最新【海外フェムテック】開発者の声とともに紹介!「目の不自由な人のための月経管理サポートデバイス」「早産リスクを検知するナプキン」など。

フェムテック分野の進化が凄まじい。目の不自由な人の生理をサポートするデバイス、早産リスクを検知するナプキンなど、あっと驚くプロダクトが世界中で生まれている。先日行われた「Femtech Fes!」には「これ欲しい!」「すごいアイデア!」と思える最新のフェムテック製品がずらり並んだ。その中から厳選した6アイテムを、起業家の皆さんの熱い想いとともにご紹介。まだまだ女性の潜在的健康課題は無数に存在する。新しいフェムテックに触れて一緒に盛り上げていこう。
(注)記事内でご紹介している製品は開発中のものと海外で販売中のもの

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ゲートの先に、国内外の最新フェムテック製品がずらりと並ぶ

【生理】様々な人が、より快適に過ごすために

【FlowSense(フロウセンス)/イギリス】目の不自由な人の月経の課題解決をサポート

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フロウセンスのプロダクト。試験紙をセットした左側のデバイスをナプキンや下着に当てることで、生理かどうかを判断する

「目の不自由な人はおりものと経血を区別するのが難しく、生理が突然来ることや衣服が汚れることへの恐怖感が大きくなる傾向にあります。家族に下着をチェックしてもらう人もいて、プライバシーが守られていないのです。突然訪れる生理に不安があるという理由だけで、低用量ピルを服用し生理をコントロールしている人もいます」と開発者のムナ・ダウドさん。

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開発者のムナ・ダウドさん

『フロウセンス』は、目の不自由な人のハイジーン(衛生)の悩みに寄り添うデバイス。使い捨ての試験紙をセットしたデバイスを生理用ナプキンや下着にあてると、pHセンサーとカラーセンサーでWチェックしバイブレーションが鳴る仕組み。バイブレーション1回で腟分泌物、3回で経血とシグナルが出ることで、生理かどうかを判断することができる。また結果をデバイスに連動したアプリに記録していくことで、次の生理日予測が可能。開発中、ムナさんは「このようなアイテムがあれば人生が変わる」という当事者の声を幾度となく聞いてきたという。「安価に入手しやすいpH試験紙を利用している。手に入れやすい価格で提供したい」と2025年の発売を目指している。

【Pads on a Roll(パッズ オンアロール)/アメリカ】みんなの生理を平等に! トイレットペーパー型ナプキン

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実際にトイレットペーパーのように引き出したナプキン。一枚ずつ切り離して使用する

トイレットペーパーを持ち運ぶ人はいないのに、なぜ生理用ナプキンはトイレにないの?という、当然といえば当然の疑問に気づかせてくれるプロダクトがこちら。『パッズ オンアロール』はトイレの個室で生理用ナプキンを提供できるようにしたロール型ナプキン。

「アメリカの統計では、女子生徒の23%が生理用品を買うお金を工面するのに苦労している。生理中のために学校に行けなかったり、勉強についていけなくなったりしている生徒も多いのです。それを受け今では20を上回る州で、学校では生理用品を無料で使えるようにすることを義務づける法律ができました。『パッズ オンアロール』は生理の平等化を実現するアイテム。公共スペースにも拡大しつつあります」とCEOのペネロピー・フィニーさん。

『パッズ オンアロール』は補充が簡単で1ロールで40枚分。幅を均一にするために羽はついていないが、薄くて吸収力が高く4時間〜5時間は持つという。年間コストは女子生徒一人に対し年間5ドル程度。トイレットペーパー予算の10%で済むというのも驚き。現在、環境に優しい素材での改良を進めているそう。

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CEOのペネロピー・フィニーさん

外出先で困った!という経験はよくあることで、突然生理だとわかった時にトイレから出たり、ナプキンを買いに出たりしたい人はいない。日本でも学校や駅、空港をはじめとした公共トイレなどに設置してくれたら助かるという女性は大勢いるはず。

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【Cozy Leaf(コージーリーフ)/韓国】もう手を汚さない。装着したまま経血を抜ける月経カップ

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カップもヒモも全て一体型の、シームレスな構造

コージーリーフの月経カップは、考案者であるイ・ソヨンさん自身の体験とアイデアから生まれたアイテム。月経カップはナプキンよりも長時間使用が可能で、ニオイやモレの心配が少なく繰り返し使えるなどのメリットがある。一方で「5〜6年前から月経カップを愛用していますが、カップの出し入れをもっと簡単にできたらいいなと。それにカップを取り出す際に、経血で手が汚れてしまうのが困るなと感じていたのです」と、ソヨンさん。

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考案者のイ・ソヨンさん

月経カップをより快適に使いやすくするため、カップの内側に医療用シリコンの本体と一体型になったシリコンのヒモを配置。ヒモを斜めに引っ張ることで装着したまま経血だけを抜くことができる仕組みにした。先に経血を出してからカップを取り出すようにすれば手が汚れにくい。外出時にはカップを出し入れするストレスも減らせそう。現在行なっているユーザー試験を経て、今秋以降日本での販売も目指す。韓国のKFDA承認済。

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【妊娠・出産】妊娠中の不安を可視化し、備える

【Smart Pad(スマートパッド)/スイス】自宅にいながら早産リスクをモニターするナプキン

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ナプキンの中にテクノロジーが詰まった、スマートパッド(www.ReaDiagnostics.com)

世界で生まれてくる赤ちゃんの10%は早産であり、早産は子どもの死因の第1位※1。命が助かっても早産で生まれた子は健康上の影響が残る可能性がある。にもかかわらず、これまで、妊婦が早産のリスクが高まっているかどうかを自身でチェックする手立てはなかった。

スイスのレア ダイアグノスティックス社が開発中の『スマートパッド』は、自宅にいながら早産リク区の検知を可能にするアイテム。センサー内蔵のナプキンをつけるだけで、おりものに含まれるバイオマーカーから早産の可能性を検知してアプリでお知らせ。さらに担当医にも知らせてくれる優れモノ。「早産の予防は先進国、後進国に限らず周産期医療の大きな課題※2。高齢出産、多胎児妊娠、糖尿病、高血圧、早産の既往などを持つ早産リスクの高い妊婦に使用してもらうことで、医師がより迅速に医療措置を行えるようになります。より多くの赤ちゃんの命を救いたい。3年以内のリリースを目指しています」とCEOのルーリア・カッサムさん。

※1 参考資料:公益社団法人 日本WHO協会「世界の赤ちゃんの 10 人に 1 人が早産 ; 健康と生存に大きな影響」
※2
 早産とは、日本では妊娠22週0日から妊娠36週6日までの分娩のこと。早産で生まれてくる赤ちゃんは病気や発達上のリスクが高いと言われており、死亡率も高くなる。ただし日本の周産期医療は最も安全なレベルの周産期体制を提供できているため、早産率や周産期死亡率は世界で最も低い水準を保っている
参考資料:日本産婦人科学会「早産・切迫早産」、公益社団法人 日本WHO協会「世界の赤ちゃんの 10 人に 1 人が早産 ; 健康と生存に大きな影響」、富山大学産婦人科 米田徳子氏 教育講演3「早産児の後遺症なき生存を目指して」
 

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左から、CTOのエリック・ガルシア・コルデロさん、CEOのルーリア・カッサムさん

日本にも自宅で妊婦の状態を遠隔でモニタリングする分娩監視装置はすでにあるが、いまやナプキンで早産リスクを検知できる時代に。一般に妊婦の年齢が高くなると妊娠や出産に伴うリスクが高くなっていくため、高齢出産が増えている日本にもニーズはありそう。


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【更年期症状】気になる症状は、日常の中で対策する

【Embr Wave 2(エンバー ウェーブ2)/アメリカ】手元で温度調節。更年期のホットフラッシュ対策に

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まるでスマートウォッチかのような、日常に溶け込みやすいデザイン

昨今目立つのが更年期の健康問題にスポットを当てた〝メノテック市場〟の盛り上がり。

更年期女性の代表的な悩みの一つ「ホットフラッシュ」は、気温が高くもないのに自分だけ汗が止まらなくなったり、急に顔だけカーッと熱くなったり……。「外出先や人前で恥ずかしい思いをした」「まわりの人に知られたくない」など、深刻な悩みにつながることも少なくない。

そんな更年期世代の強い味方になりそうな腕時計型のデバイスが『エンバー ウェーブ2』。ボタンを押すだけで、本体部分がすぐに冷却を開始。手首の内側に冷感・温感刺激を伝えることで快適な体感温度に整えてくれる。しかもこのデバイス、冷やすだけでなく温めることもできるので、日常生活で感じる様々な温度ストレスに対応。スポーツ時やリラックスしたいとき、睡眠の改善にも役立つという。専用アプリと連動すれば、冷感と温感の使い分けや時間調節も可能。コンフォート、ホットフラッシュ、スリープ、ストレスといった4つの温熱セッション(目的)も選べる。他人に知られることなく、ホットフラッシュ対策ができるのはうれしい! 女性に多い「冷え」対策にも活躍しそう。

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【Osteoboost(オステオブースト)/アメリカ】NASAで実証した技術で開発。医療用の骨強化ベルト

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立った状態の腰に身につけ、1日30分間を過ごすだけ

閉経後の多くの女性に訪れる「骨粗しょう症」問題。極端なダイエット、家族歴(遺伝)、運動不足、女性ホルモン減少などが影響し、更年期以降、骨密度や骨強度が低下して年齢とともに骨折する女性が増えていく。世界的には、50歳以上の女性が生涯に骨折する確率は3人に1人と結構な割合になると言われている。

「年齢を重ねると骨減少症※3になり、その後骨粗しょう症へと進行します。骨折を未然に防ぐにはこの流れを早めに食い止めることが重要ですよね。そこで役立つのがこの『オステオブースト』。閉経後の女性の骨強度と骨密度の低下を軽減するために特別に設計されたウェアラブルな振動ベルト。骨減少症の段階から治療を開始できることや、医師からの指示を遵守して使用されるコンプライアンス率が80%以上と非常に高いことが強みです」と話すのは、ボーン ヘルス テクノロジーズ社CEOのローラ・イーシーズさん。

※3 骨減少症とは、骨粗しょう症による骨折には至っていないけれど骨密度が正常よりも減少している状態のこと。骨密度がYAM値(若年成人平均値:20〜44歳の健康な女性の骨密度を100%として計算)の70%以上80%未満の状態を指す
参考資料:日本骨代謝学会、本骨粗鬆症学会合同 原発性骨粗鬆症診断基準改訂検討委員会「原発性骨粗鬆症の診断基準(2012 年度改訂版)」

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CEOのローラ・イーシーズさん

腰回りに装着して使う『オステオブースト』は、まずはアメリカで医師の処方が必要な医療機器として販売予定。その後、より消費者が手に取りやすい形での展開も目指す。NASAの研究を活用した振動装置が使われており、骨折が生じやすい股関節と腰椎に最適な治療法を直接届けることができるという。

「立ったまま使う必要がありますが、1日30分間、家事や散歩の合間などに身につけるだけと簡単。毎日、少なくとも週5日使用することで骨を強くします。日本における女性の骨粗しょう症は極めて深刻な問題ですから、日本にも広めていきたいですね」

>>『オステオブースト』の詳細はこちら

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会場内のワークショップコーナーに残された、来場者たちの心の声。向き合うべき健康課題は、まだまだたくさんありそうだ

本記事でご紹介したのは、ごく一部。フェムテック分野では、生理や妊娠・出産、更年期、老年期まで、女性の生涯を通したさまざまな健康課題を解決すべく、新たなテクノロジーやサービスが開発され続けている。次はどんなプロダクトに出合えるのか、盛り上がりを見せるフェムテック分野のこれからがさらに楽しみだ。