hum デザイナー稲沼由香さん

小学生から続けていた新体操を怪我で引退後、彫金教室がきっかけでジュエリーの世界へ。貞清智宏さんとともに、2004年にハムをローンチ。現在は、京都と東京の二拠点で活動している。

INFORMATION

hum

INFORMATIONの画像_11

アトリエ、ショップ、彫金教室が共存する唯一無二の空間。事前にヒアリングが必要な「リモデル」のオーダーは要予約。

●東京都渋谷区神宮前2の31の7 Villa Gloria1F
☎03-6434-5586
◯営10時〜19時、10時〜20時(金・土) 不定休