被爆者の子どもとして生まれた人たちのことを「被爆二世」という。親の被爆体験を語り継ぐ担い手として期待されることが多い一方、彼らが経験してきた苦しみや葛藤、差別については深く知られていない。被爆二世は、原爆の被害者なのか。なぜ「触れるのが難しいテーマ」だといわれるのか。今年の夏に集英社新書から刊行された『ルポ 被爆二世』の著者であり、ジャーナリストの小山美砂さんに話を聞いた。
被爆者の子どもとして生まれた人たちのことを「被爆二世」という。親の被爆体験を語り継ぐ担い手として期待されることが多い一方、彼らが経験してきた苦しみや葛藤、差別については深く知られていない。被爆二世は、原爆の被害者なのか。なぜ「触れるのが難しいテーマ」だといわれるのか。今年の夏に集英社新書から刊行された『ルポ 被爆二世』の著者であり、ジャーナリストの小山美砂さんに話を聞いた。
科学的な解明よりも、当事者の悩みや人生に目を向ける
誰かが書かなければ、なかったことになる。多くの被爆二世と向き合ってきた小山さんのなかには、次第に焦りにも似た感情が芽生えていった。
「90代の被爆者の男性が、自分に孫がいない理由を家族に聞いたところ、息子夫婦が子どもをつくらない約束をしていたことがわかったと、泣きながら話してくださったことがありました。被爆者や被爆二世に対する偏見や差別は、そういったかたちでいまだに彼らを苦しめています。これまで、遺伝的影響の有無という科学論争ばかりが繰り返され、当事者の悩みや人生には目を向けられてきませんでした。だからこそ、絶対に書く必要があると思いました」
『ルポ 被爆二世』には、壮絶な被爆体験の後も続いていく人生のなかで、焦点が当てられなかった記憶の数々が紡がれている。刊行後の反響は大きく、小山さんのもとには長文の感想が何通も寄せられている。
「今まで明かせなかった経験を打ち明けてくださる被爆二世の方が多く、埋もれてきた痛みがこんなにあるのかと驚いています。たとえば、自分が二世として生まれてきたことを受け入れられず、原爆の歴史と勝手に紐付けられることが腑に落ちないという話や、自分のきょうだいが早くに病気で亡くなったことを、どう受け止めていいか今もずっと悩んでいるという話など、自分の記憶を掘り下げて書いてくださっている印象があります。核兵器は、世代を超えて人びとを痛め続けていることを思い知らされます」
商品名
:
小山美砂『ルポ 被爆二世』(集英社新書)
価格
:
¥1,111
1994年、大阪市生まれ。毎日新聞記者を経て、2023年からフリーに。広島原爆投下後に降った「黒い雨」の被害を記録した『「黒い雨」訴訟』(集英社新書)で第66回JCJ(日本ジャーナリスト会議)賞受賞。旧ソ連(現カザフスタン)にあるセミバラチンスク核実験場を訪れるなど、核被害をテーマに取材を続けている。


