2020.12.12

“目に見えない生理”PMSやPMDDに悩む女性たち【インタビュー vol.2】

生理痛は知っていても、PMSという言葉を聞いたことはありますか。Premenstrual Syndrome の略でPMSと呼ばれ、月経前症候群と言われています。生理前の3~10日ぐらい前から始まり、生理になると消失していく、身体と心の不調です。ホルモンバランスが変わるため、イライラや気分の落ち込み、倦怠感、眠気、頭痛、吐き気、食欲倍増、胸のハリ、むくみ、ニキビなど症状は様々です。

中でも、PMDDはPremenstrual Dysphoric Disorder、日本語では月経前不快気分障害と呼ばれ、精神面の症状をさしています。生理痛よりも理解されにくい“目に見えない生理”PMS&PMDD”とは何か、周囲に求められるサポートとは。リアルな声を届けます。

生理前のイライラでパートナー、家族とトラブル

都内のスタートアップで働くSさん(仮名、27歳)は振り返ってみると、パートナーと毎月喧嘩をしていたそう。その要因となっているのがPMS(PMDD)だと判明したのは、同棲して1年が過ぎた頃にパートナーから言われた「毎月このくらいのタイミングで喧嘩しているよね?」という一言。ハッとして日記を見返してみると、毎回、生理開始数日前。「折半している家賃の振り込みが遅れた時に『また遅れたよね?』と言ってしまって、『またって何?はじめてじゃん』と返され大喧嘩になったこともありました」と振り返る。PMS(PMDD)の時はイライラして普段なら使わない表現や衝動的な発言、また小さなことにも過剰に反応してしまうし、大袈裟に捉えてしまうことがあると言われています。

同棲して2年が過ぎた今は、アプリで生理のタイミングを把握し、パートナーとその時期を共有。「もうすぐ生理前だから少しイライラするかも」と予め伝えることで、PMSが原因の喧嘩を回避できているそう。

また、実家に暮らすバレエダンサーのFさん(仮名、22歳)がPMSに悩み始めたのは18歳の頃。自分のPMSと母親の更年期が重なったためか、生理前に毎月のように口論を繰り返すように。最近まで症状が酷かったものの、コロナ禍で自宅に篭り、時間に余裕ができて規則正しい生活をしていたら、イライラする事が少なくなったとか。

SPUR.JPの生理に関するアンケートでも、PMSに悩むことがあると46%の人が回答。中でもいちばん多かった悩みがイライラ。そして、パートナーや家族など、関係性が近い人に不機嫌な態度をとってしまうというコメントが多数。PMS(PMDD)はまわりの人も巻き込むことなので、女性だけ、本人だけの問題ではないのです。

読者2,681人に対して行った、生理についての悩みに関するアンケート結果
読者2,681人に対して行った、生理についての悩みに関するアンケート結果

アンケートの中で、PMS(月経前症候群)でいちばん辛い症状として挙げられたのがこちら
アンケートの中で、PMS(月経前症候群)でいちばん辛い症状として挙げられたのがこちら

PMSと生理痛を合わせたら月の半分は不調

PMSの症状がひどいというTさん(仮名、27歳)も、PMSの症状が出るのはプライベートな時間に偏ってしまう」と言います。「とはいえ、仕事に全く影響がないかといえばそうではありません。月に一度の生理期間とその1週間前からくるPMSを合わせたら、月の約半分は万全の体調でいられないことになります」。生涯生理日数は約6年9ケ月といわれる近年、となれば約6年9ケ月はPMSもあることに。あわせると、約13年6ケ月。決して短い時間ではないその年月をできるだけ、アプリなどのフェムテックアイテムを使ったり、ドクターに相談しながら、症状を緩和して過ごしていきたいという思いは強まります。

鬱病と誤診、PMSを知る重要さを実感!

PMSの存在を知らなかったがゆえに、悩み解消まで遠回りしてしまったケースもあります。マネジメントの仕事をしているOさん(仮名、28歳)が眠気、倦怠感に最も悩まされていたのは24歳の頃。「身体は元気なはずなのに、だるくて動けず1日寝込んでしまったり、仕事もままならない状態でした。当時、思いつく症状をインターネットで検索したら鬱病と出てきたため、心療内科に行くと、診断結果はそのまま鬱病。薬が処方されました」。

Oさんは、薬の副作用と戦いながら「これで良くなる」と信じて3ヶ月は通院を続けたそう。「その後SNSでPMSを知り、婦人科に変更し、すぐに低用量ピルを処方してもらいました。スタートして1ヶ月は副作用の吐き気が辛かったけれど、落ち着いてからは症状も嘘のように軽くなって、『なんでもっと早く婦人科に行かなかったんだろう!』と思いました」と悔しさ混じりに語ります。

この経験をもとに、同じような症状で苦しんでいる近しい友人がいたら「PMSって知ってる?」と声をかけているのだとか。「自分はPMSを知らずに遠回りをしてしまったので、そういう間違いをする人を増やしたくない。今思えば小学校や中学校の生理教育の時に知りたかった知識。また、その時に男女別ではなく、一緒に授業を受けていたら、生理やPMS、PMDDに対する認知や理解がさらに広まるのかなとも思います」。

低用量ピルの値段の壁

一方、エンジニアのMさん(仮名、21歳)は母親が看護師ということもあり早いうちからPMSの存在は知っていたそう。「イライラを抑えられなくて些細なことで恋人にあたっていた、高校2年の頃。定期的にくるイライラ=PMDDだと気がついていました。PMS(PMDD)の症状が緩和されるうえ、生理痛も軽減されると聞き、低用量ピルを使ってみたかったのですが、高校生にとって月に3000円近くの出費はなかなか高く、買えませんでした」というケースも。

まわりの人とともにPMS&PMMDの存在を知り、語り合う

生理を取り巻く環境をよりクリアにし、社会全体でこの問題に向き合っていくためには、何より知ることが大切です。PMSやPMDDは表面化しづらく、よりパーソナルな悩みなので、自分の辛さでも他人の異変でも「いつものこと」と流す前に、少し立ち止まって自分自身の身体や心の変化を観察してください。そして、もし家族やパートナーがPMSやPMDDで悩んでいると感じたら、「辛そうだけれど、何かできることある?」、「話を聞くことだけでもすっきりするかもしれないから、話してみて」など、声をかけてみることからはじめてみませんか?

photography:Chisato Hikita

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